避難所の体育館、設置進むも自治体差が鮮明
文部科学省の調査(2026年5月1日現在)によれば、公立学校の体育館や武道場における空調(冷房)設備の設置率は全国で31.7%、避難所に指定されている学校に限定すると33.1%にとどまる。茨城県内は公立小中学校の体育館で39.8%の設置率となり、都道府県別で全国10位の水準に達しているが、市町村ごとのばらつきが大きい。
県教育委員会は避難環境の改善を優先課題と位置づけ、国の支援制度を活用した整備を各自治体に働きかけている。一方で、設置には多額の費用が必要で、自治体側の財源確保が自治体間格差の主因になっている。
「避難所で良好な生活環境を確保するため、空調設備の必要性は極めて高い」
(県教育委員会発言より)
自治体ごとの状況と住民影響
調査では、常陸大宮市、五霞町、東海村などが体育館へのエアコン設置を100%達成している。一方、学校数が多い水戸市やつくば市では整備が追いついておらず、設置率が比較的低い。例えば、つくば市は避難所指定の学校が51校に上るが、体育館にエアコンが付いているのは新設の市立さくら小学校のみで、今年度中に中学校・義務教育学校は整備完了、来年度に小学校全校分の整備完了を目指す計画を示している。
古河市は昨年度から工事を本格化させ、避難所に指定している小学校15校と中学校6校のうち、未設置の7校については11月末までに工事完了の見込みとしている。これは、昨年8月に観測史上最高の40.6度を記録した気象の影響を受けた対策だ。
費用負担の実例と課題
設置費用の負担を巡っては各自治体が工夫を重ねている。つくば市は体育館のエアコン設置のため、来年4月から13年間で約35億5900万円の長期リース契約を結ぶ計画を示しており、分割での負担と早期整備を両立させる方針だ。しかし、こうした手法は財政規模や借入余力による差が生じやすく、小規模自治体では同様の対応が難しいケースもある。
- 優先整備の判断:普通教室等の空調を先に整備してきた自治体では体育館整備が後回しになる。
- 財源確保の多様化:国の補助制度、長期リース、自治体の予算配分などを組合せる必要がある。
- 工期と物資確保:全国的な需要増で工事や機器調達の遅延が生じる恐れ。
防災と健康の観点からの必須性
今年8月には熊本で地震が発生し、夏場に体育館で避難生活を送った被災者の熱中症リスクが改めて問題となった。茨城県内でも8月23日未明に震度5弱の地震が広域で観測され、地震と猛暑が重なる事態は現実味を帯びている。避難所における室内温熱環境は高齢者や持病のある住民の生命に直結するため、体育館の空調整備は単なる快適性の向上を超えた緊急課題だ。
住民にとって実際に影響する点は次の通りだ。避難所に指定されている学校に体育館の空調がない場合、夏季の避難では熱中症リスクが高まり、救急搬送や重症化の可能性が増す。逆に体育館整備が進めば、短期避難だけでなく長期避難が必要なケースでも安全な生活環境の維持につながる。
| 指標 | 全国(調査値) | 茨城県 |
|---|---|---|
| 公立学校体育館の設置率 | 31.7% | 39.8% |
| 避難所指定校の設置率 | 33.1% | 39.8% |
今後の見通しと住民への助言
県教委は国の支援制度を活用した整備を引き続き促すとしており、今後数年で設置率は上昇する見込みだが、自治体間の温度差は短期間で解消しにくい。住民としては、各自治体の避難所設備の現状を確認し、避難時のリスクを減らす個人の備え(暑さ対策の備品持参、近隣での避難先の把握、高齢者や要支援者の支援計画作成)を進めることが重要だ。
学校体育館の空調整備は、防災と住民の健康を直接結びつける投資である。予算上の制約をどう克服し、効果的に整備を進めるかが、今後の地域防災力を左右する課題となる。
(茨城県担当記者 中村 智子)