若者主導で観光を再定義する試み
山口県内の高校生や大学生が主体となり、地域の観光事業者や行政、DMOと協働して観光コンテンツや商品を造成する取り組みが進んでいる。昨年12月に行われた成果発表フォーラム「#ふくの国イノベーション」では、県内5校の高校生を中心に複数の若者が各エリアの魅力を若者目線で掘り起こし、プレゼンテーションを行った。県は2025年に外国人観光客の過去最高を記録しており、本年10月に始まる大型観光キャンペーンを見据えたプレイベントとしても注目される。
この取り組みは山口県観光連盟が主導し、若者の発想力とデジタル活用力を地域振興の起爆剤として期待している。参加校は防府商工高等学校、宇部鴻城高等学校、萩光塩学院高等学校、周南公立大学などで、地域事業者や観光の専門家がメンターとして企画の実装に向けた指導を行う。
概念としての「メタ観光」と狙い
本プロジェクトで採用される「メタ観光」は、従来の観光誘致の考え方を拡張し、デジタル上の多層的な地図(メタ観光マップ)により地域の多様な魅力を可視化する考え方だ。特定の人気スポットに大量の来訪者を集中させるのではなく、分散して複数の魅力点に訪問者を誘導することで、地域全体の賑わいをつくるのが狙いである。
「100万人の観光客を1ヶ所に集めることよりも、1万人の観光客を100ヶ所つくる」というコンセプト
メタ観光は単なる集客手法ではなく、地域資源の再発見、住民参加による地域の誇り(シビックプライド)の醸成、若年層の観光人材育成といった副次効果を見込める点が特徴だ。デジタル化により観光情報を多層で発信することで、ニッチな関心を持つ訪問者にもアプローチできる。
具体的な取り組みと今後のスケジュール
学生たちはまず各自の「わたしの名所」を登録する形でメタ観光マップを作成し、セミナーやワークショップを通じて企画を練り上げる。専門家との街歩きやディスカッションを経て、地域事業者と連携した試験的な観光商品化、コンテンツ造成へつなげる予定だ。
- キックオフイベント(令和8年8月2日、山口県教育会館)で業界講演とディスカッションを実施
- セミナー&フィールドワーク(令和8年11月1日、宇部市内予定)で企画のブラッシュアップ
- 成果発表フォーラム(令和9年2月予定、山口市内予定)で最終プレゼンテーションを実施
| 日付(予定) | 内容 | 会場 |
|---|---|---|
| 令和8年8月2日 | キックオフイベント(講演・ワークショップ) | 山口県教育会館 |
| 令和8年11月1日 | セミナー&フィールドワーク | 宇部市内(予定) |
| 令和9年2月 | 成果発表フォーラム | 山口市内(予定) |
地域にもたらす影響と留意点
若者による企画は地域側にとって新鮮な視点とデジタル技術の活用をもたらす一方、実装段階では以下の点に留意が必要だ。
- 観光事業者側の受け皿整備:学生企画を商品化するための運営ノウハウとリソースの確保
- 住民合意と受け入れ体制:分散型誘客が地域生活に与える影響の事前検討
- 継続的な人材育成:一過性に終わらせないための教育・連携の仕組み化
地域経済の側面では、訪問者の分散化により年間の来訪者数そのものだけでなく、地域全体の消費機会が増える可能性がある。特に中山間地や市街地の脇に位置する小規模事業者にとって、新たな集客経路は経営の安定化に寄与すると期待される。
ただし実際に観光商品として成立させるには、宿泊・移動手段・飲食・体験実施の受け入れ体制を地域で整える必要がある。学生の提案を単に展示するだけで終わらせず、事業者と連携した実証実験を通じて改善サイクルを回すことが重要だ。
今後の見通しと住民向けの留意情報
県内外からの誘客機運が高まる中で、若者主導の取り組みは中長期的な観光人材の裾野拡大につながる可能性がある。住民や事業者が関わることで「地域に根差した観光」を育てる好機でもある。関心のある市民や事業者は、キックオフやセミナーの公開情報を確認し、ワークショップや実証事業への参加・協力を検討するとよい。
今後のイベント情報や参加募集は、山口県観光連盟や参加校、地元DMOの告知を通じて発表される予定だ。関係者は公式発表を注視するとともに、学生提案を実際の事業につなげるための受け入れ準備を進めることが求められる。
(坂本 大樹)