浜松で生まれた教材が約1万キロ先で役立つ
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(千葉県松戸市)が2026年8月11日、ルワンダ共和国Miyove(ミヨベ)地区で、静岡県の高校生や市民が制作した「PEACE 防災カルタ」を用いた防災教育を実施しました。カルタは2026年7月18日に浜松市、19日に静岡市で開催された制作イベント「PEACE 防災カルタ2026」で作られたもので、完成から約3週間後にルワンダへ届けられました。
防災カルタの特徴は、避難場所の確認、水や食料の備蓄、危険箇所からの離脱、身体の保護、家族や周囲との助け合いといった日常的な備えと災害発生時の具体的な行動を、絵札と読み札で構成している点です。文字だけでは伝わりにくい内容を絵や遊びの形式で伝えることで、年齢や言語、識字力の違いを超えて一緒に学べる点が重視されています。
現地の授業では、机に並べたカルタの札を確認しながら、子どもや大人が一つずつ行動の意味を話し合いました。遊びながら学ぶ形式は学習への参加を促し、防災を「難しい知識」ではなく身近な命の問題として捉える狙いがあります。
「PEACE 防災カルタ」を活用した防災教育を実施しました。
今回の取り組みは、ふじのくに未来財団の「静岡トヨタ自動車 ハイブリッド基金」の助成を受けて行われました。浜松を含む静岡県内で制作された教材が、地域を越え国外で実践されたことは、地域の防災活動が国際的な学び合いへ発展した初の海外実践例と位置づけられます。
なぜルワンダでの実施が重要か――ルワンダは緑豊かな丘陵地帯が広がる一方、急傾斜地が多く、強い雨による河川氾濫や土砂災害が繰り返し発生しています。記事では、2023年5月の豪雨で131人が死亡し、大規模な避難や農地・公共インフラの被害が生じたこと、また緊急事態管理省の報告では年間に多数の洪水が記録されていること、UNICEFが326カ所の災害リスク地点を特定し約3万1,000人以上が危険にさらされているといった状況が紹介されています。こうした現地の切迫した事情の中で、現地住民と一緒に考える教材の実践は、即効性のある教育支援としての意義が大きいと考えられます。
浜松の関係者・住民への意味としては、次の点が挙げられます。
- 地域の高校生や市民が実際に手を動かして作った教材が、実践で使える形に仕上がったことは、学校教育・市民活動の成果が可視化された事例である。
- 海外で得られる災害対応の実践知は、逆輸入的に浜松や静岡県内の防災教育に還元できる可能性がある。ルワンダでの体験を通して、異なる地形や生活条件に応じた備えや伝え方のヒントが得られる可能性がある。
- 遊びを通じた教材は、幼児・児童、高齢者など多世代に伝えやすく、地域での防災訓練や学校の授業、地域団体の啓発に応用しやすい点がある。
浜松では近年、地震や豪雨・浸水リスクに対する市民の関心が高まり、防災を題材にした学校行事や地域の自主防災会の活動も増えています。今回のカルタ制作に参加した高校生や留学生、地域住民らの経験は、地域の防災力を高める人材育成にもつながるでしょう。具体的には、学校の避難訓練での導入や、自治会・町内会の防災学習の新たな教材として活用できる余地があります。
住民向けの留意点と活用案として、次の点を参考にしてください。
- 家庭内での備蓄や避難経路の確認を、小さな子どもと一緒にカルタ形式で点検することで無理なく習慣化できる。
- 地域の防災訓練や学校行事に、絵札を使ったワークショップ型の時間を設定すると、世代間の伝承が促進される。
- 言葉だけでなく絵で示す教材は、外国にルーツを持つ家庭や、高齢者への説明でも理解を助ける。
今回の事例は、浜松発の取り組みが国外で実践され、両地域での学びが循環する良いモデルとなり得ます。地域で防災に関わる団体や教育現場は、制作過程や現地実践の成果を共有することで、より実効性の高い防災教育の展開につなげることが期待されます。
(森 千尋・静岡県担当記者)