東京の名店が「子育て」を理由に岡山へ
東京・神楽坂で13年間、評判を得てきたそば店の店主、最上はるかさんが、今年5月に岡山市北区御津地区へ店を移転し、新たに営業を始めた。最上さんは20歳から都内の名店で修業を積み、26歳で独立。長年にわたり東京でそばを打ち続けてきたが、子どもが生まれ、家族や子育ての時間を優先する中で移住を決断したという。移住先には夫の実家がある建部地区近辺を選び、近隣の御津地区で古民家と出会い、店を開いた。
最上さんは移住の理由について「子育てと家族の時間を大切にしたい」と語っている。東京での営業を続ける選択肢もあったが、狭い住環境と子育ての両立を踏まえ、新天地での開業を選んだ点が特徴だ。
古民家活用が地域に与える具体的な影響
移転先となったのは築130年以上の古民家。大家の松岡さんは先祖から受け継いだ屋敷を、地域にとって価値ある形で残したいとの思いから改装に踏み切り、そば店という形での継承を決めた。手入れの行き届いた中庭を望む店舗は、来店者に古民家の風情を提供するばかりでなく、地域の賑わいを呼び込している。
平日や土曜の午前9時半の開店時刻に合わせ来店する客がいるなど、静かな山あいの地域に新たな集客が生まれている。近隣住民によると、店ができたことで交通量が増え、近所で採れた野菜の販売を始める人も出ている。駐車場の案内を率先して行う住民の姿も見られ、地域の交流や経済動向に変化が及んでいる。
提供スタイルと客層
最上さんの店では、石臼で少量ずつひいた香りのあるそば粉を用い、打ち立てを短時間でゆで上げて提供する。そばに合う地元産の野菜を中心とした天ぷらも人気を集め、SNSを通じて県外から訪れる客もいる。来店者の中には、東京の神楽坂に在住の親族からの薦めで訪れる人もおり、東京で培った味と評判が地方での集客につながっている。
店の開店時間などの基本情報は、平日・土曜の午前9時半開店と伝えられている。混雑時は早めに満席になる可能性があるため、来訪を検討する住民や訪問者は時間の余裕をもって向かうのが望ましい。
東京の飲食店経営者・子育て世代に示す示唆
今回の移転は、東京で長年営業してきた飲食店経営者が子育てを機に地方へ拠点を移す一例だ。都心での商売と家庭生活の両立が難しいと感じる飲食関係者や子育て世代にとって、今回のケースは選択肢の一つを示す。古民家を活用した店舗運営は地域資源の保存につながり、地域側も空き家や高齢化の課題解消に寄与する可能性がある。
- 営業時間の目安:平日・土曜 午前9時半開店(混雑時は早期満席の可能性あり)
- 店の特徴:石臼で少量ずつひいたそば粉、地元野菜の天ぷら、古民家の雰囲気
- 地域への効果:来客増による近隣商売や交流の活性化、空き家利活用のモデル
「ここがみつからなければ、多分今も東京にいると思います。お店が繁盛することと、先祖の方から引き継いできた屋敷……それを両輪でやっていくことが私の使命だと思って」 ―― 最上はるかさん(要旨)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 移転時期 | 今年5月 |
| 旧店舗 | 東京・神楽坂(新宿区)で13年間営業 |
| 新店舗 | 岡山市北区御津地区、古民家を利用 |
東京の読者にとっての教訓は、都市でのキャリアや評判を活かして地方で新たな挑戦を行う動きが増えている点だ。子育てや住環境を優先する選択が、結果として地域に資する形で表れることもある。東京で飲食店を利用する側としては、移転で失われる「街の顔」がある一方、地域間で技術や文化が循環することで日本全体の食文化の裾野が広がる側面もある。
取材を通じて見えたのは、店主と古民家の持ち主、地域住民が互いに寄り添いながら新しい日常を作っている光景だった。東京での実績を持つ職人が地方で根を下ろす事例は、今後も増えていく可能性がある。東京の生活者は、こうした動きを遠方の話と捉えるだけでなく、子育てや働き方の選択肢として参考にする価値があるだろう。