飛騨市は2026年7月、市史上初となる海外出身の地域おこし協力隊員として、台湾嘉義県新港郷出身の莊 欣翰(チャン・シン・ハン)さんを迎え、活動を開始した。市と新港郷は2017年に友好都市提携を締結しており、2027年に提携10周年を迎える。この着任は、長年続く民間交流を行政の支援と制度によってより定着させる狙いがある。
背景と狙い
飛騨市と新港郷の交流は1994年にさかのぼる。台湾側の視察団が飛騨古川を訪れたことをきっかけに、市民団体や保存会、観光協会などによる草の根の往来が続き、2006年には台湾の教科書で飛騨古川のまちづくりが紹介されるなど、民間レベルの信頼関係が育まれてきた。こうした蓄積を基に、2017年に友好都市提携が実現した経緯がある。
市は従来の「訪問し合う交流」から一歩進め、友好都市出身者を一定期間市内に迎えて地域課題の解決や魅力発信に携わってもらう手法を選んだ。人口減少や少子高齢化が進む地方都市において、一過性のイベントにとどまらない日常的な交流と地域力の強化が必要と判断したためだ。
協力隊の具体的な役割
着任した莊さんは、日本語・中国語の両言語に対応でき、日台双方の文化に精通している点が評価された。主な業務は次の通りで、市の国際化と交流の恒常化に直結する内容だ。
- 台湾向け観光PRやSNS発信、デジタル媒体を用いた等身大の飛騨の魅力発信
- 市内の小中学校・高校での国際教育・異文化理解の支援
- 市民同士の交流促進や友好団体の活動支援
- 台湾向け受入環境の整備(多言語化など)
- 関係人口マッチングプラットフォーム「ヒダスケ!」の国際版実証に向けた企画・受入支援
「この地域には親しみを感じています。これから地域の皆さまと交流を深めながら、飛騨市についてより深く学び、その魅力を発信していきたいと思います」— 莊欣翰(着任の意気込み)
住民への影響と期待
飛騨市は人口約21,000人で、地域の多くは森林に囲まれ、教育や観光資源が豊富だ。こうした地域に外国出身者が常駐することは、日常的な異文化接点を生み出し、子どもたちの国際理解教育や地域の観光受入れ体制の多言語対応といった具体的な効果が見込まれる。特に以下の点が重要だ。
- 学校教育:海外出身のコーディネーターが定期的に関わることで、オンライン交歓に比べ深い学びと長期的な理解促進が進む。
- 観光振興:台湾市場向けの等身大の情報発信や受入環境整備は、訪日台湾客の増加と地域産品の販路拡大に寄与する可能性がある。
- 地域課題解決:外部人材の視点を活かした新たな取り組みは、地域の活力維持につながる。
運用面と今後の展望
飛騨市は、今回の着任を契機に市民レベルでの交流をさらに活性化し、観光・教育・文化・経済分野での連携を深めることを目標に掲げている。とりわけ2027年の提携10周年を見据え、短期的なイベントに終わらない持続可能な交流モデルの構築を図る方針だ。
また、今回の試みは他の地方自治体にとっても参考となる。友好都市や海外の関係団体との長年の信頼関係をベースに、地域おこし協力隊の制度を活用して人的交流を常設化する手法は、相互の理解深化と具体的な地域振興につながるためだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 協力隊氏名 | 莊 欣翰(チャン・シン・ハン) |
| 出身地 | 台湾 嘉義県 新港郷 |
| 主な業務 | 観光PR、国際教育支援、多言語化、ヒダスケ国際版実証など |
| 今後の節目 | 2027年:友好都市提携10周年 |
飛騨市の取り組みは、単に観光客を増やすための短期的な施策ではなく、地域の教育現場や市民の交流機会を通じて日常的な国際性を育むことを重視している。今後、実際にどの程度市民との接点を増やし、教育や産業面での成果につなげられるかが注目される。
(山崎 大輔)