長時間勤務と診断、遺族が賠償求め提訴
岐阜県農政部に勤務していた男性職員(当時27歳)が2023年に自ら命を絶ったのは、100時間超の時間外勤務が要因だとして、遺族が31日、岐阜県を相手取り約8900万円の損害賠償を求め岐阜地裁に提訴した。遺族は提訴に合わせ「地域のために働きたいと思い県庁に入った息子が、わずか1年で心を病み命を絶った」として、再発防止を強く求めている。
代理人弁護士によると、職員は2020年4月に入庁。同21年3月に106時間の残業をしたことなどが原因で、同年5月に適応障害と診断され、休職に入り、休職期間中の2023年7月に亡くなった。地方公務員災害補償基金は今年3月にこの事案を公務災害と認定している。
住民生活と行政運営への影響
公務員の過重労働とそれに伴う健康被害は、単なる個別事案ではなく、行政組織全体の人材確保やサービス提供に直結する問題だ。人員が不足すれば窓口業務や現場対応に遅れが生じ、市民サービスの質が低下する可能性がある。また、職員の健康問題が多発すれば採用や定着に悪影響を及ぼし、中長期的には自治体運営の基盤が揺らぐ懸念がある。
今回の提訴は、県内の他部局や他自治体にとっても監視対象となる。労働時間管理、業務配分、メンタルヘルス対応の実効性が問われ、住民にとっては県がどのような改善策を示すかが関心事となる。
経緯を整理した表
| 項目 | 事実 |
|---|---|
| 入庁 | 2020年4月 |
| 長時間勤務の記録 | 2021年3月に106時間の残業 |
| 診断 | 2021年5月に適応障害と診断 |
| 休職 | 診断後、休職 |
| 死亡日 | 2023年7月(休職中に死亡) |
| 公務災害認定 | 2026年3月、地方公務員災害補償基金が認定 |
| 提訴 | 2026年8月31日、遺族が約8900万円の賠償を求め提訴 |
(上表は報道で確認された事実に基づく)
遺族の訴えと県の対応に求められる点
遺族は「再発防止」を求めており、提訴は金銭的補償を求めるだけでなく、組織としての改善を促す意思表示でもある。今回、基金の公務災害認定が出ている点は、労災認定と同様に職務起因性を示す重要な判断だ。県には以下の点が求められる。
- 労働時間の実態把握と透明性の確保
- 過重労働を防ぐための人員配置と業務見直し
- 早期に機能するメンタルヘルス支援体制の整備
県は今後、訴訟への対応と並行して、具体的な再発防止策を示す必要がある。住民としては、県の示す改善策がいつ、どのように実施されるのか、その進捗を注視することが重要だ。
「地域のために働きたいと思い県庁に入った息子が、わずか1年で心を病み命を絶った。今も受け止め切れない」—遺族のコメント(報道による)
今回の事案は、若手職員が短期間で心身の不調に至った点が重く受け止められる。自治体の職場は住民サービスを担う現場であると同時に、働く人にとって安全で持続可能な職場でなければならない。職員の健康管理は住民生活の安定に直結するため、県民としても注目すべき問題だ。
遺族が求める賠償額は約8900万円で、岐阜地裁での審理が注目される。裁判の経過は県の労働管理の実態や組織的対応を明らかにする機会にもなる。住民・職員双方の安全と信頼を守るため、県には透明性の高い説明と実効性ある対策の提示が求められる。
(取材・執筆:山崎 大輔)