環境性能と在宅避難機能を資金使途に
東急不動産ホールディングスは、公募形式のグリーンボンド「環境先進マンションBRANZグリーンボンド」を発行する予定であると発表した。発行規模は100億円、償還期間は3年としており、調達資金は千代田区三番町で計画中のマンション建設(仮称)に充当される。
会社側は長期ビジョンに掲げる“WE ARE GREEN”の旗印の下で、事業活動を通じて『脱炭素社会』『生物多様性』『循環型社会』の三つを重点課題に据えていると説明している。今回のグリーンボンドもこれら環境課題に資する取り組みを支える目的で発行される。
- 発行額:100億円
- 年限:3年
- 資金使途:千代田区三番町計画に係る設備資金等(省エネ・再エネ導入、災害時の電源・給排水確保等)
調達資金は、省エネルギー設備や再生可能エネルギーの導入に加え、停電や断水などのインフラ断絶時にも居住者が自宅で生活を継続できる機能(在宅避難)を支える電源や給排水の確保に充てられる見込みだ。
計画の環境性能と想定規模
(仮称)千代田区三番町計画の概要として、延床面積は21,267.14㎡、戸数は130戸が示されている。環境性能については、建物性能評価や住宅の省エネ基準を念頭に、以下が想定されている。
- BELSで5つ星または4つ星相当(ZEH-M Oriented水準)
- CASBEEでSランクまたはAランクの取得見込み
- 屋上太陽光の設置、共用部および専有部での再エネ電力メニュー導入の推奨
- 高断熱化や高効率設備(高効率エアコン、ヒートポンプ式温水床暖房、エコキュート、全熱交換器など)の採用
- 外断熱工法による躯体の長寿命化とリサイクル資材の活用
| 項目 | 数値・内容 |
|---|---|
| 延床面積 | 21,267.14㎡(予定) |
| 住戸数 | 130戸(予定) |
| 発行額 | 100億円 |
| 発行年限 | 3年 |
サステナビリティファイナンスの位置づけ
本発行は同社のサステナビリティファイナンス・フレームワークに基づき行われ、外部評価機関である株式会社日本格付研究所(JCR)からフレームワーク評価の最上位評価であるSU1(F)を取得済みだとされる。主幹事は野村證券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、大和証券、みずほ証券が務める。
企業が不動産プロジェクトの環境性能向上やレジリエンス強化を目的にグリーン債を活用するのは、資金調達と環境目標の連動を明確にする手法として注目されている。外部評価を得ることで投資家に対する透明性を高め、資金使途の適合性を担保する狙いだ。
背景と影響
国内の不動産分野では、建築物の運用時におけるCO2排出削減や再生可能エネルギーの導入、建物寿命の延伸を通じた循環型設計が求められている。新築分譲マンションにおいても高断熱化や高効率設備の採用、共用部での再エネ利用などが消費者価値や資産価値の向上につながるとされる。
一方で、今回の資金使途に含まれる「在宅避難」機能の整備は、近年の激甚化する自然災害を背景に、居住者の安全確保と地域のレジリエンス向上を両立させる取り組みとして注目される。停電や断水に対する備えを共同住宅の設計段階から組み込むことは、従来の個別の防災対策とは異なるスケールの介入を意味する。
課題と留意点
ただし、グリーンボンドを巡る運用面では、調達資金が実際に予定された環境配慮にどの程度使われたかを示す事後報告や透明性の確保が重要となる。外部評価の取得は一つの担保となるが、建物の完成後の運用時におけるエネルギー消費やCO2排出の実績、維持管理の体制などが投資家や居住者の信頼を左右する。
また、再生可能エネルギーの導入や高効率設備の導入は初期費用が嵩む場合があり、長期的な運用コストや住戸負担のバランスをどう設計するかも課題となる。設計・施工段階だけでなく、管理組合や住民への説明と合意形成も不可欠だ。
東急不動産グループは今後も、同フレームワークに基づくESG債の継続発行を通じて、ステークホルダーとともにサステナブルな社会実現を目指すとしている。今回の発行は、不動産セクターにおけるサステナビリティ投資の一事例として、今後の実務と評価の在り方を問う試金石となるだろう。
当社は長期ビジョン「GROUP VISION 2030」において、「WE ARE GREEN」をグループの旗印に掲げています。