ラピダス進出で千歳市、人口推計を下回る状況に
国産次世代半導体のメーカー、ラピダスが進出した北海道千歳市で、2026年6月1日時点の住民基本台帳に基づく人口が9万7158人となり、市が改定した人口ビジョンの推計値を2年連続で下回っていることが市議会の資料で明らかになった。市は当初、ラピダス効果を見込み人口増を推計に反映させていたが、実際には地価や賃貸料の高騰を背景に住民の転出が進んでいる。
市が2019年に策定した人口ビジョンでは2030年ごろにおよそ10万人のピークを想定していた。ラピダスの進出が発表された2023年以降、市はさらに楽観的な見通しに修正し、2036年に10万2000人超をピークとする推計に上方修正していた。しかし、住民基本台帳上の実数は2023年に約9万8000人台まで増加した後、減少に転じ、2025年と2026年の双方で当初推計をそれぞれ約1200人上回る形で下回った。
「建設工事関係者が賃貸住宅に流入して需要が高まり、物件選択の自由度が低くなって(市民の)転出傾向が強まったり、転入者が市内に居住できないケースがあったりした」と横田隆一市長は市議会で説明した。
市内ではラピダスの進出に伴い商業地の公示地価が直近3年間で毎年25〜40%前後上昇している。地価上昇は家賃や住宅価格に波及し、若年世代が住宅ローンを組めなくなる、賃貸契約で立ち退きを求められるといった事例が報告されている。こうした事情から、住宅を求めて隣接する恵庭市や南幌町などへ移住する動きも見られる。
一方で市はラピダス従業員らの転入は増加していると説明しており、工場の本格稼働に向けては「順調に推移している」との見解を示す。だが、経済波及効果と同時に住民生活の維持という両立課題が浮き彫りになっている。
住民生活と市の対応――焦点となる課題
今回の状況から、千歳市が直面する主要な課題は以下の点に集約される。
- 住居の確保と家賃高騰:建設関係者や新規従業員の流入により短期的な住宅需要が急増し、既存住民が住居を失うリスクが高まっている。
- 地域間の住宅格差拡大:市内外で所得・家賃のバランスが崩れ、周辺自治体への移住が進むことで通勤負担や地域コミュニティの希薄化が懸念される。
- 長期的な人口維持戦略の再検討:短期的な企業誘致効果だけでなく暮らしやすさを重視した住宅政策やインフラ整備が必要。
市の説明によれば、建設工事従事者らの流入が住民の転出を促した一因とされるが、雇用創出と居住環境整備のバランスをどう取るかが問われる。都市計画や住宅供給の見直し、賃貸市場の規制・支援策、低所得層向けの住宅確保策など具体的な施策の検討が急務だ。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 2026年6月1日人口(住民基本台帳) | 9万7158人 |
| 市の推計との差 | 約1244人不足 |
| 商業地の公示地価上昇率(直近3年) | 年25〜40%前後 |
今後の見通しと住民への影響
ラピダスの工場が本格稼働に入れば、関連産業を含めた雇用拡大や税収増が期待される。ただし、それが直ちに住民の生活安定につながるとは限らない。賃貸市場の逼迫は、子育て世帯や高齢者が安心して暮らせる住環境を脅かす要因となる。通勤時間の長期化や地域サービスへのアクセス低下が進めば、結果的に地域全体の魅力の低下にもつながりかねない。
市は短期的な住宅需要に対応するために、民間と協働した賃貸供給や仮設的な宿舎整備、既存住民への支援策などを含めた対策を求められている。住民生活の実態把握と迅速な施策実行が、今後の人口動向と地域の持続性を左右するだろう。
(千歳市)