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高潮想定図を公開、県内15市町村で指定完了

茨城県は最大級の高潮被害を見積もった浸水想定図を公表し、内陸を含む15市町村・32区域を指定した。住民向けハザードマップ作成が本格化し、避難計画の見直しが急務となる。

高潮想定図を公開、県内15市町村で指定完了
©イラスト AI生成 :中村 智子/プレスリリースジェーピー

茨城県は、台風などに伴う高潮の最悪シナリオを前提にした「高潮浸水想定区域図」を公表し、内陸部を含む県内15市町村・計32区域の指定を完了させた。新たに13市町村23区域が6月30日付で追加され、想定される浸水面積は合計152.43平方キロメートルに達する。関係自治体はこの指定を根拠に、住民向けハザードマップの整備と公開を急いでいる。

背景と指定範囲の広がり

県は当初、沿岸9市町村に焦点を当て20区域程度の指定を見込んでいた。しかし詳細な解析を進める中で、河口部から河川を遡上する潮位上昇の影響が想定より広い範囲に及ぶと判断。沿岸だけでなく、那珂川や利根川水系に接する水戸市や稲敷市など内陸部も含める形で対象が拡大された。近年の気候変動に伴う台風の大型化・強度増大が懸念される中、県河川課は最悪の事態を基準に対策の底上げを図る考えだ。

想定の前提と複合リスク

今回の想定は、過去の代表的な巨大台風を参照している。中心気圧は1934年の室戸台風、移動速度は1959年の伊勢湾台風を基準とし、進路は12通りのパターンを設定。さらに、台風接近時に同時発生が懸念される悪条件も折り込み、豪雨による河川水位の上昇、堤防の破損・決壊、排水施設の機能低下といった要素が重なる複合災害を前提にモデル化した。区域図は次の3要素で構成される。

  • 浸水が及ぶ範囲を示す浸水区域
  • 地点ごとの水位上昇を示す浸水深
  • 住民の孤立を判断する目安となる、深さ0.5メートル以上の浸水が継続する浸水継続時間

これにより、エリアごとの避難のしやすさや時間的余裕、車両移動の可否などを具体的に検討できる。

浸水の広がりと深さ、目立つ地域

想定の中でも、特に広い浸水面積が示されたのは稲敷市で、42.13平方キロメートル。利根川と新利根川に挟まれた一帯が主な対象となる。次いで神栖市が23.98平方キロメートル、水戸市が20.09平方キロメートルとなった。また最大浸水深は5.9メートルと見積もられ、ひたちなか市(那珂川・水戸大橋付近の住宅地)と潮来市(外浪逆浦右岸の農地)の2地点で最大値が示されている。

指標市町村・地点値
浸水面積 最大稲敷市42.13 km²
浸水面積 2位神栖市23.98 km²
浸水面積 3位水戸市20.09 km²
最大浸水深ひたちなか市・潮来市の各一部5.9 m

那珂川や利根川水系に近い平野部は、高潮と河川増水の双方の影響を受けやすい。とりわけ住宅地や農地が混在する区域では、浸水の継続時間が長引くと生活・生産の両面に広範な支障が出る可能性がある。

自治体の対応と情報提供

指定を受け、各市町村は順次ハザードマップの更新・作成に入っている。稲敷市は今年2月に洪水・土砂災害を網羅した総合防災マップを発行済みで、年度内公開予定のウェブ版に高潮の新想定を反映させる工程を前倒しする。ひたちなか市は、今月中にも市公式サイト内に特設ページを設け、年度内の高潮ハザードマップ完成をめざす方針だ。現場の担当部署は、高潮が単独で起きるわけではない点を重視して、複合要因の理解を促す。

「河川の増水など、複数の要因が重なって高潮が起きることを分かりやすく伝えたい。台風時には高潮のリスクもあることを周知したい」

住民が活用しやすい地図の形で、深さや到達範囲、継続時間を可視化する動きが広がる見通しだ。

地域への影響と住民に求められる備え

想定図は「最悪ケース」を見積もるためのもので、直ちに同規模の被害が現実化するわけではない。ただし、高潮は短時間で水位が急上昇する特性があり、高潮警報・注意報の発表後に避難判断が遅れると退避経路が遮断される恐れがある。特に浸水深0.5メートル以上では歩行が困難になり、車の移動も危険性が高まる。地図の浸水継続時間の情報は、孤立リスクの把握や、物資の事前備蓄、在宅避難可否の判断に役立つ。

  • 自宅・学校・職場がどの色分け(浸水深)に該当するかを確認する
  • 避難先(親族宅・指定避難所)への徒歩ルートを事前に複数設定する
  • 地下・半地下や低地の浸水対策(止水板、土のう、家財の上階移動)を検討する
  • 停電・断水に備え、飲料水・非常食・モバイルバッテリーを最低3日分確保する
  • 自治体の防災メール・アプリに登録し、潮位・河川水位と気象警報を同時に確認できる体制を整える
  • 浸水被害を想定し、火災保険の水災補償の契約内容を見直す

農業や物流も影響を受けうる。外浪逆浦周辺の農地に深い浸水が想定されている潮来市では、田畑や農機具の浸水対策、収穫時期の前倒しや保管場所の分散などが検討課題になる。工場・倉庫の多い神栖市や臨海部では、資材の高所保管、非常用ポンプの点検、想定浸水深に応じた配電設備の移設が現実的な対策となる。

想定図の入手方法と今後の予定

区域図は、県や各市町村の公式ウェブサイトで順次公開される。ひたちなか市は特設ページの開設を今月中に予定しており、稲敷市も年度内にウェブ版防災マップへ高潮情報を反映する計画だ。紙媒体のハザードマップは、広報紙への同封や公共施設での配布が見込まれる。最新の公開状況は、各自治体の広報や防災ページで確認してほしい。

県は、指定の完了により自治体の計画策定を後押ししつつ、住民への周知・訓練の強化が次の段階になる。高潮は、通行止めや停電、通信障害を伴いやすい。自治体は避難所の開設判断や交通規制の連携を含め、気象・潮位・河川水位の情報を総合した運用訓練を重ねることが重要だ。住民側も、家族ごとのタイムライン(行動計画)を整備し、台風接近の段階で早めに行動へ移す意識が求められる。

今回の想定は、将来の気候や海面の変化を踏まえ、定期的な見直しが必要になる。県と市町村、地域の事業者・住民が同じ地図を共有し、ハード・ソフトの対策を組み合わせて「逃げ遅れゼロ」を目指す取り組みが問われている。

中村 智子
中村 AI編集 茨城県担当記者 オンライン

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