サービス拡張の概要
株式会社日立製作所と株式会社日立ビルシステムは、ビル運営向けのデジタル基盤「BuilMirai」のサービスラインナップを拡充すると2026年8月に発表した。今回の拡張で、従来個別に扱われてきた入退室、設備、エネルギーに関わるデータをクラウド上で連携させる仕組みを強化し、段階的に三つのサービスを提供する。
「BuilMiraiの段階的進化:人・設備・エネルギーをつなぎ、AI活用による継続的な価値創出へ」
発表資料によれば、これによりビルオーナーや管理者は複数のシステムを個別に運用する必要がなくなり、運営状況の一元把握とデータ駆動の迅速な意思決定が可能になるとしている。
提供される三つのサービス
- スマート入退室管理サービス(Security):スマートフォンやICカードを使った認証と通行権限管理、エレベーター連動などを通じて利便性とセキュリティを両立し、人の移動データを蓄積して運営改善に活用する。
- スマートビル管理サービス(Facility):設備稼働や警報をリアルタイムで監視し、複数拠点を一元管理できる。日立ビルシステムの管制センターと連携し、監視と一次対応を含む運用支援を提供する。
- スマートエネルギー管理サービス(Energy):エネルギー消費の可視化・分析やレポーティングを支援し、ZEB関連の報告書対応や省エネ・脱炭素経営を後押しする。
日立は2025年10月にBuilMiraiをas a Service型で開始して以降、導入済み資産やドメイン知見、先進的なAI技術を組み合わせて機能を進化させてきた。今回の発表は、その機能をサービスとして順次統合する転換点になるという。
導入スケジュールと適用範囲
発表文では、スマート入退室管理サービスを皮切りに、2026年8月以降に受注を順次開始すると記載されている。既存の設備管理・エネルギーマネジメント領域で提供してきた機能は、今後段階的にBuilMirai上へ統合される予定だ。
| サービス名 | 主な機能 | 受注開始時期(発表ベース) |
|---|---|---|
| スマート入退室管理 | 認証管理、通行権限、エレベーター連携、利用状況データ蓄積 | 2026年8月以降(順次) |
| スマートビル管理 | 設備監視、警報管理、複数拠点の一元監視、管制センター連携 | 順次 |
| スマートエネルギー管理 | 利用状況の可視化、分析、レポート作成、ZEB対応 | 順次 |
背景と期待される効果
近年、ビルを取り巻く環境は人手不足や脱炭素化の要請、設備運用の高度化などで変化している。多様なワークスタイルやテナントニーズに対応するため、ビル側には安全性、快適性、省エネルギーを同時に満たす柔軟な運営が求められる。日立側は、これら課題に対応するために人・設備・エネルギーのデータを統合し、AIを活用した予兆診断や最適化を実現することを目指すとしている。
想定される効果としては、次のような点が挙げられる。
- 運用負荷の軽減:複数システムの統合管理で日常の監視・対応作業を効率化
- 迅速な意思決定:運用データを集約し可視化することで改善点の把握が速くなる
- 省エネ・脱炭素の推進:エネルギーデータの分析に基づく運用改善で削減効果を期待
- レジリエンス向上:設備の予兆検知や管制センターとの連携による障害対応力の強化
今後の展開とグローバル展開の足取り
日立はBuilMiraiの進化にあたり、米国の関連子会社などとの協業や、インドに設置したエクスペリエンスセンターを通じてグローバルでの顧客接点を拡大していると説明している。これらの取り組みを通じて、国内外のビル市場で機能追加やサービスのローカライズを進める計画だ。
具体的には、導入後にも機能追加やアップデートを繰り返すことで、運用開始後に継続的な価値向上を目指すとされる。特に将来的な展望として、入退室やエネルギー、設備稼働のデータを相互連携させ、AI主導の最適化や予防保守など高度化を進める方針が示されている。
ビル管理事業者、資産オーナー、テナントにとっては、運用コスト抑制と快適性・安全性の両立が重要課題だ。BuilMiraiの拡張がこれらの実務にどの程度寄与するかは、導入事例や運用現場での評価が出てくることで明確になるだろう。
まとめ
日立グループの今回の発表は、ビル運営のデジタル化を推進する上で基盤となる機能群をクラウドで統合する試みだ。入退室管理、設備監視、エネルギー管理の三サービスをBuilMirai上で連携させることで、運用効率化や省エネ、レジリエンス強化が期待される。今後は具体的な導入事例と効果検証が注目される。