県が発表、愛称に岐阜の地名を採用
富山県は2026年7月8日、富山空港(富山市)の愛称を従来の「富山きときと空港」から「富山高山すし空港」に改めると発表した。新田八朗知事が定例記者会見で明らかにしたもので、県は愛称に岐阜県高山市の地名を取り入れ、合わせて「すし」という語を使うことで国内外での分かりやすさと訴求力を高める狙いを示している。
背景—利用者減少と運営の転換点
県は今回の変更を、空港を取り巻く環境変化と空港運営の見直しに応じた施策の一環と位置付けている。県が示したデータによれば、令和7年度(2025年度)の利用者数は37万9306人で、前年度比で減少に転じ、平成24年度(2012年度)の94万4559人と比べると約60%の減少となる。こうした利用低迷の打開が喫緊の課題となっていることが、愛称変更の直接的な背景だと県は説明している。
また、今年4月からは混合型コンセッション方式の導入により民間事業者が参画して空港運営が始まっており、県は官民連携によるブランディング強化や国際定期便の再開、訪日客(インバウンド)誘致に取り組むとしている。愛称変更はそのブランディング施策の一つと位置づけられる。
「高山」と「すし」を選んだ理由
県は「すし」を採用した理由について、世界的に認知されやすく、直感的に分かりやすい語であることを挙げる。富山の海産物や食文化を短く分かりやすく伝えることで、観光誘客に結び付けたい考えだ。一方「高山」については、岐阜県飛騨高山地域の外国人宿泊者数が多い点に着目したという。県内の外国人宿泊者数は令和7年度で約38万7000人にとどまる一方、飛騨高山を含む周辺地域の知名度の差を空港名に反映させることで、広域観光の玄関口としての役割をより明確に示したいという狙いがある。
「富山空港に『高山』という名前が付くことになると、飛騨高山方面の入口があることを世界に発信することになる」
この発言は岐阜県の江崎禎英知事のコメントとして伝えられており、高山市長側も富山空港を活用したインバウンド誘致に前向きな姿勢を示している。
住民・利用者への影響と課題
愛称の変更は観光プロモーション上の効果が期待される一方で、地域間の帰属意識や他県地名採用への反発、看板や案内表示の差し替え、広報費用など現実的なコストが伴う。空港利用者や住民にとっては、次の点が具体的な影響として想定される。
- 案内表示・広告物の差し替えに伴う一時的な混乱と費用負担
- 路線検索や航空券販売サイトに表示される表記の変更による利便性への影響(英語表記も変更)
- 広域観光ルートの認知向上による宿泊誘致や周辺経済への波及
県は民間事業者と連携し、改名に伴う周知や国際プロモーションを進めるとしているが、具体的なスケジュールや費用負担の詳細はこれから詰める段階だ。
データでみる利用状況
| 年度 | 利用者数(人) |
|---|---|
| 平成24年度(2012) | 944,559 |
| 令和7年度(2025) | 379,306 |
上の表は、県が示した過去と最近の利用者数の比較を簡潔に示したものだ。短期間での大幅な減少は、路線網の縮小や旅行需要の変化、近隣空港との競合など複合要因が絡むとみられる。
今後の注目点
今回の愛称変更は、単なるネーミングの変更を超えて、空港の立て直しや広域観光の戦略を反映する試金石となる。今後注視すべき点は主に次の三つだ。
- 改名による国内外の認知度・検索流入の変化(プロモーション効果)
- 民間事業者参画後の路線拡大や国際便再開に向けた具体策の進捗
- 費用負担や地域間調整の透明性、住民説明の実施状況
県は空港が地域経済に果たす役割を強調しており、今回の施策が利用者回復につながるかどうかは、民間の知見を取り入れた運営と広域連携の実行力にかかっている。今後、県や運営事業者が示すロードマップと成果を追って報じていく必要がある。
富山市を拠点に、空港利用者の利便性向上と周辺観光地との連携がどのように進むかは、地元経済にも直結する。住民や事業者にとっては、改名に伴う実務対応や情報提供を確実に行うことが求められる。