町田で幕末明治の戯画約250点を一挙展示
町田市立国際版画美術館(東京都町田市)は、2026年9月12日から11月23日までの会期で特別展「うき世のたわむれ:笑いつづける浮世絵と幕末明治の渦」を開催する。展覧会では、同館の浮世絵コレクションを中心に、幕末から明治期にかけて制作された戯画や風刺画、鯰絵、麻疹絵など約250点が前期・後期の展示替えを挟んで公開される。
展覧会は、混迷の時代にあっても〈浮世〉を楽しむ視点を失わなかった表現の系譜をたどる構成となっている。制作された作品群は、天災や疫病、政治的緊張といった社会的危機を背景にしながら、笑いや戯れを通じて現世(うきよ)を扱っている点が特徴だ。
- 会期:2026年9月12日(土)~11月23日(月・祝)
- 前期:9/12~10/12、後期:10/15~11/23(展示替えあり)
- 会場:町田市立国際版画美術館(東京都町田市原町田4-28-1)
本展は章立てで構成され、歌川広重や歌川国芳といった作家の戯画作品を起点に、鯰絵や麻疹絵、開化絵、ポンチ絵など、多様な表現を並べている。人びとが苦境に直面した時期に、なぜ〈笑うこと〉や〈戯れ〉が生まれ、どのように表現されたのかを視覚資料を通じて示すことが狙いだ。
展示の主な構成は次の通りだ。第1章では歌川広重の名所絵や戯画を取り上げ、旅人のユーモアを含む作品を紹介する。第2章では歌川国芳の戯画・風刺画を通じ、出版規制を巧みに回避しながら風刺を込めた制作のあり方を伝える。第3章は鯰絵や麻疹絵を扱い、地震や疾疫に対する民衆の応答が視覚化される過程を提示する。第4章では将軍上洛もの、あわて絵、合戦絵、子供遊びものなどを通して、幕末期の政治的緊張や対外関係を意識した表現を並べる。
| 観覧料 | 料金 |
|---|---|
| 一般 | 1000円 |
| 大学・高校生 | 500円 |
| 中学生以下 | 無料 |
観覧料に関する特記事項も示されている。展覧会初日(9/12)と文化の日(11/3)は入場無料となり、65歳以上を対象としたシルバーデーが9/23と10/28に設定されている。また、身体障がい者手帳等を持つ来館者と付き添い1名は半額の扱いとなる。さらに、リピーター割引として本展の半券提示で一律200円の割引が適用される。
公共交通でのアクセスは、JR横浜線町田駅ターミナル口から徒歩約15分、小田急線町田駅から徒歩約20分が案内されている。開館時間は平日が10:00~17:00、土日祝が10:00~17:30で、入場は閉館30分前まで受け付ける。休館日は月曜(ただし会期中の祝日は開館)、および展示替え等で指定された日に限られる。
展示資料と時代背景
出品作には、歌川広重の『東海道五拾三次(保永堂版)』に含まれる一葉や、広重の揃物『即興かげぼし尽くし』といった戯画的側面の強い作品が含まれる。これらの作品は、風景描写の中に日常的なユーモアや人間模様を織り込み、鑑賞者に笑いを誘う要素を有している。
歌川国芳の作品群は、複数人で横顔を構成する詩的・技巧的な戯画や、出版規制をくぐり抜けつつ幕府や社会を風刺した絵を含む。国芳は戯画の名手として現代にも多くの支持を得ている点が、本展の評価においても重要な位置を占めている。
鯰絵や麻疹絵は、災害や疫病に直面した民衆の感覚と想像力が具体的な視覚像へと結実した事例だ。安政の江戸大地震の際に作られた鯰絵や、文久2年(1862)に描かれた麻疹絵は、科学的知見が未発達な時代における防疫や病理解釈、そして笑いによる不安の緩和のあり方を示している。
意義と期待される波及効果
本展は、〈浮世〉という概念が単なる享楽的世界観にとどまらず、困難な時代における精神的な耐性や共同体の表現手段として機能してきたことを再確認させる機会となる。展示される作品群は、当時の社会状況を反映する資料でもあり、芸術史的研究や教育普及、地域の文化観光にも寄与する可能性がある。
町田市立国際版画美術館は所蔵作品を中心に構成しているため、館のコレクションに対する理解を深める場ともなる。会期中の展示替えや入場無料日、割引制度は来館者層の幅を広げる工夫であり、リピーター割引も含めて来館動機を促す設計だ。
詳細は町田市立国際版画美術館の公式サイトで案内されている。