環境

JR東日本と大阪ガス、バイオマスで年間22万トンの排出削減へ

JR東日本と大阪ガスはバーチャルPPAで広畑バイオマス発電所の環境価値を取引し、年間約5.3億kWh分を提供。CO2削減は約22万トンに相当し、JR東日本の排出量の約12%を占める見込みだ。

JR東日本と大阪ガス、バイオマスで年間22万トンの排出削減へ
©イラスト AI生成 :清水 葵/プレスリリースジェーピー

東日本旅客鉄道(JR東日本)と大阪ガスは、Daigasエナジーを窓口として、兵庫県姫路市の広畑バイオマス発電所が発電する環境価値をバーチャルPPA(仮想PPA)で取引する契約を締結し、2026年8月から提供を開始した。今回の取引は、同発電所がFIP制度へ移行した上で行われるもので、年間で約5.3億kWh分の環境価値をJR東日本に供給する。発表によればこれは年間で約22万トンのCO2排出削減に相当し、JR東日本の排出量の約12%に相当するという。

仕組みと制度の転換が意味するもの

今回の枠組みは、発電した電気そのものではなく、発電に伴う“環境価値”のみを企業が取得する典型的なバーチャルPPAだ。大阪ガスが広畑発電所の電気と環境価値を一括で買い取り、電気は卸電力取引所に売却、環境価値は証書化されJR東日本に提供される。JR東日本の実際の電力供給は既存の小売契約で賄われる点が特徴である。

同発電所はこれまでFIT(固定価格買取制度)で運営されてきたが、近年の政策動向を受け、FIP(フィードインプレミアム)制度へ移行した。経済産業省が進める市場連動型の再エネ主力化政策に沿う動きであり、FIP下では市場での売買収益に加え、FIPプレミアムが交付される枠組みとなる。制度転換は再生可能エネルギー発電所が市場とより密接に連動することを意図しており、企業側の再エネ調達の手法にも影響を与える。

規模と燃料構成

広畑バイオマス発電所は約7.5万kWの発電容量を有し、バイオマス専焼発電所としては国内でも大きい部類に入る。燃料は輸入の木質チップやパーム椰子殻(PKS)に加え、林地残材や未利用間伐材といった国産木質チップも利用している点が示されている。事業者は高い発電効率と限定的な国産燃料の有効活用を理由に、より多くの電力を生み出すことに主眼を置いている。

「ゼロカーボン・チャレンジ2050」として2030年度までに2013年度比でCO2排出量を50%削減し、2050年度までに実質ゼロを達成することを長期目標としています。

(JR東日本の声明より)

  • 対象となる環境価値:年間約5.3億kWh
  • 想定されるCO2削減効果:年間約22万トン
  • 発電所の発電容量:約7.5万kW
項目数値
環境価値(年)約5.3億kWh
CO2削減換算(年)約22万トン
発電容量約7.5万kW

企業戦略と脱炭素への寄与

JR東日本は公表した長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」の一環として、再生可能エネルギーの比率拡大を進めている。同社は今回の取引で自社のCO2排出量削減に寄与するとしており、2040年代・2050年に向けたロードマップの短中期ステップと位置づけている。また、大阪ガス側は再エネ普及への貢献を掲げ、2030年度までに国内外で再エネ電源500万kW普及への寄与を目標とする狙いを示している。

バーチャルPPAや証書を用いる方式は、企業が自社の電力供給源を直接変えずに再エネへの投資や調達を進められるメリットがある。一方で、実電力の供給源と環境価値の物理的結びつきの乖離をどう評価するかは、企業の脱炭素戦略の透明性やステークホルダーの評価に影響を与えうる。

課題と今後の展望

今回のスキームは制度面・市場面の変化を取り込んだ先進的な事例と言えるが、いくつかの課題も残る。バイオマス燃料の調達における環境・社会的影響の管理や、国産材と輸入材の割合、長期的な燃料供給の安定性などが挙げられる。さらに、FIP制度下での収益性や電力市場価格の変動リスクをどう緩和するかも事業持続性に関わる要素だ。

日本の大手企業がこうした取引を増やすことは、市場全体での再エネ活用を拡大するきっかけになる可能性がある。だが同時に、企業の排出削減の「実効性」をどう担保するか、政策と市場の整合性をどう保つかが問われる。今後は同種のバーチャルPPAがどの程度広がるか、またFIPへ移行する発電所が増えるかが注目される。

環境価値の市場化は脱炭素化の手法の一つとして位置づけられるが、その有効性は具体的な数値や制度設計、サプライチェーンでの管理など細部に依存する。今回の取引は企業の目標達成に資する一歩だが、長期的な低炭素社会の実現には、再エネの主力電源化や需給の実体的な転換も並行して進める必要がある。

清水 葵
清水 AI編集 環境担当記者 オンライン

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