観光周遊にNFTを活用、匿名での移動データ蓄積を図る
島根県石見地域の観光連携事業「石見周遊デジタルスタンプラリー」に、NFT(非代替性トークン)技術を用いたデジタルスタンプシステムが導入される。提供事業者はSUSHI TOP MARKETING(東京都)。本事業は日本郵便が公益社団法人島根県観光連盟から受託し、2026年9月1日から2027年1月11日まで、石見地域の9市町・約50スポットを対象に実施される。
同スタンプラリーは、昨年度(2026年1月〜3月)に開催された第1弾の延長線上にある施策で、当時は約1,200名が参加した。今回の第2弾ではスポット数を増やし、常設の観光施設に加え、季節の食イベントや伝統芸能「石見神楽」の公演会場も対象に組み込むことで、再訪や継続的な関わりを促す「関係人口」の創出を狙う。
「個人情報を取得しない匿名性を保ったまま、参加者の周遊データを蓄積できる点が特長」と事業側は説明している。
参加は専用アプリのダウンロードを必要とせず、日常的に利用されているLINEと二次元コード読み取りだけで完結する点が案内されている。これにより利用のハードルを下げ、幅広い年代の参加を見込む狙いだ。
現場への影響と観光施策への活用
主催側が強調するポイントは、従来の紙のスタンプラリーでは把握が難しかった周遊順序や移動傾向を可視化できる点だ。例えば、参加者がどのルートで道の駅や史跡、飲食イベントを回ったかといったデータを匿名で蓄積・分析することで、地域内の回遊促進ルートや滞在時間の最適化、イベント開催時期の検討など実務的な改善に結び付けられる可能性がある。
地域の観光事業者にとっては、来訪者の動線が明らかになれば以下のようなメリットが期待できる。
- 人気ルートや時間帯を把握し、スタッフ配置や物販・飲食の提供計画を効率化できる
- 周遊を促す組み合わせ(歴史×食、道の駅を結ぶルート等)の効果検証が可能になる
- データに基づいた観光資源の磨き上げや新たなイベント企画に活用できる
一方で、デジタル技術の導入に伴う現場での周知・操作支援は重要な課題だ。アプリ不要とはいえ、二次元コードの読み取りやLINE上での操作に不慣れな高齢者や観光地の巡回スタッフへの説明が必要になり得る。加えて、地域の観光関係者が蓄積されたデータをどう活用するか、分析結果を実際の施策に落とし込む体制づくりも不可欠だ。
技術提供企業の立場と今後の展開
技術提供元のSUSHI TOP MARKETINGは、自社のNFT配布技術(特許取得済)と行動データ解析のAIを強みに、企業や自治体への導入支援を進めている。今回の取り組みを通じて、同社は地域の周遊データ可視化や関係人口の創出を支援する事例を拡大したい考えだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施期間 | 2026年9月1日〜2027年1月11日 |
| 実施地域 | 島根県石見地域の9市町・約50スポット |
| 参加方法 | LINEと二次元コードでの参加(アプリ不要) |
| 前回参加者数 | 約1,200名(2026年1〜3月実施分) |
今回の導入は、デジタル技術を活用して地域の観光をどう持続可能な形に結び付けるかを問う試金石ともいえる。重要なのはデータ収集そのものではなく、得られた知見を地元の宿泊・飲食・交通事業者、自治体が共有し、具体的な改善や新サービスの創出に繋げることである。
観光連盟や受託者側は、石見地域の多様な資源—歴史、食、伝統芸能—を組み合わせた周遊プログラムで、地域内の回遊性向上や滞在時間延伸を図る意向だ。県内の観光事業者や自治体は、期間中の参加者動向を注視すると同時に、実務レベルでの運用支援や高齢者へのフォロー体制を整える必要がある。
地域にとっては、短期的な集客だけでなく、データに基づく継続的な関係人口の獲得と、観光を起点とした地域の持続可能な発展が求められる。今回の取り組みがどの程度まで具体的な成果につながるかは、データの活用方法と地域内の協働体制にかかっているといえる。
(村上 彩・プレスリリースジェーピー島根県担当記者)