善通寺市が香川県知事選の一部投票区で電子投票を実施
香川県善通寺市は、8月30日に執行される県知事選のうち市内の指定投票区で、京セラ株式会社が提供する電子投開票システム「デジ選®」を採用すると発表した。都道府県の選挙で電子投票が用いられるのは、2002年の岡山県での事例以来で、市内導入は県内外の選挙運営にとって注目される試みとなる。
「都道府県の選挙で電子投票が実施されるのは、2002年10月の岡山県知事選挙以来、24年ぶりとなります。」
導入の背景には、開票作業にかかる人的負担の増加や労働費用の上昇、地域の高齢化に伴う人手不足など、自治体が直面する運営上の課題がある。デジ選はタブレット端末上での投票操作を基本とし、投票データをデジタル記録する方式を採用しているため、投票締切後の集計を迅速化し、判読不能による無効票の発生を抑える効果が期待される。
システムは総務省の技術要件に適合しており、インターネット経由での送信を行わない仕組みを採用している点がセキュリティ面の特徴だ。データは所定の記録媒体に直接保存され、外部通信の影響を受けにくくすることで、通信障害やリスクの低減を図っていると京セラ側は説明している。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 導入システム | 京セラ「デジ選®」 |
| 対象選挙 | 香川県知事選の善通寺市内一部投票区 |
| 投開票日 | 2026年8月30日(日) |
これまでデジ選は、2024年12月に大阪府四條畷市の市長選・市議補選、2026年3月には宮崎県新富町の町議補選で導入され、開票に係る人員や時間の削減実績があるとされる。善通寺市は今回の導入に際して、住民と職員の理解を深めるための啓発活動を既に実施している。
- 商業施設や公民館での体験コーナー設置と利用者アンケート(6月17日~7月15日)
- 市庁舎でのデモ機常設による操作確認
- 善通寺市公式ホームページでの情報提供
地方自治法上、電子投票の実施は各自治体の条例で定めることが前提となる。善通寺市は2026年3月に市議会議員と市長選を対象とする条例を制定しており、これを受けて香川県も同年7月、一定の市町の区域内に限定して県議会議員と知事選挙での電子投票を可能とする条例を定めた。現時点で、都道府県レベルで同様の条例が存続しているのは香川県のみという点が、今回の導入を全国的にも特異な事例にしている。
住民への影響は複合的だ。開票の迅速化は当日の集計に関わる職員や開票立会人の負担を軽減するが、一方で電子機器の操作に不慣れな有権者や、システムの信頼性を慎重に評価する声も想定される。善通寺市は高齢者を含む住民向けに体験機会を提供し、操作方法の周知に努めることで投票当日の混乱を避けたい考えだ。
また、投票の透明性と安全性をどう担保するかが引き続き課題となる。紙の記録に比べて電子的記録は改ざんやトラブルの懸念が指摘されることがあるが、導入側は物理的に通信を遮断する保存方式や現場での運用手順の厳格化によりリスク低減を図るとしている。選挙管理委員会や自治体は、有権者への説明責任を果たすため、当日の運用体制や異常時の対応フローを明示する必要がある。
善通寺市での今回の試行結果は、県内外の自治体が抱える選挙運営の効率化策として注目される。自治体の人員確保が難しくなる中、電子投票の導入が今後どの程度、運営の安定化やコスト抑制に寄与するかは、実務面でのデータが示されて初めて評価できる。住民側は、便利さと安全性の両面を求めるため、導入後の説明会や公開検証の有無が信頼感を左右するだろう。
投票日までの期間、善通寺市は引き続き体験機会を提供するとともに、当日の投票所での運用や監査手順を周知する予定だ。関係者は、トラブル発生時の代替措置や紙による確認手段の扱いについても明示する必要がある。県内外の他自治体にとっても、善通寺市の取り組みは電子化導入を検討する際の参考となる見通しだ。
(取材・文=藤井 一郎)