耕作放棄地の再生でコウノトリが飛来、だが課題も顕在化
鳴門市などで活動するNPO法人とくしまコウノトリ基金は、耕作放棄地を湿地性ビオトープに転換する取り組みを進めてきた。2020年以降、レンコン栽培地帯で約2ヘクタールの湿地性ビオトープを整備した結果、ドジョウやメダカなどの魚類や水生昆虫・両生類が再び増え、コウノトリの飛来・採餌が確認されるまでになった。
一方で基金は、湿地の規模拡大だけでは繁殖ペアの増加には至らないとの認識を示す。現場からは、夏季の滞在数減少や繁殖の不成立が続くという課題が指摘されている。
維持管理の労力と外来植物の蔓延
開放水面を維持するための除草作業の負担が大きいことも明確になっている。ガマ・ヨシ類や雑草化したレンコンのほか、近年では外来種のクサネムやホソバミソハギ、キシュウスズメノヒエなどが急速に繁茂し、水面を埋め尽くす例が増えた。これに対応するために基金では、セミクローラ型トラクターを用いて年に約5回の除草を実施し、春から秋にかけてはさらに頻度を上げている。
地域と連携した環境学習と人材育成
基金は教育機関や大学、企業と連携して環境学習プログラムを提供している。具体例として、鳴門市の板東小学校と堀江北小学校では、出前授業やビオトープでの生物観察、実際にコウノトリが餌場として利用する田んぼでの「コウノトリのお米」づくりや「コウノトリれんこん」掘り取り体験など、体験重視の学習を実施している。板東小は2025年10月に徳島市で開催された国際シンポジウムで学習成果を発表した。
大学では、徳島大学の学生が生物調査や魚の産卵床、魚礁、バットハウスの設置といった実験的なフィールドワークを行っており、学術的な知見の蓄積にもつながっている。企業向けには研修プログラムとして講義と農作業体験を組み合わせたコースを実施し、地域の理解者・支援者づくりを進めている。
地域経済への波及——「応援商品」の仕組み
基金は保全活動と並行して、地域経済の活性化を目的とする「コウノトリ応援商品」の展開に力を入れている。事業者が自社商品の売上の一部を基金に寄付する仕組みで、基金は寄付金をビオトープ整備や保全活動に充てる。代表的な取り組みは、2020年に始まった酒のプロジェクト「コウノトリの酒 朝と夕」で、地元で特別栽培基準以上の方法で作られた米を原料に酒を醸造し、販売価格に寄付分を上乗せして資金を確保する方法が取られている。
これに続き、れんこんを使った食品(ピクルス、カレー、おかず味噌)や、2025年からは同じ米を使った味噌や弁当が応援商品に加わった。食品以外でも肥料などが取り組みに参加しており、地域産業と保全活動を結び付けるモデルが広がっている。
- 教育と研究:小中高校、大学での学習・調査フィールドとして活用
- 保全管理:年数回の機械除草による開放水面維持が必要
- 地域経済:応援商品を通じた資金循環で活動を支える
住民への影響と今後の焦点
住民にとっては、耕作放棄地の再生は景観回復や観光資源化、地域ブランドの形成に直結する。環境学習を受けた子どもたちが地元の自然や農業に関心を持つことは、将来の担い手づくりにもつながる。また、応援商品を購入する消費行動が保全に結びつく点は、持続可能な地域支援モデルとしての意義がある。
ただし、現場の維持管理コストと雑草・外来種対策は解決すべき喫緊の課題だ。基金自身も「湿地を維持するには省力・省エネルギーの雑草抑制技術の確立が必要だ」と指摘しており、効率的な管理方法の開発や支援制度の整備が求められる。
| 項目 | 現状・取り組み |
|---|---|
| ビオトープ面積 | 整備済み約2ヘクタール(+拡張計画) |
| 除草頻度 | 年約5回(季節により増加) |
| 教育連携 | 板東小、堀江北小、徳島大学など |
| 応援商品 | 酒、れんこん加工品、味噌、弁当など |
地域関係者、行政、研究機関、企業が連携し、維持管理の負担軽減策と資金調達の両面で工夫を続けることが、次の段階となる。とくしまコウノトリ基金の取り組みは、単に希少種を守る取り組みを超え、地域の農地再生と経済循環を同時に進める試みとして注目に値する。
鳴門地域での具体的な活動や体験参加、応援商品の購入に関する問い合わせは、NPO法人とくしまコウノトリ基金の各案内窓口を通じて行われている。地元住民や観光客にとって、現場を訪れ、活動を知ることが支援の第一歩になるだろう。