市民参加で紙芝居を映像化、保存性と教育効果を狙う
水戸市内で朗読や読み聞かせ活動を行う一般社団法人オリーブ協会が、被爆体験を題材にした紙芝居のデジタル化に取り組んでいる。原作は茨城大学教育学部の紙芝居研究会が2010年代に制作した作品群で、制作・保存を巡る活動は2025年度から水戸市の市民協働事業「わくわくプロジェクト」に採択されて進められている。
協会代表理事の見沢淑恵さん(53)は、学生側から上演の継承を託されたことをきっかけに企画を発案。記録として残すだけでなく、制作過程に市内の小中学生らを参加させることで、若い世代の平和意識を育てる狙いを示している。2025年度は「茂木貞夫物語」のデジタル化を実施し、今年度は別作品のデジタル化に取り組んでいる。
- 原作の出自:茨城大学教育学部の紙芝居研究会が制作した作品
- 対象作品:被爆体験をまとめた「茂木貞夫物語」など、戦争をテーマにした3作品
- 市の支援:2025年度および2026年度に水戸市の市民協働事業に採択
2025年度の取り組みでは、小学生と中学生の応募者5人が8〜9月に数回集まり、ナレーションや音声・映像の加工作業に参加した。作業にはオリーブ協会のメンバーも「声優」として加わり、一部にアニメーションを取り込むなど映像化の工夫が施された。完成したDVDは市内の小中学校に配布されたという。
「茂木さんは小学生のときに被爆したので、自分に近い出来事ととらえた子が多かったようだ」と見沢さんは話す。
今年度は、広島で被爆した経歴を持つ栃木県在住の女性を描いた作品のデジタル化を子どもらと行っている。この記事の対象作品は、妊娠や出産といった女性の立場からの被爆体験を描いた内容である。
地域の教育現場への波及と住民への影響
完成作品が市内の小中学校に配布されていることは、授業や平和学習での活用が期待できる点で重要だ。紙芝居を映像化することで、以下のような効果が想定される。
- 視覚・聴覚情報を通じて学習効果が高まり、被爆の実相を子どもたちに分かりやすく伝えられる。
- 映像データとしての保存性が高まり、紙媒体の劣化や紛失に伴う記憶の断絶を防げる。
- 制作に参加した子どもたちが当事者の体験に感情移入し、より主体的な平和への関心を育む可能性がある。
一方で、被爆体験を扱う表現は、扱い方によっては被験者や遺族の感情に配慮を要する。今回の取り組みは、当該作品の上演継承を大学側から依頼されたことが発端である点や、被爆者の体験を尊重して映像化が進められている点が報じられている。
住民が知っておくべき実用情報
今回の取り組みで作成されたメディアは既に市内の小中学校に配布されているため、次の点を知っておくとよい。
- 学校の平和学習や授業で視聴される可能性があること。保護者は学級通信や学校からの案内を確認すること。
- デジタル化された教材は、将来的に図書館や地域の記録保存施設で公開される可能性があるが、公開範囲は制作団体や権利関係の取り決めによる。
- 子どもたちが制作に参加する形でのワークショップや見学会が行われる場合、参加条件や年齢制限、申し込み方法が設定されることがあるため、主催側の公表情報を確認すること。
オリーブ協会の活動は、地域に残る戦争の記憶を次世代につなぐ取り組みとして注目される。映像化により保存性を高める一方で、教材としての利用に当たっては被爆者の尊厳や歴史的事実の正確な伝達が求められる。市民協働事業としての採択は、行政面での評価を得たことを意味するが、今後の公開範囲や利用方針、権利処理などの詳細は協会と関係機関の判断に委ねられている。
被爆体験の継承は地域の歴史理解と平和教育の要である。映像教材として保存された作品が、学校現場や家庭でどのように活用され、若い世代の平和意識にどのように影響するかが今後の注目点だ。