富山の空き家を賃貸に転換、地域連携で事業化
富山市を拠点とする株式会社日本海ラボと東京都の株式会社ヤモリが共同出資し、富山県内の空き家を取得・改修して賃貸住宅として運用する新会社「富山空き家再生賃貸株式会社」が設立された。設立の狙いは、増加する空き家を地域に必要な賃貸ストックへと変え、地元の中小事業者や金融機関と連携した地域循環型のモデルを構築することにある。
会社側は、既に2026年7月以降に戸建住宅を3戸取得しており、リフォーム後に賃貸募集を開始するとしている。事業の本格展開では地域の不動産業者やリフォーム会社、金融機関と協働し、年間10戸以上の取得を目指す計画だ。
"富山県内の空き家を取得・再生し、賃貸住宅として長期的に運用することを目的とする"
背景には富山県における空き家の増加がある。令和5年の住宅・土地統計調査によれば、県内の空き家は69,700戸、空き家率は14.7%と全国平均(13.8%)を上回る水準にある。こうした既存住宅ストックの活用は、空き家対策および住宅供給の観点から急務となっている。
事業の進め方と強み
新会社は賃貸需要の見込めるエリアの空き家を対象に、現地調査や周辺の入居見込み、改修費用と収支見込みを総合判断して取得を進める。取得後は必要なリフォームを実施し、入居者に提供する。運営面ではヤモリが持つ賃貸事業のノウハウとAIプラットフォームを活用し、取得から改修、入居付け、管理までの効率化を図る。
また、日本海ガス絆ホールディングスグループと連携する点も特徴だ。ガス事業や関連工事の受注につながることで地域内の複数事業者に経済的な効果が期待される。事業スキームとしては、物件取得→改修→賃貸運営に加え、地域金融機関の融資やリフォーム受注、ガス契約といった複合的な収益構造を念頭に置いている。
地域にもたらす影響と住民への意義
この取り組みが実現すれば、次のような地域への効果が見込まれる。
- 空き家の適正な管理による景観・防災面での改善
- 低廉で質の高い賃貸住宅の供給により若年層や転入者の受け皿が増加
- リフォームや管理、ガス契約など地元事業者の受注機会創出
特に地方部では戸建てを求めるファミリー層やペット可物件を探す世帯、企業の社宅需要など多様なニーズが存在する。新会社はこうした地域特性を考慮した物件選定を進めるとしており、賃料の抑制を図りながら住環境の質を担保することを目指す。
留意点と課題
一方で、取得対象の選定や改修費用のバランス、長期運用に伴う維持管理コストなど課題も残る。新会社側は建物の躯体や地盤、周辺環境に問題がないかを現地調査で確認するとしているが、特に地方に多い築年数の古い物件では想定外の改修費用が発生する可能性がある。
また、低廉な賃料を実現しつつ投資回収を図るには、効率的な運営と地元需要の確保が不可欠だ。地域金融機関との連携や、自治体による補助制度の活用も重要なポイントとなる。
数字で見る現状
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 富山県内の空き家数(2023年) | 69,700戸 |
| 空き家率(2023年) | 14.7% |
| 新会社の当面の取得目標 | 年間10戸以上 |
| 既に取得済みの戸数(2026年7月以降) | 3戸 |
入居希望者や空き家所有者への実用情報
入居を検討する住民は、募集開始時に物件の改修内容、賃料、契約条件(ペット可否や駐車場の有無)を確認することが重要だ。空き家所有者は、譲渡や賃貸に関する相談窓口を活用することで相続や管理負担の軽減を図れる可能性がある。具体的な募集情報や問い合わせ窓口は、今後新会社や地域の不動産業者を通じて案内される見込みだ。
富山県としても既存ストックの有効活用は政策課題であり、今回の民間主導の取り組みが自治体の空き家対策や地域づくりにどう寄与するかが注目される。住宅需要の実態に合わせた物件供給と、改修・維持を担う地元事業者の受注機会創出が両立されれば、地域経済や生活環境の改善につながる可能性がある。
(取材・文/井上 麻衣 プレスリリースジェーピー富山県担当記者)