沿線自治体が国・県の協力で早期実施を求める
三重県伊賀市と滋賀県東近江市を南北に結ぶ高規格幹線道路、名神名阪連絡道路(延長約30キロ)の早期事業着手に向け、沿線の整備促進期成同盟会などが7月9日、三重県に支援を要請した。期成同盟会は沿線8市町で構成され、自治体長や議連、沿線企業が要望に同席している。会長の甲賀市長らが県庁を訪れ、後田和也副知事に要望書を手渡した。
- 対象路線:名神名阪連絡道路(南北約30km、伊賀—東近江区間)
- 加盟主体:沿線の8市町など(期成同盟会)、議員連盟、沿線企業
- 主な要望:事業化に向けた支援、財源確保の検討(資材・人件費高騰を考慮)、有料道路を含む財源手法の検討
期成同盟会側は、事業化を進めるため国・県による具体的支援と、建設を巡るコスト上昇に対応するための財源創設を求めた。要望書の提出にあたり、岩永甲賀市長は開通へ向けた強い決意を示し、「なんとか風穴を開けたい」と訴えた。また稲森伊賀市長は南海トラフ地震など大規模災害時における本路線の役割を強調し、30年に及ぶ地域の悲願を前に進めたいと述べている。
「完成すれば、産業や防災、生活、観光など、さまざまな分野で効果がある。早期実現に向けて力を発揮したい」
後田副知事は要望に対して賛意を示し、完成した際の波及効果に触れて理解を示した。国は平成13年度(2001年度)に本路線の全線を「調査区間」に指定したものの、その後の事業化には至っていない。三重県と滋賀県は令和4年度(2022年度)から有識者委員会を設置し、住民などから意見を募る作業を続けている。
地域への具体的影響と課題
本路線が実現すれば、次のような影響が想定される。
- 物流・産業:名神高速や名阪国道など既存幹線との接続が強化され、沿線の企業にとって輸送時間短縮や経済圏拡大が期待される。
- 防災機能:南海トラフ地震などの大規模災害時における代替輸送路や救援ルートとしての重要性が高まる。
- 生活利便:通勤・通学の利便性向上、観光圏の拡大による地域経済の活性化が見込まれるが、用地買収や環境影響、費用負担の課題は残る。
ただし、要望書が指摘する通り、直近の資材価格や人件費の上昇は事業費を押し上げる要因となる。自治体側はこの点を踏まえ、事業採算性や財源確保の具体策を早急に詰める必要がある。要望には「有料道路事業も含めた財源確保の方策」検討が含まれ、地域負担のあり方や利用料金の有無・水準といった論点が今後の協議課題になる。
今後の見通しと住民向けポイント
現時点での公表済みの進捗は以下の通りで、事業化に向けた具体的スケジュールは未定である。
| 項目 | 現状 |
|---|---|
| 国の位置づけ | 平成13年度に全線を「調査区間」指定(事業化は未達) |
| 県の対応 | 令和4年度から三重・滋賀で有識者委員会を設置、意見聴取を継続 |
| 最近の動き | 沿線の期成同盟会が三重県に要望書を提出(2026年7月9日) |
住民や事業者が押さえておくべき点は次の通りだ。
- 事業化には国・県の合意と財源確保が不可欠で、短期の着工は現時点で確約されていない。
- 有料道路方式を含めた財源案が検討されれば、通行料金の可能性や料金設定に関する議論が生じる。
- 環境影響や用地取得に伴う地域説明会や意見募集が今後行われる見込みで、住民参加の機会を注視する必要がある。
今回の要望は、沿線自治体が事業の優先度を改めて行政に訴えた点で意義がある。だが、計画は長年にわたる積み残しでもあり、事業費増を踏まえた実効ある財源計画や環境・地域との折り合いがなければ、実現は容易ではない。今後は三重県・滋賀県と国の協議状況、具体的な財源策、地元説明の時期が注目される。地域の利便性と防災機能の向上をめざす一方で、住民や事業者が負担と便益の見通しを得られるかどうかが、事業推進の鍵となるだろう。
(滋賀県担当記者 阿部 竜也)