観光地・日本平で新業態。起点は原材料高と経営環境の変化
静岡市内でケーキやプリンを中心に親しまれてきた洋菓子店が、7月4日に日本平の展望施設「日本平夢テラス」にジェラート専門店を開店した。店舗を運営するのは市内で複数店舗を構える「ぷるみえーる」。経営を取り巻く物価高騰や輸入品の値上がりが続くなか、既存の生菓子中心のビジネスモデルを補完する新たな収益源としてジェラートに注力する判断を示した。
店側の狙いと住民・観光への影響
同店を率いるオーナーシェフは、ジェラートを前面に打ち出すことで「ここに来れば世界一のジェラートがある」といった付加価値を作り、地域の新たな名物化を目指すとしている。ジェラートは生菓子に比べて保存性が高く、一度に多量を作れる点や人手の面でも有利であり、原材料費や人件費が圧迫する現状に対応する実務的な利点がある。
「とにかくいろいろな形で生き延びられればと。その手段として、今回もジェラートだけの店を静岡で出すというのは、無謀と言えば無謀かもしれない。とにかく頑張っていきたい」
地域住民にとっては、次のような影響が考えられる。
- 観光客向けの目玉が増えることで日本平周辺の来訪者が増える可能性
- 地元の洋菓子店が新たな商品や雇用形態を模索する事例となり、類似業者への波及効果
- 店舗で扱う素材や包装などの調達先の見直しが地域サプライチェーンに与える影響
背景にある業界の現状と店の強み
報道によれば、円安の進行は輸入資材価格の大幅上昇を招いており、小麦粉やバター、卵、包装資材などのコストが膨らんでいる。洋菓子店の倒産件数は全国で増加傾向にあり、2025年の倒産件数は帝国データバンクの集計で65件と前年に続き最多となった。こうした逆風の中で、ぷるみえーるは既存商品の強みを維持しつつ新分野を作ることに賭けている。
店側のアドバンテージは、オーナーシェフがジェラートの国際大会で評価を得ている点だ。2025年にイタリアで開催された世界大会では、アジア人で初めて優勝を果たすなど高い専門性を持つ。この技術を生かし、単なる商品の供給にとどまらず外部店舗のジェラートのレシピ改良や監修を始めるなど、付加価値の創出にも動いている。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1988頃 | 店の創業(報道は開業から38年と記載) |
| 2025 | オーナーがイタリアの世界大会で優勝 |
| 2026 | ジェラートの監修事業を開始 |
| 2026年7月4日 | 日本平夢テラスにジェラート専門店を開店 |
消費者への実用的な情報
観光で訪れる住民・来訪者は、次を参考にするとよい。
- 日本平は富士山と駿河湾の眺望が魅力の観光地。新店舗は展望施設内にあり散策の途中で立ち寄りやすい。
- ジェラートは保存性や作業効率の面で生菓子と異なる特性を持つため、これまでケーキを主に買っていた消費者も異なるメニューに出会える可能性がある。
- 世界大会での受賞歴を持つ商品を試すことで、地域の技術力やブランドを肌で感じられる。
地域の中小事業者が環境変化に応じて業態を柔軟に変える動きは今後も続く見通しだ。今回の事例は、観光と地場産業、専門技術を結びつけることで地域振興につながる可能性を示している。消費者は味の違いを楽しむと同時に、地場の産業構造の変化にも関心を持つことが、地域経済を支える一助となるだろう。
(森 千尋)