高崎発の視点:海外三都市の視察から何を学ぶか
くらしまち財団たかさき主宰の林史泰氏(高崎市並榎町)が寄稿したオピニオンは、シアトル、ロサンゼルス、ポートランドの3都市を巡った実地観察をもとに、高崎の都市づくりにとっての示唆をまとめたものだ。林氏は建築・都市計画の専門家として長年にわたり地域活動に携わっており、今回がオピニオン委員としての最終寄稿となる。
視察で得られた印象は都市ごとに大きく異なる。シアトルではITや航空など世界的企業の集積や、地元の象徴として機能する空間が町の力を支えていると評価した。一方ポートランドでは空き店舗や空きオフィス、ホームレスの問題が目立ち、コロナ禍後の課題が顕在化していると感じた。ロサンゼルスでは実験住宅から現代の住まい方へのヒントを得たと記している。
「まちというのは、誇れるものがあり、そこに暮らす人が自分たちのまちを好きだと思えること。人が集まり、挑戦し、交流し、新たな縁が生まれる場所をどうつくるかが大事ではないか。」
視察で触れた具体的事象と高崎への含意
- シアトル:アマゾンやマイクロソフト、ボーイングなどの企業集積と、パイクプレイスマーケットのように地元の人も集まる場所が都市の魅力を形成している。
- ポートランド:空き店舗・空きオフィス、ホームレスの存在が増え、市の“住みたい”イメージに影響を与えている現状を確認。
- ロサンゼルス:「イームズハウス」「スタールハウス」など戦後の実験住宅から住まい方の示唆を得たこと。ドジャースタジアムで大谷翔平選手の復帰試合に立ち会った経験なども書かれている。
これらの観察は、高崎が将来的にどう地域力を強めるかを考えるうえで実務的な示唆を与える。林氏が強調するのは、市民・行政・企業が連携し、日常的な小さな取り組みを積み重ねることが都市の力をつくるという点だ。視察で見られたボランティアによる公園整備や地域の象徴となる場づくりは、高崎でも応用できる身近な手法である。
高崎での具体的な意味合いと住民への影響
林氏は高崎におけるまちづくりの当事者でもある。記事の記述から読み取れる高崎への示唆は次の通りだ。
| 観察項目 | 高崎への含意 |
|---|---|
| 企業集積と地域経済 | 大企業の集積が無ければならないという話ではないが、地域経済を牽引できる拠点や雇用の創出が重要。 |
| 公共空間・市場の役割 | パイクプレイス型の「地元の人も集まる場所」が観光と地域交流の両立を促す。 |
| 空き店舗・社会課題 | 空き物件や生活困窮などの課題は都市の魅力を削ぐため、対策が必要。 |
| 住まいの実験と多様性 | 住宅や住まい方の多様化は地域の魅力や人口維持に直結する。 |
住民にとっての直接的な影響は、まちの「居心地」と「機会」の両面に現れる。居心地が良く誇れる公共空間や交流の場が増えれば、地域への愛着や定住意欲が高まり、結果として地域経済や地域行事の活性化につながる。一方で空き店舗の増加や生活課題の顕在化が続けば、街の魅力低下やサービスの後退を招く恐れがある。
市民や団体が取り組める当面のアクション
林氏が現地で見た取り組みは規模を問わず応用できる。以下は高崎の住民や地域団体が着手しやすい具体策だ。
- 地域の象徴となる小規模な「集まる場」を増やす(マーケット、広場、イベントの定期化など)。
- 空き店舗や空きオフィスの活用スキームを行政と協働で策定する。
- ボランティアや市民団体と自治体、民間企業が連携した公共空間の維持・創出。
林氏は自ら地域交流スペース「SO.ラボ」を運営し、地域活動を重ねてきた背景を持つ。こうした現場の知見が、他の団体や行政とつながることで、実効性のある施策に結びつく可能性が高い。
寄稿の結びで林氏は「高崎の未来をつくる一人でありたい」と記している。個々の取り組みの蓄積が都市の力を形づくるという視点は、地域の市民一人一人に関係する課題だ。高崎がどのような特色を磨き、どのようなネットワークを築いていくかが今後の焦点となる。
(まとめ)林氏の観察は、海外で見た成功例と課題の両面を通じて、高崎が取り組むべき視点を明確に示している。市民・行政・企業が具体的な小さな施策を重ね、地域に誇りを持てる場や機会を育てることが、将来の高崎の持続力につながる。
参考:寄稿者プロフィール 林史泰(建築・都市計画家)。2004年に建築設計事務所「イデアプラス」を創業。2012年から高崎と東京の二拠点生活を送り、地域交流スペース「SO.ラボ」を運営している。