環境

海洋石油・ガスを巡る環境規制の見直しが議論に

ベトナムで環境保護法の改正案をめぐる協議が進む。石油・ガス探査・開発のEIA適用や排出基準の実効性が主要な争点となっている。

海洋石油・ガスを巡る環境規制の見直しが議論に
©イラスト AI生成 :清水 葵/プレスリリースジェーピー

ベトナムで環境法改正案、石油・ガス事業の扱い巡り論点浮上

5月7日にハノイで行われた審議では、農業環境省と科学技術環境委員会、国営のベトナムエネルギー産業公社(PVN)などが集まり、環境保護法の複数条項を見直す法案について意見交換が行われた。会議は科学技術環境委員会のタ・ディン・ティ副委員長が議長を務めた。

今回の立法作業は、国会の決議と首相の指示に基づき進められており、法案は行政手続きの簡素化と、企業活動に対する実務上の障害の解消を目指すものだと説明されている。農業環境省は、枠組みと原則を定め、技術的細目は政令や関係省庁の規制で補う設計を提示している。

会議の報告によれば、改正案は特に以下の5点を重視している。

  • 行政手続きの実質的改革と地方への権限委譲の推進
  • 廃棄物を「資源」とみなす考え方への転換
  • デジタル化(デジタル変革)の先導
  • 受動的対応から積極的予防への転換
  • 経済的手法のより効果的な活用

石油・ガス分野に関しては、PVNから環境法と鉱業・投資関連法との間で規定や手続きの整合性が不十分であるとの指摘が出された。特に海洋での探査・開発に関する区分や、拡張・能力増強などプロジェクトの分類に関する定義があいまいなため、どの段階でどの環境手続きが必要か判断しづらい事例があるとされた。

農業環境副大臣のレ・コン・タイン氏は、法案は新たな立法理念に基づき、柔軟な枠組みと原則のみを規定しており、技術的事項は関係当局が定めると説明した。

法改正案の一部では、石油・ガス探査プロジェクトに対する環境影響評価(EIA)の取り扱いが議論されている。政府は、2026年1月29日付の政令第48/2026/ND-CPで、原油・天然ガスの開発プロジェクトのEIA評価権限を省レベルの人民委員会の委員長に分散させる措置を講じているが、農業環境省はさらに一歩進め、すべての探査プロジェクトをEIA手続きから免除することを提案していると報告された。

一方でPVNは、沖合の探査については立地や海域の自己浄化力、地域住民への影響の小ささを理由にリスク分類の引き下げ(グループIからグループIIへ)を提案している。また既存施設に関連するプロジェクトについては、既設の処理能力を超える廃棄物を発生させない限りEIAを不要とする案も示している。

改正案に対しては、環境基準の緩和を懸念する声もある。PVN側は、QCVN 19:2024/BTNMTに含まれる一部パラメータが、実際の発電所運転に必ずしも適合していないと指摘し、排出限値の実態に即した調整を求めている。一方、農業環境省は、電力部門等との連携で新基準の実現可能性を確認しており、大気質保全の観点から基準強化の必要性を否定していない。

議論の背景には、既存の手続きが主に陸上プロジェクト向けに構築されていることがあり、海洋案件に特化した具体的ガイドラインが不足しているとの共通認識がうかがえる。これにより、海洋での開発段階に応じた適切な環境管理が難しくなっているとの指摘が多い。

日付・法令内容
2026年1月29日政令第48/2026/ND-CPでEIA評価権限を分散
2025年国会決議に基づき複数法の改正提案が検討

今回の協議は、法案が最終調整を経て法務省に提出され審査を受ける予定であることを示している。改正の結果次第では、海洋資源開発に関わる手続きの簡便化や企業負担の軽減が進む可能性がある一方で、環境保全の実効性がどう担保されるかが注視される。

今後の焦点は、以下の点に集約されるだろう。

  • 海洋案件に特化した具体的な運用指針の策定と整合性の確保
  • EIA適用除外や分類変更が環境リスク評価に与える影響
  • 排出基準の実効性と技術的実現可能性の検証

法改正は、投資の呼び込みや行政手続きのスリム化といった経済面の利得と、海洋生態系や地域住民の環境安全を守るという公共性の調整を迫る作業でもある。法案がどのような最終形を取るかは、国内の産業界だけでなく、域内の環境ガバナンスや国際的な環境基準との整合性にも影響を与えるため、今後の動きを継続して追う必要がある。

清水 葵
清水 AI編集 環境担当記者 オンライン

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