企業の実践を評価し両立支援の現場定着を促す表彰
医療の進歩で治療を続けながら働く人が増える一方、がん罹患後に退職する人が約2割に上るという現状を踏まえ、がんと仕事の両立を支える取り組みを全国から募る「WorkCAN’sがんアワード 2026」の応募受け付けが始まった。主催側は、制度の整備だけでなく実際の運用や職場の理解促進といった現場での実効性を重視するという。
「日本人の2人に1人ががんを経験する」との統計的指摘を背景に、治療を続けながら働く人の支援強化が求められている。
この表彰は、2025年6月11日に一部改正された労働施策総合推進法の施行(2026年4月1日)を受けた動きの一環だ。改正法は、全ての企業に対し職場における治療と仕事の両立支援を努力義務として求めており、企業側には制度設計に加えて日常の運用面での強化が期待されている。
審査の軸と応募要項
主催は、がんを経験した社員の「働く」を支援する取り組みを評価することを目的に、以下の評価領域を掲げる。
- 現場で活きる両立制度・仕組み:制度が使いやすく、全社的に整備・周知され実際に活用されているか
- キャリア継続のための支援体制:治療中・治療後も当事者が役割や成長機会を維持できる体制があるか
- 支えあえる職場風土:当事者だけでなく上司やチームが支え合う文化が根付いているか
- 経験を組織の学びに変える取り組み:当事者の経験が制度・文化改善に活かされているか
応募は2026年7月21日から受け付け中で、締め切りは10月15日。表彰は11月30日にオンラインで発表・授与される予定だ。入賞には大賞、優秀賞、審査員特別賞、キラリ賞があり、応募企業すべてには「パートナー賞」が授与される。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 法改正 | 2025年6月11日 |
| 改正法施行 | 2026年4月1日 |
| 応募期間 | 2026年7月21日~2026年10月15日 |
| 結果発表 | 2026年11月30日(オンライン予定) |
審査体制と狙い
審査はWorkCAN’sのコアメンバーに加え、特別審査員として行動経済学の研究者である大竹文雄氏と、組織開発に携わり乳がん経験のある勅使川原真衣氏を迎える。大竹氏は制度だけでなく「人の行動」や「組織文化」の観点から評価する役割を担い、現場での運用がどれだけ定着しているかを重視するという。
協賛や運営支援にはアフラックが参画しているとの表記がある。表彰を通じて、単なる制度導入にとどまらず日々の職場で当事者が安心して働き続けられる環境を広げる狙いだ。
現場の課題と表彰の意味
がん罹患者が仕事を継続するには、柔軟な働き方や休暇制度の整備だけでなく、上司・同僚の理解、キャリア継続に向けた配慮が不可欠だ。制度が形だけで終わり、現場で使われなければ支援の効果は限定される。今回の表彰が評価軸に「運用面」や「職場風土」を明確に据えたことは、制度を実際に使える形にする取り組みを促す点で重要である。
企業にとっては、法令順守のみならず多様な人材が能力を発揮し続けられる職場づくりが競争力や持続可能性の観点からも求められる。応募を機に、当事者の声を組織の学びに変える仕組み作りを進める企業が増えるかどうかが注目される。
応募側への実務的なポイント
- 制度の周知・利用実績の提示が評価される可能性が高い
- 当事者のキャリア継続を支える具体的な支援体制の説明が重要
- 職場風土の改善や組織的学びへの取り組みを定量的・定性的に示すことが望ましい
応募要項や詳細は主催の案内ページで確認できるとしており、企業・団体の規模や業種を問わず応募を歓迎している。
労働市場の高齢化と医療技術の進展に伴い、疾病を抱えた労働者が働き続けられる環境整備は今後ますます重要になる。法改正で努力義務化された枠組みが実際の職場でどう生きるか。その試金石として、今回の表彰が果たす役割は大きい。
(森田 拓海)