全国47形状がそろい、実用品として展開
地図情報を手がけるゼンリンが展開する雑貨ブランド「Map Design GALLERY」のシリーズに、新たなラインアップが加わった。都道府県の輪郭を生かした「都道府県型キーホルダー」で、先行販売を経て47都道府県が出そろった。形状は各県のシルエットを可能な限り保ちつつ、カラビナとして機能するよう設計。バッグやリュックに取り付け、小物や鍵を掛けられる実用品として提案されている。価格は2640円。
同社は2023年に「47都道府県ピンバッジ」を発売。出身地やゆかりの土地を身に着けられる点が支持され、カラー版や金属素材の派生商品へと広がってきた。今回のカラビナ型は、それらに続く最新作だ。開発担当者は、旅行先で日常的に使うカラビナに“愛着の持てるデザイン”を取り入れたいという着想から企画に至ったという。試作品を公開した段階で「自分にゆかりのある都道府県が欲しい」といった反応が相次ぎ、2025年には7都県で先行販売。その後、40道府県を追加し、全種がそろった。
「バッグにちょっとしたものを引っかけるためにカラビナを付けていることがよくありました。『もっとかわいくて愛着の持てるカラビナをつくれないか』と考えたのがきっかけです。都道府県の形をそのまま生かせば、一目でインパクトのあるキーホルダーになると思いました」
設計の要点と苦労 熊本・京都・鳥取・青森の例
都道府県の輪郭をカラビナ化するには、見た目と機能の両立が求められる。担当者は、地図としての印象を損なわずに、開口部や強度を設計するため、何度も試作を重ねたと説明する。特に熊本県では、当初構想していた開口部の位置では全体のバランスが取れず、本土と天草諸島の間に開口部を設定することでシルエットと実用性の両方を確保したという。細長い形状の京都府や鳥取県でも、強度と使いやすさとの折り合いに工夫を要した。
一方で、設計が比較的スムーズに進んだ例として青森県が挙げられた。地形の特性を活かしつつ、想定どおりの仕上がりに至ったといい、完成品は一目で同県と分かる形。配色もリンゴを想起させる赤と白が選ばれている。
群馬県がまた最上位 愛着の根拠としての「上毛かるた」
販売動向にはシリーズ開始当初からの傾向が続いている。先行販売した7都県のなかで人気1位が群馬県。続いて兵庫県、千葉県、神奈川県が並び、東京都は7位だった。さらに、2023年に発売したピンバッジや、続くカラーバージョンでも群馬県が販売数トップを維持。シリーズが新作に移っても、同様の傾向が今回も続いた。
背景として、担当者は「県の形そのものへの愛着」を挙げる。群馬県では、郷土かるたとして親しまれている「上毛かるた」の札の一つに、県の形を連想させる表現がある。学校などで同かるたに触れる機会が多いことが、幼いころから県の輪郭に親しむ経験となり、後年の購買行動にも影響している可能性があるという。人口規模だけでは説明できない売れ行きが見られるのも、このシリーズの特徴だ。
地域での使い方と広がり方 「地図の輪郭」が主役に
このシリーズは、従来は地図の背景として認識されがちな「県境の線」に焦点を当て、持ち歩けるシンボルに置き換えた点に新しさがある。出身地の誇りを示すほか、旅の記念や贈り物としての選択肢にもなる。特定の自治体の観光スポットや特産品を前面に出すのではなく、形そのものをモチーフにしたことで、県外在住者にも選びやすい。
- 通勤・通学のバッグに取り付け、鍵や小物の定位置に
- 旅先でのサブバッグや水筒の取り付け補助に
- 家族・友人の出身地や思い出の土地を贈り物として共有
購入理由は多様だ。出身地への思い、訪れた県の記憶、あるいはシルエットの印象度といった要因が挙げられる。複数の県を集め、家族や友人と地図上のつながりを話題にする楽しみ方も想像される。形に焦点を当てたアプローチは、地域の魅力を押し付けずに参加の余地を残し、選ぶ側の物語を引き出す点で、雑貨としての完成度を高めている。
シリーズの位置づけと価格情報
「都道府県型キーホルダー」は、同ブランドが持つ詳細な地図データや古地図などのアセットをデザイン資源として活用する取り組みの一環だ。文具、バッグ、食器など幅広く展開してきたラインに、地図の要素を前面に押し出した製品が加わった格好である。形の再現性と日用性の両立に挑んだことで、シリーズ内の役割も明確になった。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | 都道府県型キーホルダー(カラビナ) |
| 対応 | 47都道府県 |
| 価格 | 2640円 |
| 先行販売 | 7都県で実施後、40道府県を追加 |
| 関連シリーズ | 47都道府県ピンバッジ/カラーバージョン等 |
群馬県にとっては、県外に住む出身者や、観光で訪れた人が「形」から県を思い出すきっかけを持てる点が大きい。県の形状認知は、地名や名所を覚える入口にもなりやすく、学習や地域理解の側面からも意味がある。とりわけ「上毛かるた」によって形を幼少期から反復してきた県民にとっては、日常品として取り入れたときの納得感が高いとみられる。
今後に向けた視点 地域の誇りを日常に
シリーズを通じて見えてくるのは、人口規模だけでは測れない購買傾向だ。群馬県が首位を維持し続ける事実は、県民の間にある形への共通認識と親しみが、具体的な消費行動に結び付いていることを示す。地図という客観的素材を、日用品として生活の中に取り込む動きは、地域の誇りを自然に表現する手段にもなる。
ゼンリンの雑貨展開は、地理情報の企業資産を等身大の価格と日常使いに落とし込むことで、利用者の裾野を広げてきた。今回のキーホルダーも、県境の線に潜むストーリーを呼び起こす装置として働く。群馬県が示した継続的な首位という結果は、地域アイデンティティの形成と、モノ選びの価値観が交差する点を浮かび上がらせている。
地図の輪郭が主役になるこの発想は、今後もバリエーションを生みやすい。色や素材、関連する文具との組み合わせなど、使い手自身が「自分の群馬」を形にできる余地が残されているからだ。日常の小さな所作のなかに、地域へのまなざしを忍ばせる。そんな使い方が、静かに広がりつつある。