語り部の減少を受け、地域で新たな担い手
岡山県原爆被爆者会倉敷支部(倉敷被爆者会)は、被爆者本人に代わって体験や核廃絶への願いを語る伝承者の養成に乗り出す。初回講座は11月1日午後1時から倉敷南公民館(倉敷市沖新町)で開く。被爆者の高齢化と会員減少が進む中、これまで語り部が担ってきた証言を次の世代につなぐ仕組みを、倉敷独自の短期講座として整える。
岡山県によると、今年3月末時点で県内の被爆者健康手帳所持者は764人で、前年から70人減った。平均年齢は87・67歳。県原爆被爆者会では2009年度以降、会員の減少を背景に高梁、東備、新見など9支部が解散し、現在残る7支部の会員も計287人となっている。2年間で約50人減少しており、証言活動を支える組織そのものの縮小が続いている。
倉敷被爆者会も、約15年前には130人いた会員が現在は44人となった。2021年からは毎月、市民向けの被爆体験講話会を開き、小中学校などからの派遣依頼にも応じているが、語り部として活動できる人は6人。最高齢は98歳で、今後も同じ形で証言活動を続けられるかが課題になっている。世羅憲司会長は、対策を講じなければ近い将来、核廃絶のメッセージを発信できなくなるとの危機感を示している。
被爆者なき時代にも、思いをつないでいける仕組みづくりが急務だ
伝承者の養成は広島、長崎両市が公式事業として進めている。一方、一定の期間を要するため、仕事などとの両立を理由に現地での受講を断念する人もいるとみられる。倉敷被爆者会は、そうした市民も学びやすい場を地域につくる必要があると判断した。福岡県などの被爆者組織が独自に講座を開いていることも取り組みの参考にした。
8回の講座で聞き取りから発表まで
講座は11月から来春にかけて月2回、計8回開く短期集中型。全課程を終えた受講者を伝承者として認定する。講師は、被爆2世で広島市の養成講座1期生でもある水野隆則さん。これまで、亡くなった母親を含む被爆者の体験を200回近く語ってきた。広島市の養成事業で使われた資料も、特別な許可を得て講座で活用する。
受講者はまず倉敷被爆者会の語り部の話を聞き、その後、どの被爆者の証言を受け継ぐかを決める。本人からの聞き取りなどを通じて内容を整理し、水野さんの助言を受けながら原稿を作成する。事実を正確に伝えるだけでなく、聞き手に届く話し方も学ぶ計画だ。被爆者が経験した出来事を一律に扱うのではなく、一人ひとりの体験を軸に伝える点が講座の特徴となる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初回 | 11月1日午後1時 |
| 会場 | 倉敷南公民館(倉敷市沖新町) |
| 開催期間 | 11月から来春まで、月2回・全8回 |
| 対象 | 年齢制限なし |
| 費用 | 被爆の実相を学ぶ図録代1700円 |
初回には、伝承者になるかどうかをまだ決めていない人を含め、約20人が参加を希望している。年齢制限はなく、当日の参加も受け付ける。受講を考える市民は、被爆体験を学びたいという段階から参加できる。問い合わせは世羅会長(090・4692・4346)まで。
学校や市民活動への広がりに期待
倉敷被爆者会は、講座で育った伝承者が将来、市民向け講話や学校での学習などを担うことを見込む。現時点で派遣の具体的な枠組みや活動開始時期は示されていないが、これまで会が続けてきた講話や学校への協力を支える新たな人材となる可能性がある。証言を聞く側にとっても、被爆者本人から直接話を聞ける機会が限られる中、体験を学ぶ接点を地域に残す意義は大きい。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受けてから2年となる節目でもあり、世羅会長は若い世代にも挑戦を呼び掛けている。被爆から長い年月がたち、証言者の減少は倉敷だけに限らない。今回の取り組みは、被爆者の記憶を保存するだけでなく、聞き取り、整理し、他者へ伝える責任を地域で分かち合えるかを問う試みとなる。
- 初回講座は11月1日午後1時、倉敷南公民館で開催
- 年齢制限はなく、伝承者になるか未定の人も参加可能
- 全8回の修了者を伝承者として認定する計画