2026年産、増産で在庫・価格の行方に懸念
農林水産省がまとめた6月末時点の作付意向調査で、2026年産の主食用米について、茨城県内の44市町村の約8割が「増産」を見込んでいることが分かった。県全体の作付面積は、25年産から1,800ヘクタール拡大し、約6万8,500ヘクタールになる見通しで、4月末時点からさらに700ヘクタール増えたという。
増産の背景には、24〜25年に起きた「令和の米騒動」による品薄と価格高騰の記憶が残り、前年の高値を踏まえて種もみの予約が行われたことが影響していると県内の関係機関は分析している。一方で、今年に入って在庫の滞留が進み、価格が下落傾向にあるため、県やJAなどは価格下落を抑えるための対応が急務だと指摘している。
用途別の作付状況と影響
調査では用途別に面積が示され、加工用米や米粉用米はおおむね前年並みの水準だが、輸出用の増加が目立つ。具体的には、加工用米が1,100ヘクタール、米粉用が100ヘクタールで前年並み、輸出用米は1,000ヘクタールで前年より100ヘクタールの増加とされた。
| 用途 | 作付面積(ヘクタール) |
|---|---|
| 主食用米(県合計見込み) | 68,500 |
| 加工用米 | 1,100 |
| 米粉用 | 100 |
| 輸出用 | 1,000 |
| 飼料用米 | 2,300 |
飼料用米は大幅に減少する見込みで、2,300ヘクタールと、過去最大だった2022年度と比べて「5分の1以下」に落ち込む予測だ。調査では城里町を除く43市町村が飼料用米の減少傾向を示している。
なぜ飼料用米は減るのか
飼料用米の作付けをためらう主な理由として、交付金の構造が挙げられている。多収品種の国の交付金は標準で10アール当たり8万円だが、主食用米を飼料用に回した場合は同6.5万円にとどまる。交付金額の差が、飼料用米への転換を抑制していると関係者は説明する。つまり、農家の収益性の観点から、主食用や加工用などへ作付けを維持する選択が優先されやすい。
- 作付面積が増えると在庫が増加しやすく、価格下落のリスクが高まる。
- 加工用・輸出用への転換を進めても面積には限界がある。
- 交付金体系が生産選択に影響を与えている。
「在庫が増え一層の価格低下が懸念される。経営の一部分でも転換を促せるよう呼びかけたい」と担当者は話した。
地域農家の視点と経営への影響
笠間市のある農家は、複数品目を手がけることでリスク分散を図っているが、主食用米の価格がさらに下落することを警戒していると語った。米価の低迷は、直接的には米作りを主とする農家の収入を圧迫する。茨城は関東有数の米生産地であり、米価の下落は地域経済や関連産業、農機具販売、資材流通にも波及する可能性がある。
加えて、若手農業者の営農継続や次世代への継承の判断にも影を落とす。生産調整が速やかに進まなければ、価格の下押し圧力が続き、経営の脆弱な農家から離農が進むリスクも否めない。
県・JAの対応と実務的なポイント
県やJAで構成する県農業再生協議会は、昨冬ごろから需要に応じた生産への転換を農家に呼びかけてきた。だが、作付け計画の変更期限が今年は8月20日までに延期されたこともあり、現場での調整は依然として難航している。
住民や消費者にとって役立つ実務的な情報は以下の通りだ。
- 契約栽培や加工業者、地場の直売所との連携が強化されれば、価格安定に寄与する可能性がある。
- 輸出促進は需要の一助となるが、輸送や品質管理などの実務コストも勘案する必要がある。
- 行政の交付金制度や補助の内容を踏まえたうえで、どの用途に振り向けるかを判断することが重要だ。
見通しと留意点
今回の数値は6月末時点の意向調査に基づく推計値であり、最終的な作付面積は今後の天候や市場動向、政策対応によって変動する余地がある。だが現時点で増産傾向がはっきりしている以上、県内の関係者は需給バランスの悪化がもたらす価格低下にいかに対処するかが、当面の喫緊課題である。
消費者にとっては、地元産米の安定供給と価格の適正化が望まれる。生産者にとっては、販売先の多様化やコスト抑制、補助金制度の理解と活用が経営安定の鍵となる。今後、県とJA、加工業者らがどのような具体策を打ち出すかを注視したい。