パヤリ圧巻の走りと勝田の無念──エストニア初日が示した“速さ”と“リスク”
2026年WRC第9戦ラリー・エストニアのデイ1(7月18日)は、長大な高速グラベルを舞台にした厳しい戦いとなった。トヨタのサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組は、開幕から全7本のSSを連取する圧倒的なパフォーマンスで首位に立った。対照的に、同じトヨタ勢でWRC通算100戦目を迎えた勝田貴元は、午後の高速区間で左フロントタイヤが破裂し、デイリタイアを余儀なくされた。
エストニアは長い直線とジャンプ、そして高速コーナーが連続することで知られるコース特性を持つ。序盤の走行順が大きく影響するこのラリーで、上位総合成績のドライバーは“路面の掃き役”となる不利を背負う。今回、エルフィン・エバンスが1番手、勝田が2番手でスタートしたことも重なり、彼らはいわば厳しい条件での開幕を強いられた。
午前のセクションは完全ドライという好天に恵まれ、全車がソフトタイヤ中心のスプリント戦略で臨む状況。パヤリは好走順を最大限に生かして一気にペースを押し上げ、SS1からSS4にかけて連続でベストタイムを奪取した。トヨタ陣営は午後のタイヤ選択でハードを混ぜた戦術を採り、これが高温・荒れた路面で奏功。ヒョンデやMスポーツ勢がソフト一本で午後を迎えたのに対し、タイヤ選択の差が明確に表れた。
一方でドラマも生まれた。SS5のフィニッシュでは競技史上でも珍しい場面が現れ、複数台が全く同一のステージタイムを記録した。こうした僅差の競り合いが続く中、パヤリの安定感とスピードは際立っていた。
だが、歓喜の影にはリスクが潜む。勝田は午後の高速ストレートを全開で駆け抜けていた最中、左前輪のエアが抜ける形でタイヤが破裂しリタイアに至った。WRC通算100戦目という節目を迎えたデイ1は、選手個人にとっては記念日どころか最悪の結果で幕を閉じることになった。
- パヤリ/サルミネン:デイ1全7SS制覇でトップ。
- オリバー・ソルベルグ:トヨタ勢の2番手でパヤリに14.7秒差。
- アドリアン・フルモー:ヒョンデ勢最上位でパヤリから16.5秒差の3位。
マシンの損傷や不運も各所で見られた。Mスポーツのマルティン・セスクスはシェイクダウンでダメージを受け、修復による遅延でタイムペナルティを科された。ジョン・アームストロングはジャンプでの失敗が響き、左フロントのバーストで大きくタイムを失った。だがアームストロングは即席の補修を施してなおSS2へ出走し、チームとしての意地を見せた。
トヨタ勢は午前中にハードとソフトを組み合わせたタイヤ選択を実行し、午後に路面が改善した際にその判断が的中。SS4では路面状況が良化したことでタイムが全体的に更新される中、パヤリはさらに差を広げ5戦連続ステージウィンの勢いを保った。反面、ソフトのみで臨んだヒョンデとMスポーツは午後の熱と荒れた路面に苦しんだ。
| 順位 | ドライバー | マシン | 差 |
|---|---|---|---|
| 1 | サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン | トヨタ GRヤリス・ラリー1 | — |
| 2 | オリバー・ソルベルグ | トヨタ GRヤリス・ラリー1 | +14.7秒 |
| 3 | アドリアン・フルモー | ヒョンデ i20 Nラリー1 | +16.5秒 |
初日を終え、残るデイ2以降は路面の変化、出走順の影響、そしてタイヤ戦略が勝敗を左右する要因として一層重みを増す。パヤリの勢いが続くのか、あるいは出走順の不利を跳ね返して上位陣が逆襲するのか。日本勢、特に勝田の逆転をかけた挑戦は、しかしまずはタイヤと装備面の再チェックと修復が最優先となる。
初日を振り返れば、エストニアの特性がレースを劇的に演出した。長いストレートと連続ジャンプが一瞬のミスを許さず、タイヤの選択と管理が極めて重要だということを改めて示した。今後の展開は、ドライバーのスピードだけでなくチームの戦略的判断が全体の明暗を決めるだろう。
観戦者にとっては、パヤリの快進撃と勝田の不運が同じ日の中で交錯したエストニア初日が、2026年シーズンのひとつの記憶に刻まれた。