要点
- CRYL(株式会社CRYL)が提供する暗号資産担保ローンに、株式会社LiquidのLIQUID eKYCが導入され、アカウント開設時の本人確認がオンラインで完結する。
- 導入される本人確認方式は、公的証明書のICチップを読み取る方式や容貌のパッシブ判定オプションを含み、2027年の犯罪収益移転防止法の改正に対応可能。
- オンライン完結と厳格な不正対策の両立により、暗号資産担保ローンの利用者利便性と事業者側のコンプライアンスが向上する見込み。
暗号資産を担保に法定通貨の融資を受けることができるサービス「CRYL(クリル)」(提供:株式会社CRYL、東京都港区)が、アカウント開設時の本人確認にオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC(リキッドイーケーワイシー)」を採用した。提供開始は株式会社CRYLが暗号資産担保ローンサービスを開始した2026年7月のタイミングに合わせたものだ。
何が変わるのか
これまで、金融サービスやレンディング関連の口座開設では対面確認や郵送による本人確認が必要になる場合があり、ユーザーの手続き負担や時間的コストが課題だった。今回の導入により、アカウント開設から契約までの手続きをオンラインで完了できるようになり、申込のハードルが下がると見込まれる。
導入されるLIQUID eKYCは以下の方式を提供する点が特徴だ。
- ICチップ読み取り方式:公的証明書に内蔵されたICチップを読み取る方式で、2027年4月に予定されている犯罪収益移転防止法(犯収法)改正に対応可能な手段として説明されている。
- ヘ方式・カ方式:犯収法施行規則の該当条項に準拠した本人確認方式を含む。
- 容貌パッシブ判定オプション:ユーザーが撮影した正面画像だけで真贋を判定する機能で、首振りやまばたきといった追加動作を求めないため、利用者の負担を軽減しつつ、ディープフェイクなどの攻撃に対する抑止力を強化する。
これらの技術的仕様は、オンラインでの本人確認における利便性とセキュリティの両立を目指したものだ。特に容貌のパッシブ判定は、映像のリアルタイム性や撮影環境の差異に依存しない点で実務運用における柔軟性を高める可能性がある。
CRYLのサービス設計と利用シーン
「CRYL」は、利用者が保有する暗号資産を担保に差し入れることで売却せずに現金を調達できる点を特徴とする。利用目的は納税資金や生活資金、事業資金、不動産購入など多様だとしている。申し込みから契約までをオンラインで完結できる点も売りにしている。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 事業者 | 株式会社CRYL(J-CAMグループ) |
| 提供サービス | 暗号資産担保ローン「CRYL」 |
| 導入する本人確認 | LIQUID eKYC(IC読み取り、ヘ・カ方式、容貌パッシブ判定) |
| 期待される効果 | オンラインでの口座開設の利便化、法令対応、ディープフェイク等への対策強化 |
選定理由と運用上の意義
株式会社CRYLがLIQUID eKYCを採用した決め手として、必要な機能要件を満たしていること、そしてグループ会社での導入実績による操作・運用ノウハウが既に蓄積されている点が挙げられている。これにより、サービス立ち上げの初期段階での運用負担を軽減できると説明されている。
金融関連サービスにおいては、利便性を高める一方で本人確認の厳格性を維持することが求められる。特に暗号資産に関わるレンディングやローンでは、マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策が重要であり、2027年の法改正を見据えた早期の対応は業界にとって示唆に富む動きだ。
留意点と今後の注目点
- オンラインでの本人確認が可能になる一方、実運用では申請者の利便性や端末環境、ネットワーク環境による影響が発生する可能性があるため、ユーザーサポートや代替フローの整備が重要になる。
- 容貌パッシブ判定の実装はディープフェイク対策として有効だが、誤判定や環境による判定精度のばらつきが課題となりうる。これらを補う検知・エスカレーションの仕組みが求められる。
- 暗号資産市場の価格変動は担保価値に直結するため、担保管理や追証(マージンコール)に関するルール整備と顧客への分かりやすい情報提供が必要だ。
こうした点はCRYL側が公開しているサービス説明や導入仕様から読み取れる。今後は実際の運用開始後に、本人確認フローのユーザー体験、審査での所要時間、そして不正検知の有効性といった実務データが公表されれば、業界全体の標準やベストプラクティス形成に寄与する可能性が高い。
参考情報(公開されている事項)
- 株式会社CRYL:代表取締役 新津 俊之、所在地 東京都港区西新橋3-13-3 BIZCORE西新橋13階。登録番号 東京都知事(1)第32065号(登録有効期間:令和8年4月9日~令和11年4月8日)。
- 株式会社J-CAM:同一住所で暗号資産レンディング等を展開。
- 提供されるLIQUID eKYCは、IC読み取り方式やヘ・カ方式、容貌パッシブ判定等の機能を含む。
暗号資産関連サービスの拡大に伴い、オンラインでの利便性向上と法令順守の両立は業界にとって喫緊の課題だ。今回のCRYLによるLIQUID eKYC導入は、その一例として注目に値する。サービスの普及とともに、運用上の知見が蓄積されれば、暗号資産を用いた金融サービス全体の信頼性向上につながる可能性がある。