静岡の素材を生かしたクラフトジンが実用化、研究を製品化
静岡大学発のベンチャー企業が、静岡県産の素材を原料に用いたクラフトジンを開発し、品評会で金賞を受賞しました。製品化に当たっては大学での分析・研究を経て、素材の香気成分を“見える化”し、減圧蒸留という手法を用いて香りや味を最大限に引き出す製造法を採用しています。取材で確認できた主な特徴は、地元産の山椒やワサビ、みかんなどを活用する点と、製品の主要な販売・提供拠点として浮月楼のバーやビアガーデンがあること、オンラインストアでの購入方法が整備されていることです。
特に金賞を受賞した「山椒のジン」について、蒸留技師は「清水の山椒がこのジンにつながっているので、そこが評価されたのがうれしい」と述べています。ベンチャー側は地元素材の優秀さをジンの“エッセンス”として国内外に語れる形にすることで、静岡の魅力を発信したいとしています。
- 製造手法:減圧蒸留を採用し、熱で飛びやすい風味も抽出可能に。
- 原料の例:有東木地区のワサビ、清水の山椒、みかん、県内で始めたジュニパーベリー栽培。
- 生産量:一日当たり約6リットルの少量生産で希少性が高い。
取材に応じた担当者は、香りや味の成分を機械で分析することで、人の感覚に頼らず最も素材の個性が活きる条件を追求できると説明しました。これにより、従来は単体でしか語られなかった農産物の持つ物語を、ジンという製品を通じて伝える試みが進められています。
「(静岡は)素材がとても優秀で、たくさんあるのにアピールしきれていない。でもジンで扱うとエッセンスのひとつとして、物語として語れるようなものができる。それはジンでないと作れない」
減圧蒸留の工程は取材で詳細が確認でき、蒸留容器の圧力を下げ沸点を低くすることでアルコールを揮発させ、香気成分を凝縮する方法が用いられていました。茎ワサビは冷凍凍結乾燥させたのちアルコールに浸して抽出し、低温での蒸留によりワサビ特有の鮮烈な香りを残しつつ後味はすっきりと仕上げるという工程が実演されました。蒸留で得られる原酒はアルコール度数80度超えで、最終的に水で度数を調整して完成させます。
地域への影響と住民が知っておくべきこと
今回の試みは、次の点で地域へ直接的な影響を与える可能性があります。
- 地元農産物の付加価値向上:ワサビや山椒などこれまでの用途と異なる加工品が生まれることで、農家の新たな販路につながる可能性。
- 観光・文化資源化:歴史的な浮月楼を製造・提供拠点に用いることで、観光客向けの体験型商品として地域の魅力を発信できる点。
- 栽培・生産の波及:ジンに欠かせないジュニパーベリーの県内栽培が始まっていることは、作物の多様化につながる第一歩となる可能性。
住民が留意すべき実務的な点として、製造量が限定的であることから入手方法に制約があり、バーやビアガーデンでの提供とオンライン販売が主な入手ルートになっています。また、少量生産で手間がかかることから価格は一般的な量産酒と比べ高めに設定される可能性があり、贈答や特別な場での利用が中心となることが予想されます。
さらに、大学発ベンチャーという性格上、研究段階での成果を製品化した事例として他の地場産業へ波及するモデルにも注目が集まります。香気成分の分析や減圧蒸留などの技術は、食品加工や香料分野での応用が考えられ、地域内の技術連携や新規事業の創出に寄与する可能性があります。
今後の展望と住民への情報提供
今回のクラフトジンは国内外の品評会での評価も得ており、ベンチャー側は将来的に世界に発信できる製品を目指す意向を示しています。地元素材の価値化や農産物の新たな市場開拓につながる動きであり、農業関係者、観光事業者、飲食店など地域の関係者が連携すれば波及効果は拡大するでしょう。
住民向けの具体的な情報は以下のとおりです。
| 項目 | 現状・入手方法 |
|---|---|
| 提供場所 | 浮月楼のバーやビアガーデン |
| 購入手段 | オンラインストアでの販売(取材時点で確認) |
| 一日生産量 | 約6リットル(取材での確認) |
地元産品の新たな付加価値づくりとして注目される一方で、農作物の安定供給や品質管理、地元生産者との継続的な連携が今後の課題となります。生産量や販売体制の拡大が進めば、地域経済への寄与はより明確になるでしょう。
今回の開発は、大学発の研究成果を地域資源と結び付け、少量高付加価値の製品を生み出す事例として静岡にとって示唆に富む出来事です。県内外の消費者への情報発信や、地元農産物の多様な利用に関心のある住民は、販売情報やイベント情報を注視するとよいでしょう。
取材・報告:森 千尋(プレスリリースジェーピー静岡県担当記者)