空港愛称変更の狙いと現状
富山県は先週、富山空港の愛称を「富山高山すし空港」に変更すると発表した。県はこれを、外国人観光客などインバウンドの取り込みと、地域の認知度向上を図るための施策と位置づけている。
しかし、富山空港はピーク時から年間でおよそ100万人の利用者が減少し、赤字経営が続いているという現状がある。今回の愛称変更は話題性を狙った面があるものの、それを実際の利用増につなげるためには具体的かつ速やかな戦略が必要だ。
専門家の指摘:利点を明確化する必要性
北陸経済研究所の吉田聡子主任研究員は、富山空港を選んでもらうための独自のメリット提示が不可欠だと指摘する。全国的に成功例として挙がる空港は、単に愛称を変えただけでなく、その地域でしか体験できない魅力を具体的に打ち出している。
「富山を選んでもらうというようなメリットを何か独自に打ち出していかないと、戦略を持ってきっちりPRしていかないと難しいのかなとは思います」 ― 北陸経済研究所 吉田聡子主任研究員
既に成功例として挙がっている石川県の「のと里山ポケモン・ウィズ・ユー空港」では、愛称変更後の週末来場者が例年比で大幅に増加しており、鳥取県の空港もキャラクターや地域資源の活用で利用者を伸ばしている。
二次交通の課題と住民・旅行業界の提案
愛称に「高山」を加えた狙いの一つは、高山への玄関口としての位置づけだ。岐阜県との懇談で両県は、富山空港を高山へのアクセスルートとして世界にPRしていく方針を確認した。ただし、現状では空港と高山を結ぶ直行バスはコロナ禍で運休したままで、公共交通はない。
旅行会社も、空港を起点に複数の観光地を巡るルート整備を求めている。ニュージャパントラベルの松田隆社長は、富山空港から長野や富山県内の観光地、高山へ抜けるような周遊ルートを整備すれば、3泊4日や4泊5日のコースが作れると提案している。
- 直行バスの再開や新設に向けた運行計画と財政支援
- 空港発着を基点にした周遊ツアー商品の開発
- インバウンド向けの多言語案内や連携窓口の強化
地域資源の見せ方と今後の対応
県は「富山と高山は近い」として、高山の知名度を利用する狙いを示しているが、それだけで利用者が増える保証はない。吉田主任研究員は、富山の産業や伝統工芸などのストーリー性を組み合わせ、外客に「ここでしかできない体験」を明確に示すことが重要だと述べている。
具体的には、空港での食や体験プログラムの企画、地元事業者と連携した着地型観光商品の整備、外国人観光客の嗜好に合わせたマーケティング強化などが考えられる。愛称に「すし」を入れたことで、海産物や食文化を前面に出した誘客は想定されるが、どの程度の集客力があるかは検証が必要だ。
国際便再開と期待される影響
報道では、来月から台北便が再開される話題も挙がっている。台北などアジア圏との直行便の再開はインバウンド回復の追い風となる可能性があるが、着陸後に訪問先へスムーズに向かえるかどうかが鍵となる。
| 現状 | 課題 |
|---|---|
| 空港愛称変更(富山高山すし空港) | 愛称の話題化を実需につなげる仕組み不足 |
| 直行バス等の二次交通は運休中 | 高山など主要観光地へのアクセス確保が急務 |
| 地域の観光資源は豊富 | 外客向けの訴求と周遊ルートの設計が必要 |
県や空港運営会社は二次交通の整備に意欲を示しているが、実行に移す際は速やかな検討と関係自治体・事業者との連携が求められる。具体的な運行スケジュールや運賃、利用想定の数値目標などを早期に示すことで、旅行業界や宿泊業、飲食業など地元事業者も受け皿を準備しやすくなる。
住民にとっての影響と今後注視すべき点
愛称変更は地域の話題性を高める効果が期待できる一方、住民に直接影響するのは二次交通や路線・便数の拡充だ。空港利便性が高まれば、観光客増に伴う経済波及効果が見込まれるが、同時に交通混雑や宿泊施設の需給バランスなど地域側の受け入れ体制も検討する必要がある。
今後、県が示す具体策として注視すべき点は次の通りだ。
- 直行バスの運行再開時期と運行本数、料金設定
- 台北便など国際線の運航強化に伴う着地型観光商品の整備計画
- 空港と市町村、旅行業者の連携体制と負担の所在
愛称変更はスタートに過ぎない。話題を持続的な利用増につなげるには、具体的施策の見える化と迅速な実行が不可欠だ。県と関係者がどのように課題を詰め、住民や観光業界と協働していくかが、富山空港再生の成否を左右する。
(井上 麻衣)