和歌山県田辺市は、地域と外部の人々をつなぐ関係人口づくりを目的とした養成講座「熊野リボーンプロジェクト」の第7期を開講した。首都圏や近畿、九州などから集まった13人が受講しており、熊野の景観保全や里山の活用を巡る実地学習と議論を通じて、地域への継続的な関わり方を模索している。
実地で学ぶカリキュラム
プロジェクトは、受講者がオンライン学習とフィールドワークを組み合わせて学ぶ仕組みだ。今回のフィールドでは以下のような体験が行われた。
- 熊野古道(中辺路)の歩行
- 龍神村「奥辺路」での道普請(古道の整備作業)
- 本宮町周辺での稲作体験(田んぼでの草引き等)
こうした現地での活動により、参加者は単に観光する側から、維持管理や地域づくりに主体的に関わる側へと意識を移していくことが狙いだ。
多様な参加者と育成の経緯
リボーンプロジェクトは2020年度に創設され、これまでに71人が修了している。第7期は年齢層が10代から60代までと幅広く、公務員や会社員、アーティストなど職業も多様だ。今回、初めて高校生の参加もあり、若い世代の関心も高まっている。
| 項目 | 数値・内訳 |
|---|---|
| これまでの修了生 | 71人 |
| 第7期参加者 | 13人(首都圏、近畿、九州など) |
| 年齢層 | 10代〜60代 |
自治体と専門家の連携
講座の運営には、低山トラベルの第一人者である大内征氏や、登山アプリを手掛けるヤマップが協力している。実地歩行では田辺市の真砂充敏市長が案内役を務める場面もあり、市の関与が深いことを示している。
「リボーンプロジェクトの受講者は高い熱量で田辺市と関わろうとしてくれる人たちが多く、修了後も何度も訪れてくれる人もいる。こうした取り組みを土台に、国が創設する『ふるさと住民登録制度』を通じた関係人口の創出に生かしていきたい」と市たなべ営業室の担当者は話している。
市側は、この講座を通じて地域外の人々が熊野の自然や文化・生活に触れ、実際の活動につながることを期待している。国の制度と連携する可能性も示唆されており、地域と外部の接続点を制度面でも強化しようとする動きが読み取れる。
住民や地域にもたらす影響
参加者が古道の維持や農作業などに継続的に関わることで、次のような効果が期待される。
- 観光資源である熊野古道の保存・美化につながる人手の確保
- 過疎化・高齢化が進む地域での作業力・知見の補完
- 都市部に住む人々と地元住民との交流を通じた地域経済の活性化
一方で、受け入れ側の課題としては、持続的な受け入れ体制の整備や、参加者が地域に関わり続けられる仕組み作りが挙げられる。具体的には現地の受け入れ窓口の人的負担、活動の安全管理、季節や天候に応じたプログラム設計などが必要だ。
今後の予定と住民への参考情報
第7期の受講生は、オンライン学習とオプションツアーを経て、9月中旬に各自が市とどのように関わっていきたいかを発表する予定だ。発表内容は地域との具体的な関わり方の指標になり得るため、地元団体や住民にとっては今後の協働の可能性を見極める上で注目点となる。
地域住民や関心のある市民が知っておくとよい点は次の通りだ。
- プロジェクトは単発の交流ではなく、修了後も訪問や活動を続ける受講生がいる点。
- 行政・専門家・参加者が共同で活動を設計しているため、継続性の確保が比較的進んでいる点。
- 今後、国の制度(ふるさと住民登録制度等)と連動する可能性がある点。
熊野地域の保全と活性化に向け、地域外の人材を育て受け入れていく試みは、地域の実務的な支援力と内外の連携を同時に高める可能性がある。今後の発表内容や、修了生がどのように地域に定着・還元されるかが、田辺市と熊野地域の持続性を左右する重要な指標となるだろう。