広島高裁松江支部、双方の控訴を棄却
広島高裁松江支部は2026年7月29日、鳥取大学医学部附属病院の元職員の女性が大学を相手取り提起した損害賠償請求の控訴審で、原告・被告双方の控訴を棄却し、原審(鳥取地裁米子支部)の判断を支持する判決を言い渡した。裁判長は寺本昌弘氏が務めた。
訴訟の争点と裁判所の判断
本件は、元職員の女性が大学による国の補助金の目的外使用を告発したことを契機に、2015年から2016年にかけて上司からパワハラを受けたと主張し、500万円の損害賠償を求めたもの。1審では、原告の主張する10件の行為のうち5件がパワハラとして認定され、鳥取大学に対して50万円の支払いが命じられていた。
控訴審の寺本裁判長は判決で、原告が提出した証拠からは補助金の目的外使用の実態や、隠ぺい工作が行われたと裏付けるには至らないと指摘した。一方で、パワハラの一部は一審同様に認定され、大学側関係者の対応について「必ずしも適切であったと言い難い部分もある」との評価を示した。
原告の主張については「補助金流用の内部告発を理由にした被告らの報復だとの心情を抱いたことは、理解できないではない」と述べつつ、報復の意図を明確に示す的確な証拠はないとした。
原告と大学の反応
判決後、原告の元職員の女性は記者会見で判決への不満を表明し、次のように述べた。
「正直、私は非常に残念で、無念で、無念で。腹が立って仕方がありませんでした。」
女性は公益通報者が守られない社会の危険性を指摘し、鳥取大学には自浄作用を期待すると述べ、最高裁への上告の意向を示した。
鳥取大学は判決に対しコメントを発表し、「本学の主張がおおむね認められましたが一部認められなかったことについて残念に思います。今後は判決文を詳細に検討し弁護士と協議の上決定して参ります」としている。
松江地域への影響と住民への視点
本件の控訴審は広島高裁松江支部で開かれ、判決が示されたことで松江市民にとっては裁判手続きの拠点である松江の裁判所が関わる大きな判断が示されたことになる。地域の大学・医療機関で起きた労務問題が裁判で取り上げられた点は、次の点で住民生活に関係する。
- 地域の医療機関の信頼性:医療機関が組織内の問題で社会的に注目されると、患者や地域住民の信頼に影響を与えかねない。判決の内容は、医療機関の管理体制や職場環境の改善を促す契機となる。
- 公益通報(内部告発)への関心:補助金不正使用の有無は裁判所では裏付けが困難とされたが、公益通報者をめぐる扱いのあり方は地域の職場全般で重要なテーマだ。通報者保護の仕組みや相談窓口の充実を求める声が高まる可能性がある。
- 司法手続きの地域拠点としての役割:広島高裁松江支部が最終審ではないものの重要な結論を出したことで、市民に司法アクセスの重要性が再認識される。
住民が知っておくべき実務的な情報
今回の判決を踏まえ、以下の点は地域住民や職場を運営する側が確認しておくとよい。
- 職場での相談窓口や人事手続きの存在と利用方法を確認すること。市や県の相談窓口、職場のハラスメント相談窓口の案内を事前に把握しておくと、問題発生時に冷静に対処できる。
- 公益通報に関する制度の仕組みや保護の範囲はケースによって異なる。告発を検討する場合は弁護士や専門窓口に相談し、証拠保存の方法など具体的な助言を得ることが重要だ。
- 本件の判決文は裁判所の公開記録で確認できる。詳細を知りたい市民や関係者は判決文を入手し、どの点が認定されたかを確認するとよい。
| 項目 | 内容(記事に基づく) |
|---|---|
| 控訴審の裁判所 | 広島高裁松江支部 |
| 判決日 | 2026年7月29日 |
| 一審の判断 | 鳥取地裁米子支部が50万円の支払い命令(10件中5件を認定) |
| 原告の請求額 | 500万円 |
本件は、労務問題や公益通報に関する法的判断が地域にもたらす影響を考える契機となる。松江市をはじめとする地域の事業者や医療機関、働く人々は、今回の判決を踏まえ職場環境の点検や相談体制の整備を進める必要がある。
(村上 彩)