住宅街で同居する2つの小さな店が生む影響
北茨城市磯原町の住宅地に、ドーナツを主力商品にするカフェ「緑栄」と古着店「KITAIBA BASE」が隣り合って営業している。両店は規模としては小規模ながら、商品やサービスの特色を生かして住民の交流拠点となりつつある。店主らは“まちのにぎわい”を目標に掲げ、地域に根ざした営業を続けている。
「緑栄」は店長の田中みどりさん(38)が運営。幼少期からの菓子好きを原点に、関東圏の飲食店で経験を積み、2023年に北茨城市で開業した。看板商品はオールドファッションタイプのドーナツで、国産小麦や良質なバター、地元産の卵を使うなど素材にこだわりを持つ。揚げ油は米油を用い、あっさりとした食感に仕上げているのが特徴だ。
店の外観や店内にも工夫があり、同市の名所である六角堂から着想を得て、ドーナツの穴や形を六角形にあしらったデザインを採用している。店内には飲食用の座席があり、コーヒーやハーブティーとともに揚げたてのドーナツを楽しめる。田中さんは、気軽に立ち寄れてゆったり過ごせる場にしたいと話す。
隣接する「KITAIBA BASE」は昨年12月に開店した古着店で、90〜2000年代のアメリカンカジュアルを中心に取り扱う。店主(40)は卸業者のもとへ自ら足を運び、一点ずつ選んだ商品を並べている。商品ラインアップに加え、昔懐かしい駄菓子も販売しており、学校帰りの学生が立ち寄る姿も見られるという。SNS発信にも力を入れ、インスタグラムのフォロワーは約1600人に達している。
「古着を見に来たお客さんが、ドーナツを買ってくれることもある。常連客も増えてきた。これからもリラックスできる空間を提供したい」
両店は単なる販売施設にとどまらず、地域の生活支援や交流の場としての役割も担っている。夏休み期間中、古着店は寺子屋形式の教室を実施しており、小学生を対象に宿題や学習支援を行っている。利用料は1日2000円で、田中さんのドーナツが振る舞われることもある。同企画は8月末までの実施で、子どもの居場所づくりに寄与している。
住民への具体的な影響と地域経済への波及
市街地から外れた住宅地で、飲食と小売が連携して来店客を呼び込む形は、地域商店街の縮小が進む中で注目される動きだ。実際に次のような影響が表れている。
- 地元産の食材を使うことで地域農産物の消費先が一つ増える。
- 学生や子育て世帯が気軽に立ち寄れる場ができ、日常の居場所づくりにつながる。
- ソーシャルメディア経由で県外からの来訪者もあり、観光的な波及効果が少しずつ生まれている。
地場の卵を使う点や、駄菓子の販売など子ども向けの要素があることから、家族連れにとって利用しやすい店舗構成になっている。店同士の“相乗効果”も実際に起きており、古着目当ての客がドーナツを購入するケースが確認されている。こうした小規模な商いが連鎖することは、地域内の消費循環を高める点でも意味がある。
継続性と今後の課題
一方で、不定休の営業形態や人手・運営資源の制約は継続的な運営における不安要素だ。開業間もない店舗の多くに共通する課題として、以下が挙げられる。
- 安定した集客の確保と固定顧客の定着。
- 営業時間や休業情報の周知徹底(SNSに依存する部分の補完)。
- 長期的な地域連携や自治体支援の有無。
両店は現在、インスタグラムを公式連絡手段として使用している(緑栄:@ryokuei、KITAIBA BASE:@kitaiba_base)。定期的な発信で来店誘導につなげているが、年配層などSNSを利用しない住民への周知方法も課題になり得る。
取材を通じて見えた地域の手応え
この周辺は観光地というより住宅地の色合いが強く、日常の買い物や憩いの場が限られていた。そうした背景で、生活に密着した商品・サービスを提供する店舗が生まれ、住民の生活圏内で交流の機会が増えていることは評価できる。店側も、地元食材の利用や子ども向け教室などを通じ、地域貢献を意識した運営を図っている。
地域住民が普段通りの生活圏内で集える場が増えることは、防災や福祉の観点からもプラスに働く。小規模事業者が互いに補完し合いながら地域に根付く取り組みは、北茨城市内のほかの地区でも参考になる点が多い。
| 店舗名 | 主な特徴 | 開始時期 |
|---|---|---|
| 緑栄 | オールドファッション系ドーナツ、地元卵使用、六角形モチーフ | 2023年開業(店長が北茨城市へ移住後) |
| KITAIBA BASE | 1990〜2000年代の古着中心、駄菓子販売、SNS発信(約1600人フォロワー) | 昨年12月開店 |
今後、両店が地域とどのように連携を深め、安定的な営業基盤を築いていくかが焦点となる。短期的には夏休みの寺子屋などの企画が家族層の来店を促す役割を果たすが、長期的には営業時間の安定化や地域内外への情報発信、多様な世代への周知が重要となる。
問い合わせや最新の営業情報は各店の公式インスタグラムで確認できる。生活圏での“居場所”づくりに注目が集まる中、こうした小さな拠点が地域の風景を変えていきそうだ。