都市計画と結び付けた電動バス導入の現状
ベトナム南部のドンナイ省は、2035年までの都市建設・発展計画(決議第16号)に基づき、公共交通機関の電化を重要施策の一つに位置づけている。政策は多層的な都市構造、スマートシティ、気候変動への適応を掲げる中で、公共旅客輸送のクリーンエネルギー化を明確に打ち出している。
既に2026年7月4日、全長57.5kmの電気バス路線(9号線)が正式運行を開始し、乗客から好評を得ている。車内にはエアコン、無料Wi-Fi、停留所アナウンス、自動券売機などが備えられ、運行の品質向上も図られている点が報告されている。
導入路線と車両台数――段階的な置換え
ドンナイ省は既存のディーゼルバス路線を順次電気バスに置き換える計画を進めている。報道にある数値に基づくと、以下の状況が明らかになっている。
- 9号線:2026年7月運行開始、路線長57.5km。
- 603番線・605番線:ディーゼルバスから電気バスへ置換え予定。フオンチャン旅客輸送(FUTA)が603番線用に10台、605番線用に3台、合計13台を投資。
- 607番線:2026年3月から既に電気バス10台が運行中。
| 路線 | 導入状況 | 台数 |
|---|---|---|
| 9号線 | 2026年7月運行開始 | 記載なし |
| 603番線 | ディーゼルから電気へ | 10台(FUTA投資) |
| 605番線 | ディーゼルから電気へ | 3台(FUTA投資) |
| 607番線 | 2026年3月から電気バス運行 | 10台 |
インフラ整備と運行環境の整備
車両導入だけでなく、バスターミナル側も充電ステーション設置など発電・充電インフラへの投資計画を策定していると報じられている。ビエンホアバスターミナルは、電気車両が安全かつ効率的に運行できる環境を整備するため、技術インフラのアップグレードや設置場所の確保を優先する方針を示している。
同時に、市の建設局は省内30路線、県間22路線から成るバスネットワーク案を勧告し、空港開港に合わせた接続路線の提案も行っている。これにより、単独の車種転換に留まらない、ネットワーク全体での移行が目指されている。
現場の反応と企業の動き
運行開始後の利用者レビューは好意的で、「走行が滑らかで静か、燃料臭がなく清潔」といった評価が伝えられている。バスターミナル副所長やバス事業者のコメントからは、利用者満足と事業者側の投資意欲が伺える。
「グリーン移行は避けられない潮流になりつつあります。電気自動車の導入は排出量の削減に役立ち、燃料価格の変動の中でも輸送コストの安定化に貢献します」
この発言は、バスターミナル関係者(トン・タイン・ハイ社長)のものであり、政策と事業者の利害が一定の整合を持って進行していることを示唆している。
今後の見通しと課題
報道によれば、建設局は約70台の電気バスを2026年末から2027年初頭までに運行開始する手続きを最終調整している。これは短期間で目に見える車両転換を進めようとする試みであり、以下の点が今後の焦点となる。
- 充電インフラの整備速度と供給能力:急速充電や需給調整が不可欠。
- 運行コストとメンテナンス体制:車両導入費用と長期的な運用コストの均衡。
- 路線ネットワークとの整合性:利用者の利便性を維持しつつ自家用車利用削減を促す設計。
政策面では、首相決定(2022年の決定第876号)に基づく行動計画との整合が図られている点が強みだ。輸送部門での脱炭素は、多くの都市で課題となっているが、ドンナイ省のケースは、都市計画・ターミナル運営・民間投資を組み合わせた実行段階に入っていることが注目される。
国際的に見れば、都市の電動化は排出削減に寄与するだけでなく、騒音や大気汚染の改善にも直結するため、住民の生活の質向上にもつながる。今後は導入効果の定量的評価(排出削減量、利用者数の推移、運行コストの変化など)と、インフラ整備の進捗が外部評価に耐えうるかが重要となる。
ドンナイ省の取り組みは、東南アジアの都市が直面する課題への一つの回答例であり、他都市の導入計画や国レベルの脱炭素政策とも接続し得る。日系企業や国際機関との連携、技術移転、資金調達の枠組みが今後の成否を左右するだろう。