熊本地震の発生から3カ月となるのを前に、静岡理工科大建築・都市デザイン学部の中沢博志教授らが現地調査の報告をまとめた。調査では、地震を起こした断層に近い地域で被害が帯状に広がる状況が確認され、道路や家屋だけでなく、地下に埋設された管路などにも損傷が見られた。報告は、静岡県で活断層による直下型地震が起きた場合の被害を考える上でも、具体的な課題を示している。
断層周辺に損傷が集中
調査は8月下旬、防災科学技術研究所などと合同で実施された。対象となったのは熊本県の益城町、八代市、宇城市などで、中沢教授によると、日奈久断層帯に沿う範囲で構造物の損傷が目立ったという。断層が地表に現れた場所では、道路に亀裂が入ったほか、路面に数十センチから1メートルを超える段差が生じ、断層の直上に建つ住宅が傾いたり、壊れたりする状況も確認された。
今回の報告が示すのは、地震の揺れが地域全体に一様な被害をもたらすだけではなく、断層の位置や地盤の変位に沿って、被害が連続的に現れる可能性だ。建物の倒壊や損壊に加え、道路の段差や亀裂は通行を妨げ、復旧や救援活動にも影響する。地表の変化が大きい地点では、住宅や道路など地上の施設だけでなく、地中のインフラにも同時に問題が生じる恐れがある。
静岡県内にも活断層
静岡県では、静岡市、富士市、富士宮市の3市にまたがる富士川河口断層帯が知られている。報告では、県内でこのような活断層による地震が発生した場合、熊本で確認されたものと同じように、断層周辺で建物や道路などの被害が集中する可能性があるとされる。今回の調査結果は熊本県の事例に基づくもので、静岡県内で同じ規模や形の被害が起きると断定したものではないが、断層の位置を踏まえた備えの必要性を浮かび上がらせている。
| 確認された事項 | 静岡県との関係 |
|---|---|
| 断層に沿った建物被害 | 富士川河口断層帯周辺の直下型地震で同様の被害が懸念される |
| 道路の亀裂や大きな段差 | 通行や救援、復旧に影響する可能性がある |
| 埋設管路などの損傷 | 排水設備を含むインフラの機能低下につながる恐れがある |
地下インフラの損傷にも警戒
現地では、埋設管路などのインフラ被害も確認された。地震によって水道や排水に関わる設備が傷つけば、建物の被害が比較的小さい地域でも生活機能が制限される。特に排水設備が損なわれた場合、豪雨が重なった際に水を排出しにくくなり、浸水などのリスクが高まることが懸念される。熊本地震の調査は、地震被害を建物の倒壊だけで捉えず、道路、管路、排水といった地域の基盤を一体で考える必要性を示した。
県内の住民にとって、今回の報告は自宅の耐震性を確認するだけでなく、日常的に利用する道路や周辺のインフラが被災した場合の影響を考える材料になる。とりわけ、静岡市、富士市、富士宮市では、断層帯との位置関係を意識し、自治体が公表する防災情報や地震の被害想定を確認することが重要になる。断層の直上にあるかどうかだけで被害のすべてが決まるわけではないが、断層の位置と自宅、通勤・通学先、避難先の関係を把握しておくことは、発生直後の行動を考える基礎となる。
地域の備えを見直す契機に
今回の調査報告から読み取れる、地域で確認しておきたい点は次の通りだ。
- 自宅や勤務先が活断層周辺のどこに位置するかを、防災資料で確認する
- 道路の寸断や段差を想定し、避難先までの経路を複数把握する
- 地震後の断水や排水設備の機能低下を想定し、生活への影響を家族で話し合う
熊本での現地調査は、地震の直後に表れる被害の形を記録し、静岡県の防災を考える上で比較できる事例を提供した。中沢教授らが確認した断層沿いの被害集中や埋設管路の損傷は、建物の耐震化に加えて、道路と上下水道などのインフラをどう守り、被災後にどう復旧するかという課題を示している。静岡県内で同様の地震が起きる可能性を踏まえ、自治体、インフラ管理者、住民がそれぞれの立場で備えを点検することが求められる。