背景と現状
和歌山県紀南地方で生産される梅が、3年連続で不作となっている。県のうめ研究所(みなべ町)とJAわかやま紀南地域本部がまとめたデータによると、主力品種「南高」の今年の生産見込みは1万269トンで、前年比77%、平年比55%と大幅な減少が見込まれている。青梅の市場販売量は品種合計で1216トンとなり、平成以降で最少の水準にある。
主要な原因 — 気候要因と栽培管理
研究所は不作の主因として、降水量の著しい減少と暖冬を挙げる。研究所の園地観測では、昨年6月下旬から今年1月下旬までの降水量が平年より約600ミリ(平年比56%)少ないことが確認された。収穫後から翌年の開花期にかけて干ばつが続くと、樹体に乾燥ストレスがかかり、翌季の花数や着果数が減ることがこれまでの試験で示されている。
また、12月中旬から1月中旬の平均気温は平年より1.6度高く、最高気温は2.8度高いという記録的な暖冬が続いた。その結果、開花は平年より約9日早まった。早咲きに伴い、めしべの発達が不十分な「不完全花」が増加し、主力品種「南高」では不完全花率が8%と高い値を示した。
研究所とJAの対応
県うめ研究所は、過去の暖冬による不作年(2020年)の解析結果を踏まえ、土づくりや施肥管理の重要性を強調している。研究所の試験では、施肥量を減らすと花数が減少する傾向が確認されており、基本的な窒素・堆肥の適正投入が一定の収穫確保につながるとしている。
具体的には以下の管理が対策として示されている。
- 適切な施肥管理と堆肥投入による土壌養分の維持
- 新梢の摘心(先端を切る処理)による花芽形成の促進
- 開花前後の適切なかん水による乾燥ストレスの軽減
- 受粉対策として、主力品種「南高」に隣接して授粉樹を植栽すること
「量を作る努力をしてほしい」
市場関係者からは供給減に対する懸念が出ており、市場販売量の減少に対して生産量の回復努力を求める声が上がっている。こうした要請を受け、JAわかやまはうめ研究所の分析を基に、農家向けに不作の要因と対策をまとめた資料を配布している。
地域への影響
紀南地域の梅は加工品(梅干し、梅加工品)や青梅出荷を通じて地域の農業収入に直結する。生産量が平年比で半分程度に落ち込めば、原料不足による加工業者の調達コスト増や商品の供給不安が生じる可能性がある。生産者側では収入の減少に伴う経営への影響、次年度以降の栽培継続に関する判断が求められる場面が増える。
今後の行動計画
紀州うめ研究協議会(梅農家、産地市町、県、JAなどで構成)は、対策研究会を開催し、現状の把握と対応策の周知を図る。報道にある通り、対策研究会はみなべ町と田辺市で27日、28日に予定されている(開催日時は資料配布元の案内に準ずる)。研究会では、現場で実践可能なかん水方法、施肥のタイミングや量、摘心の技術指導、授粉対策などが議題になる見込みだ。
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 南高 生産見込み | 1万269トン | 前年比77%、平年比55% |
| 青梅 市場販売量(合計) | 1216トン | 平成以降で最少 |
| 降水量差 | 約600ミリ減 | 平年比56% |
| 開花時期 | 平年より約9日早い | 暖冬の影響 |
| 不完全花率(南高) | 8% | めしべの発達不足 |
生産者と消費者への実用的アドバイス
農家にとって直近で取り組みやすい点は、土壌の有機物量を高めるための堆肥施用と、収穫後から翌年の開花期にかけた乾燥期間のかん水計画の見直しである。特に平年より降水が少ない場合は、土壌水分を維持することが花芽形成に直結する。授粉不足が懸念される農園では、受粉樹の配置や人工授粉の検討も重要となる。
消費者側では、加工品の原料不足や価格変動の可能性を念頭に入れる必要がある。地元産の梅を選ぶ際は、生産者の取り組みや出荷時期の情報に注意するとよいだろう。また、今後の天候次第では次年度以降も影響が続く可能性があるため、JAや地元直売所の情報発信を注視してほしい。
まとめ
和歌山県紀南の梅不作は、気候変動を背景とした降水不足と暖冬の複合要因によるもので、地域の農業収支や市場供給に実際の影響を与える深刻な事象である。県うめ研究所とJAは既に調査と資料配布、研修会の開催を通じて対策を進めている。現場での適切な施肥、かん水、摘心、授粉対策が当面の実効的な対応策となるため、関係機関と生産者が協力して取り組むことが求められる。