東京大学発のスタートアップ、Planet Savers株式会社が、環境省のSBIR(中小企業イノベーション研究開発支援)プログラムのフェーズ3に採択された。採択事業は「低エネルギー大気中CO₂回収実用化に向けた高選択性ゼオライト吸着剤の量産化技術開発に関する事業」であり、同社が進める直接空気回収(DAC)技術の実用化と量産化に向けた重要な節目となる。
採択の意義と事業の狙い
Planet Saversはこれまで、ゼオライトを用いたCO₂吸着材および成形体の要素技術開発に注力してきた。公表された資料によれば、同社は第一世代ゼオライトを用いたプロトタイプDACユニットで累計300時間の稼働によるCO₂回収実績を示しており、今回のSBIRフェーズ3採択は、実環境で高効率に機能する吸着剤の選定、データ駆動型の成形製造プロセスの確立、そして量産体制の構築を進めることが目的とされる。
フェーズ3は通常、実証と事業化を視野に入れた段階であり、ここで得られる技術的・製造上の知見は市場導入の可否と商用コストに直結する。Planet Saversは最適な成形体形状の見極めと実用型プロトタイプによる実証を通じて、経済性と環境性の両立を目指すとしている。
技術的焦点:ゼオライト吸着剤と低エネルギー化
同社のアプローチは、ゼオライト系の吸着剤を主体に据え、大気中の低濃度CO₂を効率的に捕捉することにある。ゼオライトは微細な孔構造を持ち、選択的に分子を吸着する性質があり、適切な改質や成形によりDAC用途への適応が期待される。しかし、実環境での耐久性、再生に要するエネルギー、そして成形体としての機械的強度や圧力損失といった点は、スケールアップにあたって重要な課題だ。
Planet Saversはこれらの課題に対し、データ駆動型のプロセス開発で対応するとしている。実機稼働データ(同社は累計300時間の稼働を公表)を基に最適化を進め、量産ラインで再現性の高い成形体製造を目指すという。
社会実装と産業インパクト
大気中CO₂の直接除去は、温室効果ガス削減政策において補完的な役割を果たす技術として注目される。排出削減だけでは到達が難しい残存排出に対する対応策の一つであり、将来的なカーボンマーケットやクレジットの供給手段としての期待もある。日本国内でDAC技術の商用化に向けた産学連携が進むことは、技術競争力の向上と国際的な脱炭素政策への寄与が見込まれる。
ただし、DAC技術の普及にはコスト低減とエネルギー源の脱炭素化が不可欠だ。SBIRフェーズ3での成果が、製造コストや運転エネルギー要求の低減につながるかが鍵となる。Planet Saversの取り組みが実用段階に達すれば、産業側での受け入れや政策的支援のあり方にも影響を与える可能性がある。
- 同社の現行実績:プロトタイプで累計300時間稼働確認
- 採択事業の主眼:高選択性ゼオライト吸着剤の量産化技術開発
- 目標:実用型プロトタイプでの実証を通じた商用化の加速
「気候変動から世界を救う」という大きな目標に向かって、一緒に働いてくれる仲間を求めている
組織情報と今後の展開
Planet Saversは2023年に設立され、所在地は東京都文京区本郷(東京大学本郷キャンパス内)とされる。代表者は公表資料で池上京。今回のSBIR採択に伴い、同社は量産技術の確立に向けて人材募集も積極的に行っている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | Planet Savers株式会社 |
| 代表者 | 池上京 |
| 設立 | 2023年7月 |
| 所在地 | 東京都文京区本郷(東京大学 南研究棟) |
今後は、量産プロセスの立ち上げ、実用プロトタイプによる長期実証、およびコスト評価が焦点となる。公募のフェーズや資金支援の性格上、フェーズ3での成功は次の資金調達や民間導入を見据えた重要な実績となる。
国内外でDACを巡る議論は、技術的実現性と倫理的・政策的枠組みの両面で続いている。Planet Saversの採択は、日本発の素材・プロセスイノベーションが気候技術の実用化に寄与する可能性を示す事例となるだろう。実証が進み、量産化の課題がどの程度克服されるかが、今後数年の注目点である。
(提供資料に基づき編集)