富山と高山を結ぶ“名前”が地域観光の課題を顕在化
富山空港が新たに公表した愛称を「富山高山すし空港」とする発表を受け、10日に富山市内で富山県の新田八朗知事と岐阜県の江崎禎英知事が懇談した。両知事は、愛称によって国内外に対する認知度を高める意義を確認するとともに、特に空港と飛騨高山地域の間を結ぶ二次交通の整備や周遊観光の連携強化を検討していく方針で一致した。
懇談に先立ち両知事は岩瀬地区を散策し、すし職人の養成施設である北陸すしアカデミーを訪問した。報道陣への発言で江崎知事は、富山側が高山の名を愛称に入れたことに対し「すごくありがたい」と述べ、今回の名称が高山への新たなアクセスの存在を世界に示す効果があるとの期待を示した。
岐阜県 江崎禎英知事:「せっかくこうした名前をいただいたので、両県手を携えて進めていきたい」
県発表や懇談内容によれば、富山空港側はインバウンドを含む利用者増を狙い、海外で認知度の高い「すし」と観光地名の「高山」を盛り込んだ名称に改めた。これを受け、両県は名称を単なる呼称にとどめず、実際のルート整備や利便性向上につなげるための協議を進めるという。
住民や観光業界に直結する“二次交通”の現状と優先課題
現状、富山空港から高山へ直接結ぶ公共交通は整備されておらず、懇談ではその整備が最大の焦点となった。新田知事も「直接富山空港から高山へのルートはないわけですから、これから岐阜県あるいは高山市と、より便利なルートにしていくために取り組みを始めていきたい」と述べている。
具体的に話題に上ったのは、現在工事が進む「富山高山連絡道路」の活用と、両県を結ぶ交通網の総合的改善だ。また岐阜側からは、東海北陸自動車道の全線早期の4車線化に向けた国への要望など、幹線道路の強化も今後の要請事項として挙がっている。
| 話題 | 懇談での確認点 |
|---|---|
| 愛称の目的 | 富山空港の国際的認知度向上と飛騨高山地域への誘客 |
| 交通課題 | 空港〜高山間の二次交通整備、富山高山連絡道路の活用 |
| 今後の方針 | 両県連携での周遊観光強化とアクセス改善の具体化 |
インバウンド実績と課題を踏まえた期待と現実
懇談では、観光客の動向を示す数値も確認された。報道によると、前年1年間で高山を訪れた外国人観光客は「100万人近い」規模にのぼった一方で、来訪者の事前滞在地として富山が認識されている割合は低い。同じ報告で示された調査では、高山に来る前の宿泊地を『富山』と答えた人はわずか4人、また高山の後の宿泊予定で『富山』と答えた人も13人にとどまったという。こうした実態を背景に、愛称改定によるPR効果に期待が寄せられている。
ただし、名称の変更だけでは移動のハードルは解消されない。観光客にとって魅力的な周遊プランを成立させるためには、利便性の向上、所要時間の短縮、案内や情報発信の多言語対応といったソフト面の整備も不可欠だ。地元観光業者からは、具体的な運航便数の増加や、空港発着のバス・シャトルの定期化を求める声が予想される。
- 今後の検討課題:二次交通(シャトル・高速バスなど)の具体化
- 連携対象:富山県、岐阜県、高山市、運輸事業者、観光関係団体
- 短期的効果:愛称による認知向上、プロモーション素材の強化
懇談では、名称決定を好意的に受け止める発言が相次いだが、両知事ともに今後は“名前”を具体的なルートや利便性に結びつける作業が重要だと強調している。江崎知事は「多くの方は高山に行くのは南からのルートしかないと思っている。それに今回、富山に高山という名前が付き、世界の方にとってこれほど大きなインパクトを与えるようなことはない」と述べ、国際市場での訴求力に期待を示した。
地域住民にとっての影響は身近だ。観光客の増加は宿泊業や飲食、小売りなど地元経済に波及する一方、交通混雑やインフラ負荷の増大も懸念される。市町村や関係機関による具体的なロードマップ策定が不可欠であり、住民参加の意見集約や地元事業者との調整が今後の焦点となる。
富山空港の新名称は地域の顔としての発信力を高める可能性を持つが、それを観光需要の実需につなげるためには道路整備や公共交通の確立、訪日客に向けた情報発信および受け入れ体制の整備といった多面的な取り組みが要求される。両県が合意した「連携強化」の言葉が、具体的な施策とスケジュールにどう落とし込まれるかが、今後の注目点である。