茨城県がまとめた2025年度の新設住宅着工戸数は、前年実績を下回り、1万4180戸となった。記録の残る1985年度以降で最少を更新し、初めて1万5000戸を割り込んだ。主な要因として、資材・建築費の上昇や住宅ローン金利の上昇に加え、前年度の駆け込み需要の反動が挙げられている。
内訳と地域差
住宅の種類別では、注文住宅などの持ち家が6473戸(前年比-10.7%)、賃貸の貸家が4450戸(-14.0%)、社宅・官舎などの給与住宅が64戸(-40.2%)といずれも減少した。一方で分譲住宅は3193戸(+28.0%)と増加し、全体の下支えになった。
地区別にみると、県南だけが増加し、他地域は減少した。主な数値は以下の通りで、つくば市など一部地域の分譲需要が全体を支えた形だ。
- 県南:6014戸(+2.9%)
- 県央:3505戸(-7.4%)
- 県西:1642戸(-11.2%)
- 県北:973戸(-0.4%)
- 鹿行:813戸(-38.5%)
制度変更と月別推移が示す動き
2025年4月に新築住宅の省エネ基準適合が原則義務化されたことが、着工統計に顕著な影響を与えた。制度施行前の24年度末には建築確認が急増したが、義務化後は需要が落ち着き、特に5月と6月に反動が大きく出た。具体的には、駆け込みの反動で5月着工が前年同期比で大幅に落ち込み、その後も回復傾向が見られない。
| 分類 | 戸数 | 前年との差 |
|---|---|---|
| 総数 | 1万4180戸 | -5.6% |
| 持ち家 | 6473戸 | -10.7% |
| 貸家 | 4450戸 | -14.0% |
| 分譲住宅 | 3193戸 | +28.0% |
現場の声と業界の懸念
住宅メーカーや資材供給の現場では、国際的な需給変動がコストと納期に影響を及ぼしているという指摘がある。ある地元企業は、原料不足に伴う部材調達の遅延や価格上昇を報告しており、業界全体にとって重荷になっていると述べている。
「業界全体で(資材調達は)非常に厳しい局面。」
また、長期的な人口減少と高齢化が需要縮小の背景にあるとの見方もある。民間シンクタンクの調査担当者は、金利や建築単価の上昇が家づくりの意欲を削いでいると述べ、都心近接だが生活環境に恵まれる地域では分譲マンションの人気が根強い点を指摘している。
住民への影響と注意点
今回の着工減少は、住宅購入や建築を検討している世帯にとっては供給環境や価格の見通しに影響を与える。住宅ローンの金利が高止まりする状況では、購入時期の判断や予算設定が難しくなる可能性がある。また、工期の遅れや資材入手の不確実性は契約内容やスケジュールに直結するため、契約前に納期・材料・追加費用に関する確認を徹底することが重要だ。
- 建築を予定する世帯は、複数の見積もりと素材の代替案を確認する。
- 施工会社へ納期と追加費用の想定を文書で求める。
- 分譲物件を検討する場合は、地域ごとの供給動向と価格推移を比較する。
県内の住宅市場は部材の国際価格や金融政策の影響を受けやすく、短期的な回復は見通しにくい。今後、自治体の住宅支援策や企業の調達改善、消費者の判断が市場の動きを左右する。市町村単位での需要の違いが明確になった今回の統計は、地域別の施策設計や住宅関連産業の対応を促す材料になる。
(茨城県担当記者・中村 智子)