紀南の梅、塩漬け後の天日干しが本格化
和歌山県紀南地方で特産の梅の天日干しが盛期を迎えている。収穫した梅を約1か月間タンクで塩漬けにしたうえで、木製やプラスチックの器具に並べて天日にさらし、実を乾燥させる作業が行われている。中間的な大きさの実では乾燥に4~5日を要することが多く、天候に応じて実の返し作業などが続く。
田辺市下三栖の梅農家、堀口敦司さん(53)は、木製の「ザラ」を用いてハウスの中で天日干し作業を進めている。今年は産地全体が不作で、堀口さん自身も例年の半分ほどの収穫量にとどまったという。堀口さんは梅干し向けに約20トンを漬けており、干し作業は9月中旬ごろまで続く見込みだ。
「不作で量は少ないが、自信のある梅干しができている。熱中症対策としても、ぜひ皆さんに食べていただきたい」
JAわかやまの紀南地域本部によると、紀南地域で栽培される梅のうち、約半分が梅干し加工に回される。今季の「南高」品種の生産量は約1万トンで、平年の約55%にあたると推計されている。この数字は、出荷時期や加工業者の原料確保に直結するため、加工業者や流通業者、消費者にとっても注目される指標だ。
天日干しの工程と現場の取り組み
一般的な工程は、収穫→塩漬け(約1か月)→天日干し→等級別選別→樽詰め、という流れになる。塩漬け後に天日干しすることで、塩分約20%の「白干し梅」ができる。生産者は出来上がった白干し梅を等階級ごとに分け、加工業者が買い取って減塩や調味を施し、市場向けの梅干し製品に加工する。
現場では、雨を避けるためハウス内での天日干しを活用する農家があるほか、実が均等に乾くよう小まめに実をひっくり返すなどの作業が行われている。猛暑の中での作業が続くため、農家は熱中症対策に努めつつ、品質を確保しようとしている。
地域経済と消費への影響
紀南の梅は地元産業の重要な一角を占める。生産量が平年の半分程度に落ち込んだことは、原料を買い取る加工業者や関連する流通、販売事業者の供給計画に影響を及ぼす可能性がある。特に梅干し加工に回る割合が大きい地域であるため、加工原料の不足は製品の出荷量や価格、加工業者の稼働に直結する。
消費者側では、地元の梅を通年で安定的に楽しむための供給調整や、減塩商品など加工業者による付加価値商品の展開が鍵になる。生産量の変動は価格に影響するため、外食や加工品メーカーも原料確保の見通しに注目している。
農家の作業と住民への注意点
現場での作業はこれから9月中旬ごろまで続く見込みで、特に午前中から昼間にかけての高温時に作業が集中する。地域住民や訪問者は以下の点に注意するとよい。
- 農道や作業場付近では農作業車両や資材の出入りが増えるため徐行や注意を。
- 天日干し期間は果実を扱う作業が多く、人手が必要な場合は地元の協力を求める場面もある。
- 猛暑対策として、作業者はこまめな水分・塩分補給や休憩を取っている。見学時も無理をしない。
地域の直売所や加工業者は、出荷原料の状況を踏まえた商品展開や販促計画を進める必要がある。特に夏場の天候変動は乾燥日数に影響するため、加工時期の調整や代替原料の検討も求められる。
| 項目 | 今季の数値 |
|---|---|
| 紀南地域「南高」生産量 | 約1万トン(平年の55%) |
| 堀口さんの梅干し向け漬け量 | 約20トン |
この時期の天日干しは、梅の風味や食感を左右する重要な工程だ。農家や加工業者は品質維持とともに、猛暑による作業負担の軽減策も同時に模索している。地元産の梅を長く楽しめるよう、消費者側も作付けや製造の状況に目を配りたい。
紀南地域の梅は生産・加工・流通が密接に結びつく地域資源であり、今回の生産減は地域全体の課題として受け止められている。今後、気候や栽培管理の面での対応、加工側の柔軟な商品戦略が求められる局面だ。
(取材・文:岡田 美穂)