猛暑とストレスで顕在化した「見えない被害」
熊本地震から1か月が経過した段階で、災害関連死を含む死者が報告される一方、約2,460人が避難生活を続けている。静岡県中部健康福祉センターの保健師が被災地で実施した健康確認からは、けがの治療が継続されず在宅で過ごす人が多いこと、そして猛暑による体力消耗が持病の悪化や熱中症のリスクを高めている実態が浮かび上がった。
保健師が訪問した地域では、在宅避難者が避難所利用者に比べて支援の目が届きにくい点が指摘された。被災直後の数日から1週間は、災害関連死が増えやすい時期とされる。気温が高い状況が続く中で、屋内での片付けや暑さによる睡眠障害、十分な体力が確保できないことが、慢性疾患を抱える人たちにとって深刻な影響を及ぼしているという。
「厳しい暑さの中でお家の中の片付けをしなければいけなかったり、夜も寝苦しかったりして体力を奪われて、元々病気を持っている方は、病気が悪化したりというようなことも見受けられるのかなと思います」
今回現地で活動した保健師は、こうした暑さと生活環境の変化が重なる状況を「ダブルパンチ」と表現している。被災者の年齢層には高齢者や乳幼児を含むため、個々の脆弱性に応じた対応の必要性が改めて示された。
在宅避難の課題と支援の重点
在宅避難者の健康リスクに対して、行政側も対応策の検討に動いている。静岡県知事は猛暑下での被災者支援のあり方について見直しを進め、避難所運営マニュアルや防災計画への反映を目指すとしている。具体的には、在宅避難者への訪問支援の強化や、熱中症対策を含む健康管理の周知が焦点となる。
在宅避難者が抱える主な問題点は次の通りである。
- けがや治療中の持続的ケアが不十分であること
- 猛暑による体力低下や睡眠障害で持病が悪化するリスク
- 支援の届きにくさ(情報不足・訪問頻度の低さ)
- 乳幼児や高齢者などの脆弱群への配慮不足
これらに対しては、訪問型の健康確認と情報提供、緊急時の搬送体制の確保、住宅内での一時的な避難環境改善(冷却場所の確保など)が優先される。
データに見る支援の優先順位
現地報告では、在宅避難世帯を中心に約120世帯が個別に健康確認を受けたとされる。現場での観察や聞き取りは、数字に表れない被害を把握するうえで重要だ。今後、地域保健センターや保健所の知見を取りまとめることで、より精緻な支援方針の構築が期待される。
| 項目 | 現状 |
|---|---|
| 在宅避難者数 | 約120世帯を巡回(事例報告) |
| 避難継続者 | 約2,460人(報告時点) |
| 主な健康課題 | 持病悪化、熱中症リスク、けがの未治療 |
今後の展望と求められる対応
被災直後の対応に加え、猛暑や季節要因を踏まえた中期的な健康支援が必要だ。保健師らの経験を被災地対応のマニュアルに反映させること、自治体間でのノウハウ共有、さらには地域住民への継続的な健康教育が重要となる。県は九月にも検討会を立ち上げ、今回の教訓を政策に結び付ける方針である。
現場の声に耳を傾けることは、災害後の「見えない被害」を軽減する第一歩である。高温環境や生活の変化に伴う健康リスクは短期的な対応だけでなく、長期のフォローアップを要する課題であり、関係機関の連携と具体的な支援策の早期実行が求められる。
(取材・文=長谷川 由希)