看護人材の減少で病床運用にも影響
下呂市内の医療現場で看護師不足が続き、医療提供体制に影を落としている。県立下呂温泉病院は常勤の看護職が146人で、ここ10年余りで約50人減少したとされる。人員不足のため看護師配置基準を満たす形で入院定数を減らさざるを得ず、実質の運用病床は130床にとどまっている。
一方、市立金山病院でも人手不足が要因となり、昨年には療養病棟を閉鎖した。閉鎖後に同病棟の看護師は一般病棟や外来に再配置され、「何とかギリギリの状態で回している」と担当者が話す。新卒看護師の採用が遠のき、中途採用に頼る傾向が続いている点も課題だ。
現場の負担と地域高齢化の重なり
下呂市は高齢化が進んでおり、後期高齢者を中心に手間がかかる業務が増えている。夜間の徘徊対応など、時間帯ごとに看護師の不足を強く感じる場面が多いという。看護部長は新規採用の応募が減少し、退職者を埋められない状況を懸念している。
人材確保に向けた取り組みとその限界
人材確保のため、病院側や市は複数の対策を講じている。県立下呂温泉病院は都市部の大学や看護学校に病院や地域の特徴をまとめた冊子を置いてPRを行っている。2025年度からは看護学生を対象に看護補助者の仕事をアルバイトとして体験できる制度の募集を始めた。
行政も支援策を導入しており、市は看護師になった人に20万円(条件:市内医療機関での2年以上の勤務)を支給する制度を25年度から打ち出している。しかし、看護師確保には病院単独の取り組みだけでは限界があり、生活支援などを含めた行政との連携が不可欠だと病院側は指摘する。
教育現場と人材の新たな道筋
看護師を育てる県立下呂看護専門学校の状況も厳しい。今春の新入生は6人で定員の30人を大きく下回り、ここ数年は減少傾向が続いている。学校は25年度からオープンキャンパスを年2回に増やすなど広報を強化しているほか、本年度から社会人向けの入試制度を導入し、幅広い世代の入学を促す方針を打ち出した。
地域で看護職への関心を高める取り組みも行われている。下呂市内の小中高校で看護職の出前講座を実施し、看護学校の講義や職場紹介を行うことで若年層への認知を図る活動だ。下呂看護専門学校の卒業生で教員の原健一郎さんは「看護師はいろんな人に関われるのが魅力」と若い世代に呼びかけている。
外国人材活用と現場の実践
看護師不足に対応するため、外国籍人材を活用する事例も出ている。金山病院は昨年から特定技能資格でフィリピン出身の2人を看護助手として採用し、他県の先行例を参考に受け入れを進めている。ただし、看護師としての即戦力化や日本語・業務習得に時間を要する点があるため、補助的業務での活用が中心となる。
住民への影響と注意点
看護師不足は医療の提供能力を抑制し、結果として入院受け入れの制約や診療体制の縮小を招く。住民が知っておくべきポイントは次の通りだ。
- 入院受け入れや病床数の運用に変化が生じる可能性があること。
- 療養病棟の閉鎖などで一部の医療サービスが市内で受けにくくなる場合があること。
- 行政や医療機関が人材確保策を講じているが、即効性に限界があり、中長期的な取り組みが必要であること。
取材に対し病院関係者は「病院だけでは難しく、生活のケアを含めて行政とも協力しないといけない」と述べた。
今後の見通しと地域としてできること
現状を踏まえると、待遇改善や働き方改革、デジタル機器の活用による業務効率化などが求められる。ただしこれらの施策でも短期的に人手不足を完全に解消するのは難しいとみられる。住民は自らの健康管理を徹底するとともに、かかりつけ医や地域の医療機関の診療時間、受け入れ状況の変化に留意する必要がある。
地域社会としては、若年層や社会人を対象に看護職の魅力を伝える教育・広報活動の支援、外国人材受け入れの環境整備、生活支援と医療をつなぐ体制づくりを行政・医療機関・住民が協働で進めることが重要だ。下呂市の医療現場は現在も地域医療を維持する努力を続けており、住民の理解と協力が求められている。
| 項目 | 数値・状況 |
|---|---|
| 県立下呂温泉病院の常勤看護職 | 146人(10年余で約50人減) |
| 実質運用病床 | 130床 |
| 下呂看護専門学校の新入生 | 6人(定員30人) |
| 市の支援金 | 看護師になった人に20万円(2年以上勤務が条件) |
| 外国籍人材の採用例 | フィリピン出身の2人を看護助手として採用 |