富山の先進例を確認、岐阜が導入へ向けた検討を本格化
岐阜県は、次世代型の路面電車システム(以下、LRT)を軸にした地域振興の方策を具体化するため、富山市が本格導入したLRTの事例を参考にし、両県の連携を進める方針を示した。両県知事による視察が実施され、公共交通を活用した中心市街地の賑わい創出や観光連携の可能性が改めて議論の焦点となった。
岐阜県側が公表している概要によると、県は人口減少や中心市街地の集客力低下を背景に、約10年後の導入を視野にLRTの実現を目指すとしている。視察は富山市側の提案で企画され、両知事は実際に列車に乗車し、駅周辺の利便性向上やまちなかのイベント活用といった先進事例に触れた。
富山市の経緯と岐阜への示唆
富山市は2006年に全国初の本格的LRTとして富山ライトレールを開業させ、その後段階的に環状化や駅高架への乗り入れ、南北接続事業を進めてきた。こうした公共交通網の整備は、中心市街地での定期的なトランジットモールの開催など、人の滞留や賑わい創出につながっている点が岐阜側の注目点である。
| 年 | 主な出来事(富山市) |
|---|---|
| 2006 | 富山ライトレール開業(本格的LRT) |
| 2009 | 市内電車の環状線化 |
| 2015 | 路面電車の富山駅高架下乗り入れ |
| 2020 | 南北接続事業完了で利便性向上 |
岐阜が目指す効果と課題
岐阜県がLRT導入を打ち出したのは、県都・岐阜市の中心市街地における集客力の低下が背景にある。大型商業施設の相次ぐ閉店が指摘される中、公共交通を通じて人の流れをつくり、まちなか経済の再生を促すことが狙いだ。視察で得られた示唆は次の点に整理できる。
- 公共交通の利便性向上が歩行者の増加や滞在時間延伸につながること。
- 駅周辺の空間活用やイベント(トランジットモール等)による誘客手法が有効であること。
- 空港や観光資源と連携した広域的な来訪者誘致策の重要性。
一方で、導入には莫大な初期投資や既存交通との調整、沿線の土地利用計画、運行維持費の確保など多面的な課題がある。岐阜県はこれらを踏まえ、実現可能な整備スケジュールや財源の検討、住民や事業者の合意形成を進めていく必要がある。
新愛称に「高山」案が挙がる中、公共交通を活用してまちなかに人の流れを誘導する先進的な取り組みに触れる機会となった。
広域連携と観光への波及効果
視察には、富山空港の活用など空港を起点とした広域連携の議論も含まれた。富山市側からは、空港の新愛称として「高山」を含める案が提起されるなど、観光面での相乗効果を狙った提案も示された。岐阜(飛騨高山地域)と富山を結ぶ観光の商品化や、空港経由での訪日客誘致は、地域間連携による需要拡大の可能性を示している。
こうした連携が進めば、以下のような具体的な影響が期待される。
- 観光客のアクセス改善による宿泊需要の増加
- 沿線商店街や飲食店の来客増で地域経済の底上げ
- 通勤・通学での利便性向上による生活利便性の改善
今後の見通しと地域への影響
岐阜県が掲げる「10年後の導入」を目標にする場合、当面は基本構想の詰め、ルート選定、費用負担の枠組みづくり、関連自治体との調整が中心課題となる。具体的な整備計画が出るまでは時間を要するが、計画の進展は中心市街地にとって長期的な再生の起爆剤となり得る。
住民・事業者にとって関心が高いのは、整備に伴う工事期間中の交通影響や、路線設定による地価や商業集積への影響、運賃体系である。県は今後、関係者説明やパブリックコメントなど意見集約のプロセスを重ねることが重要だ。
岐阜県内では地域の特性に応じた交通ネットワークの再編が不可避となっており、LRTは選択肢の一つとして注目される。視察で得られた知見をどう自県の事情に適合させ、持続可能な事業モデルに落とし込むかが、今後の焦点となる。
(山崎 大輔、岐阜県担当)