医療機関の不在が広がる広島県の現状
国の最新の集計で、医療機関が実質的に存在しない「無医地区」が全国で合計575地区に上る中、広島県内では53地区が該当し、都道府県別では北海道に次いで多いことが明らかになった。対象地域は県内の10市町にまたがっており、中山間地域を中心に医療資源の不足が顕在化している。
増減の内訳と背景
調査では、世羅町で診療所の閉鎖に伴って無医地区が2地区増えた一方、三次市では地域の人口減少により2地区が調査対象から外れた。県は今回の結果を受け、医師の高齢化や後継者不足を主な要因として挙げ、今後も無医地区の増加が懸念されると説明している。県は診療所の承継や新規開業への支援などに取り組む方針を示している。
広島県は、医師の高齢化や後継者不足などから中山間地域を中心に今後も「無医地区」の増加が懸念されるとして、診療所の承継や開業を支援するなど医療提供体制の確保に努めたいとしています。
住民生活への具体的影響
医療機関が身近になくなると、次のような影響が想定される。
- 通院のための移動距離と時間が増えることによる高齢者や通院困難者の負担増。
- 急病やけがの際に救急対応までの時間が延びるリスク。
- 慢性疾患の継続治療が途絶えたり、検査や処方の間隔が開いたりすることで健康管理が難しくなる可能性。
実際に診療所が閉鎖した地域では、住民が隣接自治体の医療機関へ移動せざるを得なくなり、交通手段を持たない高齢者ほど影響を受けやすい。特に冬季や夜間、悪天候時の移動は生活上のリスクを高める。
対策の方向性と地域への提案
調査結果が示す課題を踏まえると、行政や医療関係者、地域社会が連携して複合的に対応する必要がある。具体的には次のような取り組みが想定されるが、いずれも長期的な視点と地元の合意形成が不可欠だ。
- 診療所の承継支援や開業補助の強化(経済的支援、事務負担軽減など)。
- 地域医療ネットワークの構築による専門職の巡回診療や連携強化。
- 住民の移動支援(福祉輸送や予約型乗合いなど)や救急搬送体制の整備。
- 遠隔診療(オンライン診療)や在宅医療の活用促進。ただし通信環境や運用面の整備が前提となる。
県が示す「診療所の承継や開業の支援」は、こうした選択肢の一部を含むが、地域ごとの実情に応じた具体策の設計と資源配分が課題だ。医師の働き方改革や地域に根ざした医療人材の育成も並行して進める必要がある。
データ一覧
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 全国の無医地区数 | 575地区 |
| 広島県内の無医地区数 | 53地区 |
| 広島県の都道府県順位 | 全国2位(北海道が1位) |
住民が知っておくべき実用情報
無医地区と判定された地域の住民やその家族は、次の点を確認しておくと日常の安心につながる。
- 最寄りのかかりつけ医や診療所の所在地と診療時間、移動手段(公共交通や地域の送迎サービス)を把握する。
- 緊急時の救急搬送の方法と連絡先(119の利用方法、最寄りの救急拠点病院)を家族と共有する。
- 持病がある場合は薬の処方箋の受け取り方法や次回の検査予定を前もって計画し、突発的な受診困難に備える。
自治体によっては、住民への周知や移動支援、医療機関との調整などを行っている場合があるため、所属する市町村の窓口に相談することを勧める。
今後の見通しと取材で見えた課題
今回の集計は現時点の状況を示すが、医療従事者の高齢化や人口構成の変化は今後も続く見込みで、無医地区は増える可能性がある。短期的には診療所の閉鎖による影響をいかに抑えるか、長期的には地域に根ざした医療提供体制の再構築が喫緊の課題だ。行政の支援策とともに、地域住民の合意形成や地元医療者の負担軽減策が鍵となる。
広島県内で日常の医療環境に不安を抱える住民や関係者からは、移動負担や救急対応の遅れを懸念する声が聞かれる。県と市町が今後どのような具体策を示すかが、地域の暮らしの安全に直結する。
(広島県担当記者 石井 裕子)