冠水道路は見た目で判断できない。JAFの検証が示す危険性
近年の豪雨で車両の浸水被害や車内での死亡事故が相次いでいる中、JAF静岡支部は冠水路での挙動と車内脱出の実験を行い、走行の危険性と避難時の留意点を明らかにしました。実験では電気自動車、ハイブリッド車、ガソリン車の3車種を用い、異なる水深と速度で走行した際の挙動を検証しています。
まず、水深30センチを時速30キロで走行した条件では、3車種とも最後まで走り切ったものの、ガソリン車は足元からわずかに浸水するなどの影響が出ました。続いて水深60センチ(タイヤが隠れる程度)を時速40キロでの検証では、電気自動車とハイブリッド車はいずれも走行できたものの複数の警告灯が点灯する状態になり、ガソリン車は28.5メートル地点でエンジンが停止して走行不能になりました。
「冠水路は、見た目では水深を判断しにくい。行けるだろうと思って進んでいくと、思いのほか水が深いということもある。安易に侵入せず、迂回路があればできるだけ迂回してほしい」
— JAF静岡支部 原 康之さん
車内からの脱出は想像より困難 専用ハンマーの有効性
実験は走行面だけでなく、万一車内が水没した際の脱出についても行われました。水深60センチの条件で、セダンでは水圧の影響で開けるのにかなりの力を要したものの、ドアを開けることは可能でした。一方、ミニバンでは同じ水深で男性の力でもドアを開けられない状況が確認されました。JAFは、このような場合に備え、車内に脱出用ハンマーを常備し手の届く場所に置くよう強調しています。
また、窓割りの実験ではヘッドレストやスマートフォン、ビニール傘などでは割れず、専用の脱出用ハンマー以外での破壊は困難だという結果が出ています。JAFはガラスを割る際は四隅を狙うことを助言しています。
- 冠水時は水深が外見で分かりにくく、安易な進入は危険
- 水深60センチ程度になると車種によってはエンジン停止やドアが開かない事態が生じる
- 窓を割るには専用ハンマーが有効で、常備が望ましい
静岡市の現行の受け入れ体制――車の避難場所としての民間駐車場
静岡市では、冠水リスクに備えた車両の避難場所確保の取組みが進んでいます。市はパチンコ店や商業施設などと協定を結び、水害時に立体駐車場などを車の避難場所として利用できるようにしています。具体的には、民間駐車場13施設で合計2501台、公共施設3施設で合計1030台が利用可能となっています。
| 区分 | 施設数 | 駐車台数 |
|---|---|---|
| 民間 | 13 | 2501 |
| 公共 | 3 | 1030 |
協定先には、スーパーコンコルドを運営する「新日邦」や、パチンコ店の「ABC」「アプリイ」、商業施設「マークイズ静岡」などが含まれます。スーパーコンコルドの原 幸史主任は、令和4年の台風15号時に車両被害が約2000台に達したことを踏まえ、地域で活用できる立体駐車場の提供を進めていると説明しています。原主任は、店舗長の判断で臨機応変に貸し出す運用を続けており、要請がなくても困った際には対応する姿勢を示しています。
住民が今すぐできる備えと行動指針
JAFと市の取組みを踏まえ、静岡の住民が日常的にできる備えと緊急時の行動を整理します。以下は実験結果と既存の協定を前提とした現実的な対応です。
- 避難ルートと迂回路の確認:日常からハザードマップで冠水しやすい道路・地点を把握する。
- 車に脱出用ハンマーを常備:手の届く位置に置き、使い方を家族で共有しておく。
- 冠水を見たら無理に進入しない:視覚だけで判断せず、少しでも不安があれば引き返すか迂回する。
- 自治体や協定先の避難スペースの情報を確認:駐車場受け入れの対象施設や条件を事前に把握しておく。
JAFはまた、冠水時に車内にいる場合の具体的な対処法として窓を壊す位置や道具の使い方を呼びかけています。静岡市の協定は車両被害の軽減につながる一助ですが、協定の範囲や運用は施設ごとに異なり、事前確認が重要です。豪雨シーズンを控え、個々の備えと地域の受け入れ体制双方を整えることが、被害を減らす現実的な対策となります。
(出典:JAF静岡支部の実験報告、静岡市と民間事業者の協定に関する関係者発言)