若者と企業を結び、空き店舗を雇用創出の舞台に
津市大門、丸之内、津新町の三つの商店街を対象に、若者と企業をつなぐ新たな地域創生プロジェクト「商店街まるごとインキュベーション」が始動した。事業を担うのは一般社団法人ネクスト・ピクチャーズ。商店街の遊休資産を活用して、若者の起業支援や企業との協働を促進することで、商店街の再生と人材育成の両立を図る狙いだ。
この取り組みは、若者、企業、商店街の三者を接続する“仕組みづくり”を重視している。具体策としては、空き店舗や空き家を活用した交流拠点やシェアオフィス、コワーキングスペース、チャレンジショップの整備を挙げている。第1弾として丸之内商店街の空きビルに三層構成の拠点を設ける計画で、来年初頭の稼働を目指す。
- 1階:学生や企業向けのコワーキングスペース(作業利用)
- 2階:学生と企業が個別相談できる面談スペース
- 3階:スタートアップ向けシェアオフィス
運営費は企業の協賛金とシェアオフィスの利用料で賄う方針で、学生利用は無料とする予定だ。さらに、東京の宇宙開発関連企業がシェアオフィスを設けることが想定されている。
「企業、学生、そして商店街の遊休資産という三つがそろった魅力的な場所だ。これまで点と点をつなぐ仕組みがなかった。インフラとしての仕組みを作っていく」——事業関係者
事業は既に動き出しており、7月20日にはなぎさまちの津エアポートラインで「三重ミライ会議」が開かれた。この場には三重大生や津高校生らが参加し、ロボットなどを活用した社会課題解決のアイデアを発表。会場には企業関係者もおり、その場で学生らのプロジェクトへの支援が決まった例もある。
背景:若者の県外流出と地域資源の現状
三重県では高校生の約8割が卒業後に県外へ進学・就職しているとの現状があり、人口減や担い手不足が地域社会の大きな課題となっている。一方、津市内には三重大など大学をはじめとする高等教育機関があり、高校生と合わせると約2万人の学生等が在籍している。つまり人材自体は存在するが、地域と学生をつなぐ接点が不足していた点が指摘されてきた。
丸之内商店街の関係者は、これまで三重大生との交流がほとんどなかった状況を«志登茂川を境にまるで見えない壁があるかのようだ»と表現している。今回の取り組みは、その“壁”を越えて人と機会を商店街に呼び込むことを目標としている。
| 対象商店街 | 主な狙い |
|---|---|
| 大門 | 地域住民との接点強化と既存店舗の賑わい創出 |
| 丸之内 | 空きビル活用による若者・企業の拠点整備 |
| 津新町 | 商店街全体の商業・雇用の底上げ |
これらの施策は、飲食店などの単なる出店誘致に留まらず、商店街を「ビジネスや雇用を生む場」として再定義する点が特徴だ。若者が繰り返し挑戦できる環境が整えば、成功した起業が地域に還元され、結果的に新たな店舗やサービスの出現を促す好循環が期待される。
住民にとっての具体的な影響と利用案内
今回の取り組みが地域にもたらす影響は多岐にわたる。短期的にはコワーキングスペースやイベントへの来訪者増が商店街の歩行者数を押し上げる可能性があり、中長期的には新規事業の創出や雇用機会の増加、市内での就職・定住の促進につながることが見込まれる。
利用に関する現時点でのポイントは次の通りだ:
- 学生は原則無料でコワーキングスペースを利用可能(運営方針による)
- 運営費は企業協賛およびシェアオフィス利用料で賄う見込み
- 第1弾拠点は来年初頭の稼働を目標としている
商店街の来訪者や地域企業は、交流イベントや公開ワークショップ等を通じて学生やスタートアップと接点を持つ機会が増えるだろう。既存店舗にとっては、新たな顧客層の取り込みや、学生との共同プロジェクトによる商品開発などの可能性がある。
今後の課題と展望
期待は大きいが、課題も残る。拠点の継続的な運営資金の確保、学生と企業のマッチングの質の維持、地域住民の理解と協力の促進が不可欠だ。運営側は、単発のイベントで終わらせず、持続的な支援体制と地域に根ざした運営計画を示す必要がある。
事業関係者は「若者が何度でも挑戦できる舞台をつくり、その中から成功する起業家が生まれ、地域に還元される」ことを目指している。将来的には、地域発の成長企業が生まれることも視野に入れており、まずは地元の遊休資産を有効活用する実践を重ねる方針だ。
津市内の関係者や住民は、今後の拠点整備やイベント情報、参加方法について市やネクスト・ピクチャーズの発表を注視するとともに、商店街側の協力や地域ぐるみの受け入れ体制づくりが成果を左右することを念頭に置く必要がある。地域資源を生かす取り組みが定着すれば、学生の県内定着や商店街の再生という本来の目的に結び付く可能性が高い。
(橋本 奈々)