石山で味わう「燗」と琵琶湖の旬魚
立秋を過ぎ、朝晩にしのぎやすさが戻る中、JR琵琶湖線・石山駅周辺にある酒処「酔in(よいん)」が改めて注目を集めている。店を切り盛りするのは「大津きってのお燗番」と評される店主・コマツさん。先ごろ開催されたイベントの余韻を受け、店の一品として供された琵琶湖の小鮎の料理が、地元の味の魅力を示している。
小鮎は、滋賀・高島方面で釣られた手のひらに収まるほどの小ぶりな個体で、頭から骨まで食べられる点が特徴だ。この日は山椒煮や南蛮漬けに加え、一夜干しが特に好評を博した。丁寧に開いて干された身は、表面が炙られて皮はパリッと香ばしく、凝縮したうまみが口に広がるとレポートされている。
合わせられたのは、滋賀の地酒「七本鎗(しちほんやり)」の木桶仕込みの銘柄「木ノ環(きのわ)」の生酛造りを燗で。過度に熱くもなくぬるすぎもしない絶妙な温度で提供された燗酒は、魚の繊細な風味に寄り添い、まろやかな余韻を残したという。
- 地域の食材:琵琶湖・高島産の小鮎が中心。
- 提供スタイル:一夜干しや山椒煮、南蛮漬けといった伝統的な調理法。
- 酒との組み合わせ:七本鎗・木ノ環、生酛の燗酒が好相性。
こうした組み合わせは単なる味の相性の話にとどまらない。地元で釣られた魚を地場の酒とともに味わうことは、生産者・流通・飲食店という地域のサプライチェーンのつながりを可視化する。酒と肴が互いを引き立て合う場は、地域内での経済循環や交流の機会にもつながる。
「おさけさんでぃ」という不定期イベントは、コロナ禍での酒イベント中止が相次ぐ中で業界を応援するために始まり、滋賀酒をメインに初心者でも楽しめる工夫を凝らして開催されている。
主催には石山の別の飲食店・RESERVOIR(レザボア)も名を連ね、回ごとにテーマを設ける形で行われている。参加者は顔の見える範囲に抑えられ、参加者が100名以下に収められるなど、小規模で密度の濃い交流を志向している点が参加者の安心感につながっている。
地域住民への実際的な意味合いとしては、次の点が挙げられる。まず、地元食材の需要が見えることで、地元の漁や流通に直接的な追い風となる可能性がある。次に、地酒を通じた交流は観光客の呼び込みにつながる一方で、日常的に通える地元の飲食店の価値向上をもたらす。最後に、イベントや店の取組みは地域コミュニティの再生や高齢化対策としての側面も持ちうる。
なお、今回の取材内容は、ルポライター・イラストレーターの松浦すみれ氏の報告を基にしている。店名や登場人物の名前、イベントの実勢、料理や酒の組み合わせなどは同氏の報告に準じる。
住民が覚えておきたいポイント
地元の食材と地酒を楽しむ場は、ただの嗜好の場ではなく地域経済の一端を担う。石山エリアで継続的に開催されるイベントや個店の取り組みを通じ、次のような行動が住民には有益だ。
- 地元の漁や飲食店を支えるため、可能な範囲で来店やイベント参加を検討する。
- 地酒と地元食材の組み合わせを家庭でも試し、需要の裾野を広げる。
- イベント情報は主催店舗や参加店の告知をチェックして、感染対策や参加人数の上限など運営方針を確認する。
地域の味を守り、育てることは、日々の暮らしの豊かさに直結する。石山の小さな酒処と琵琶湖の小鮎が示すように、地元で育った素材と技が寄り添う場は、これからの大津にとって重要な資源であり続ける。