増加の実態と特徴
岐阜県内で太陽光発電所などの金属ケーブルが切断され盗まれる被害が相次いでいる。今年(令和8年)6月末時点の認知件数は99件で、前年同期と比べて63件増となり、既に昨年1年間の件数を上回っている。前年は98件、一昨年(2024年)は63件、2023年は16件で、ここ数年の増加傾向が続いている。
県内全体の金属盗(統計上の集計対象を含む)についても、2024年が337件、2025年が338件と高い水準にある。ただし、警察庁の全国統計では2025年は減少しており、岐阜県は全国の傾向と異なって増加が続いている点が懸念される。
なぜ狙われるのか──背景要因
- 金属価格の高騰:銅線など純度の高い銅が使われており、高額で取引される点が犯行の動機となっている。
- 設置場所の特性:岐阜県内には山間部など人目につきにくい場所に太陽光発電施設が多く、監視が行き届きにくい。
- 犯行グループの活動範囲の変化:捜査関係者は犯行場所を関東から県近郊に移した可能性を指摘している。
被害の実害と二次被害
岐阜県警捜査3課の関係者は、施設でケーブルが切断されると電力の送電が停止し、修繕費が多額になるため被害総額が億単位に達する場合があると指摘する。さらに、窃盗被害に遭った事業所では保険加入の条件が厳しくなるケースもあるため、長期的な事業運営に影響が及ぶ。
| 年 | 県内の太陽光発電施設での金属ケーブル窃盗 認知件数 |
|---|---|
| 2023年 | 16件 |
| 2024年 | 63件 |
| 2025年 | 98件 |
| 2026年(6月末時点) | 99件 |
実例と対策動向
具体例として、岐阜市芋島の電気工事業関連会社「MirateX」は自社管理の施設で被害に遭ったが、あらかじめケーブルに取り付けていた資産管理用タグが手がかりとなり、岐阜市の電気工事関係会社員の男(55)が逮捕された。タグによりケーブルの位置情報が把握でき、犯行の追跡に寄与したという。
県警は以下のような対応を強化している。
- 定期的な見回りの強化
- 金属買い取り業者への出所不明金属の買い取り自粛の要請
- 地域住民への不審車両等の通報呼びかけ
「見慣れない不審な車両を見かけたら通報してほしい」──岐阜県警捜査3課・石原庸祐次席
地域事業者と住民が取りうる具体的な対策
被害の実態を踏まえると、自治体・事業者・住民が連携した対策が不可欠だ。現場で実行可能な対策例を挙げる。
- 資産管理用のタグやGPSを用いた機器の導入:MirateXのようにケーブルの追跡が可能な仕組みは犯行抑止と検挙に有効である。
- 照明や防犯カメラの設置:人目が届きにくい山間部の施設では、常時の監視や録画による証拠確保が重要となる。
- 近隣住民との連携:定期的に情報を共有し、不審状況を早期に発見・通報する体制の整備。
- 金属買取事業者への監督強化:出所不明の金属を受け取らない指導と、本人確認の徹底を要請すること。
- 保険の見直しとリスク分散:保険加入条件が厳しくなる前提で、リスク軽減のための投資を検討する必要がある。
住民への影響と行動の呼びかけ
今回の事案は単に事業者の損失にとどまらず、送電の停止による周辺地域への影響や生活インフラへの波及が懸念される。特に山間部や発電所周辺に住む住民や通勤・通学でその付近を通る人は、不審な車両や夜間の作業音などを見聞きした際は速やかに110番または最寄りの交番・県警に通報してほしい。
事業者は資産管理の記録を整備し、被害発生時には証拠の保存と速やかな警察への連絡を徹底することが重要だ。また、自治体や関係団体は金属買取業者や物流業者と連携し、出所不明の金属の流通経路を遮断する取り組みを強める必要がある。
岐阜県警は現在も警戒を強め、検挙に向けた捜査を続けている。地域の防犯意識と具体的な予防策が被害軽減の鍵を握るため、関係者は早急な対策と情報共有を進めることが求められる。
(山崎 大輔)