チームで担任を分担、福江中が試行
五島市立福江中学校(校長:入口兵衛、在校生463人)は、本年度から複数の教員で学年を受け持つ「チーム担任制」を導入した。学校は市教育委員会の研究指定を受け、成果と課題を検証しながら段階的な普及を目指す方針だ。導入後、職員室の会話が増え、教員間の情報共有が促進されたことや、教員1人当たりの時間外勤務が減少するなど一定の効果が確認されている。
制度の仕組みと現場の運用
同校は従来の「1学級1担任」制を見直し、各学年4クラスを6~7人の教員がチームで担当する形を採った。役割は主に次の3つに整理されている:
- メインティーチャー(MT):朝の会等、日常的な学級運営を担当し、数日から2週間ごとに交代する。
- サポートティーチャー(ST):学年全体の支援にあたり、必要に応じてクラス間を調整する。
- ベーシックティーチャー(BT):保護者対応や相談窓口を年間通じて固定で担う役割。教員1人当たりの担当生徒数は約25~30人に設定されている。
特別支援学級でも従来の学年単位を改め、4学級を6人体制で受け持つなど、機能的な配置を進めている。教員間で机を同じ場所に配置するなど情報交換の仕組みを物理的にも整え、日常的な相談やノウハウの継承を容易にしている点が特徴だ。
現れた効果と職場の変化
学校側は、導入後に職員室での会話が増え、相談や情報共有が活発になったと評価する。入口校長は、教員が課題や悩みを一人で抱え込まなくなった点を最大の変化として挙げている。実際に、教員1人当たりの月平均の時間外勤務は4~6月期で前年同期比平均15.7時間減少し、働き方改革の一定の効果が出ている。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 学級担任体制 | 1学級1担任 | 学年を6~7人チームで担当 |
| 特別支援学級 | 学年単位 | 4学級を6人体制で担当 |
| 時間外勤務(教員1人当たり) | 前年同期基準 | 4~6月期で平均−15.7時間 |
生徒・保護者の受け止めと課題
一方で、生徒や保護者からは戸惑いの声も上がる。生徒の中には「先生によって指示が違うことがある」と指摘する者や、運動会などで1人の熱心な担任が見られなくなり寂しさを感じるとの声もあった。保護者側では、「担任が1人でなくなることで責任が曖昧になるのではないか」「進路指導や受験対応では固定の担任を期待する」といった懸念が示されている。一方で、別の保護者からは「複数の先生の目で多面的に子どもを見守ってくれるので安心」との評価も聞かれる。
「昨年より格段に会話が増えた。課題や悩みを1人で抱え込まず、チームで支え合う意識が生まれている」
(入口校長)
現場での工夫と今後の検証
現場では、短時間の学年ミーティングで日々の体調や指導上の留意点を速やかに共有するなど、情報の「見える化」を進めている。新任教員は先輩教員の学級運営を間近で学べる機会が増え、特別支援分野では情報量が増えたことで対応の幅が広がったとの声が上がる。具体例として、役割分担により野菜栽培の販売体験など従来は難しかった活動が実施できるようになった点が挙げられている。
同校は今後、アンケートや関係者の意見を踏まえながら改善策を重ねる方針だ。市教委は、福江中の検証結果をもとに市立小中学校への段階的な普及を目指す考えを示している。教育長は、複数の目で子どもを見守る体制や、子どもが自ら学級をつくる主体性を育てることを期待している。
住民への影響と留意点
今回の取り組みは、教員の過重労働を軽減し教育の質を保つねらいがある。保護者にとっては相談窓口が複数になる利点と、責任の所在が分かりにくくなる不安が並存する。進学や生活面のきめ細かな支援を必要とする生徒がいる家庭は、固定担当に関する要望を学校に伝えることが重要だ。学校側は、指導の統一化や情報共有の徹底を進め、保護者との連携を強めることで信頼を築く必要がある。
五島市内でこの制度が広がれば、教員の働き方や学校運営の在り方に変化が及ぶ可能性が高い。市教委と各校の連携、保護者との対話、定期的な検証を通じて、制度の定着と課題解消が問われる局面にある。