調査結果の要点と背景
厚生労働省が2026年7月15日に公表した、2025年(令和7年)実施の国民生活基礎調査は、世帯の所得や貯蓄・借入、健康や介護の状況、生活意識などを網羅する全国規模の基礎統計だ。最新の結果では、1世帯あたり平均所得が575万2,000円と前年から増加した一方で、生活の脆弱性を示す指標にも明確な課題が残された。
調査は大規模な三年ごとの本調査として行われ、今回が第14回にあたる。所得が改善した面と、世帯構成ごとに表れる差(格差)の両方を把握できることが特徴だ。
主な数値と注目点
- 平均所得:全世帯で575万2,000円(前年比7.3%増)
- 世帯別平均:児童のいる世帯857万3,000円、高齢者世帯336万1,000円、母子世帯345万3,000円
- 相対的貧困率:全体で15.0%。ひとり親世帯の世帯員は44.7%と高率
- 生活意識(2025年7月時点):「苦しい」と答えた世帯は全体で55.4%。母子世帯は82.1%で、特に高い
- 貯蓄と借入:全世帯の平均貯蓄額は1,414万8,000円、借入金額は362万5,000円。児童のいる世帯では借入金が1,226万2,000円で貯蓄を上回る
| 世帯区分 | 平均所得 |
|---|---|
| 全世帯 | 575万2,000円 |
| 児童のいる世帯 | 857万3,000円 |
| 高齢者世帯 | 336万1,000円 |
| 母子世帯 | 345万3,000円 |
母子世帯の深刻な実情
最も目を引くのは母子世帯の状況だ。平均所得は母子世帯で345万3,000円にとどまり、貯蓄がないと回答した割合は21.8%に上る。さらに生活意識の質問では、母子世帯の82.1%が「苦しい」と回答し、自治体や支援団体が支援を厚くしても追いつかない実態が示されている。
「苦しい」(「大変苦しい」「やや苦しい」の合計)
相対的貧困の観点でも、ひとり親世帯の世帯員は44.7%が相対的貧困に該当するという高い割合を示している。これは、子どもの教育や健康、将来の生活設計に直結する課題であり、子育て支援・雇用支援・住居支援など多面的な施策が必要になる。
貯蓄・借入の偏りと影響
全体の平均貯蓄は1,414万8,000円と一見高い水準に見えるが、これは世帯間でのばらつきが大きいことを示唆する。特に児童のいる世帯では貯蓄が1,035万7,000円である一方、借入が1,226万2,000円と借入超過の構図が確認された。教育資金や住宅ローン、生活費の補填などが背景にあると考えられ、結果として経済的リスクが高まるおそれがある。
政策課題と今後の視点
調査結果から読み取れる政策的な示唆は多い。所得の増加傾向は歓迎される一方で、貧困の集中と貯蓄格差が残る点は放置できない。総務・厚労・文科など関係省庁は、以下のような方向で対応を検討する必要があるだろう。
- ひとり親や母子世帯に対する就労支援と保育支援の強化
- 子どもの貧困対策として教育費負担の軽減や給付型支援の拡充
- 生活困窮世帯への早期発見と継続的な相談支援の充実
同時に、地方自治体や民間の支援団体との連携も重要であり、相談窓口や支援メニューの周知を徹底することが求められる。統計は政策の出発点であり、データに基づく対策の実行が求められる段階に来ている。
暮らしへの実感と読者への情報
今回の調査は、「数値としての格差」を改めて示した。平均値だけを見れば改善がうかがえるが、家族構成や年齢層ごとの実態は大きく異なる。読者にとって役に立つポイントは、住まいや家計の見直し、支援制度の把握だ。住居費や教育費の支援制度、児童・ひとり親向けの公的サポートについては、お住まいの自治体や厚生労働省の窓口で確認するとよい。
生活に不安を抱える人にとって、制度を知ることは第一歩である。今回の調査が示す課題は社会全体の問題であり、個々の生活改善には公的支援と地域での支え合いが不可欠だ。